風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

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 KIndle版「室生犀星作品集」より、「みずうみ」を読み了える。
 先の同・童話とエッセイを読む、は6月9日の記事にアップした。



室生犀星作品集
 作品集の表紙を再掲する。

 「みずうみ」は、初めに「童話でも小説でも散文でもない」と断っている。
 写生ではない俳文という所だろうか。
 4章と分量は意外と多かった。
 湖辺の一軒家に住む眠元朗とその妻、娘と、3人が登場人物である。眠元朗とその妻は生活に飽き、険しい目を交したりする。
 結末で父親は、乙女さびた娘を、対岸の桃花村へ小舟で送り出してしまう。
 家族の由来も、生業も、心象小説のような1編では、どうでも良いのである。
 底本の親本は、「室生犀星未刊行作品集 第Ⅰ巻 大正」三弥井書店、1986年・刊。初出は「詩と音楽」1923年5月号。旧かなを新かなに直してあるだろう。


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 穂村弘の新歌集「水中翼船炎上中」を読み了える。
 購入は、今月18日の記事、3冊を買うにアップした。



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 2018年5月21日、講談社・刊。328首、著者・あとがき、別刷・メモを収める。箱入り。
 第4歌集だが、僕はこれまで読んだことがなく、歌誌の掲載作や引用で読んで来たのみである。

 子供時代、思春期に固執して、回想の歌を多く創っている。僕は農家の次男だったので、それらへの執着はない。幾つかの懐かしい思い出はあるけれども。
 母の挽歌や現在の歌では、リアリティのある作品がある。真実味のある作品に惹かれる。
 ニューウェーブの歌は、戦後の前衛短歌の、俵万智・以降版と呼ぶべく、軟弱に見えるけれども、彼らへの時代的要請もあったのだろう。


 以下に7首を引く。
窓ひとつ食べて寝息をたてているグレーテルは母の家を忘れて
助けてと星に囁く最悪のトイレットペーパーと出会った夜に
ナタデココ対タピオカの戦いを止めようとして死んだ蒟蒻
アルコール、カロリー、糖質無しというビールの幽霊飲んでしまった
母のいない桜の季節父のために買う簡単な携帯電話
わはははと手を打ち終えた瞬間にぶごといびきをかいている父
ハミングって何と尋ねてハミングをしてくれたのに気づかなかった


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 佐佐木定綱の第1歌集「月を食う」を読み了える。
 購入の次第は、今月18日の記事、3冊を買うにアップした。



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 2019年10月31日、角川書店・刊。330首、著者・あとがきを収める。
 俵万智と皆川博子の帯文、島田修三と小島なおの栞文を得ている。
 歌壇の重鎮・佐佐木幸綱の次男でありながら、その威光に頼ることなく、食堂店員、書店員として働いている。しかし職業は、汚いものであったり、意に染まない本を売らねばならなかったりする。
 失恋に泣いたり、幼い恋をしたり、同居(同棲?結婚?)したりする。厳しい生活をしながら、良家に育った上品さは失わない。
 若さゆえに、父の威光を借りることを嫌ったのだろうが、僕は職に関して、借りれば良いと思う。僕の定年・再任用までの職もそうだった。
 なおこの歌集で、彼は第64回現代歌人協会賞を得た。


 以下に7首を引く。
道端に捨てられている中華鍋日ごと場所替えある日消え去る
口の端の薄きしょっぱさ朝焼けよこりゃあなんだよ誰が泣いてる
二十円引きのエクレア買ってきた君はひと口無料でくれる
日本語のない安すぎる缶詰とアサヒビールのプルタブを引く
友だちの受けしパワハラ聞きながら上手にホッケの骨をとれるかな
本や家具、君の笑った声などを詰め段ボール笑いはじめる
買われずに返品されてゆく本が夏の陽射しに熱持ち始む

 ブクログ記事を、短歌誌「心の花」さんがリツィートしてくださいました。

歌壇の重鎮・佐佐木幸綱の次男でありながら、その威光に頼ることなく、食堂店員、書店員として働いている。し...『歌集 月を食う』佐佐木 定綱 ☆4 https://t.co/OGrvgRnNcp #booklog

— 新サスケ (@terayamaf) August 25, 2020 ="https://parts.blog.livedoor.jp/img/usr/cmn/btn_add_twitter.png">



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