風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

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 1昨日、7月19日の記事にアップした、荒川洋治「詩とことば」を読み了える。
 岩波現代文庫、2016年6月・4刷(2012年6月・1刷)。書き下ろし・2004年12月・刊。
 第1章「詩のかたち」の初めで「詩のかたちをしたものは奇異なものかもしれない。反射的に遠ざけたいもの、気分を損ねるものかもしれない」と書いて、詩の不遇の源を探る。「行分け」「(行の分け方を、書く)その人が決めること」「並べる」「メモの世界」「くりかえし」「リズム」「詩に、飛躍はない」「散文は「異常な」ものである」の章で、実際の詩に即しながら、詩の特質の解明と、擁護を試みる。
 第2章「出会い」では、石牟礼道子「川祭り」で始まり、蔵原伸二郎「昨日の影像」などのあまり知られない詩人、草野心平、飯島耕一でもあまり知られない作品、との出会いと、探索を述べる。
 第3章「詩を生きる」では、詩が熱かった時の様子を振り返り、作品の構成の分析をする。廣末保の芭蕉論の1節「詩が詩として自立しはじめるとき、それは同時に反「詩」的な契機をふくみこまねばならなかったのである」が痛く刺さる。
 最終・第4章「これからのことば」では、大きな事件のあとの垂れ流しの詩や歌を「詩の被災」と切り捨てる一方、今のこの社会のおかしさの源の1つに「情報だけの本だったり、明日役に立つだけの本だったり、時流に合わせるものだったり、…」と批判して、文学書、中でも詩集・詩の本の読書を推す。「歴史」では、「新体詩抄」から1980年代までの詩人を挙げ、それ以来は新人不在だとする。また新しい人、地域の人にも、細かく心を向ける。
 「あとがき」、「岩波現代文庫版のあとがき」、「参考文献一覧」を付して、1冊を収めている。
 単行本が文庫本になり、版を重ねる、優れた詩論である。



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 BRILLIANT CLASSICS版の廉価版「ヴィヴァルディ作品集」(全66CD)より、9回目、44枚目の紹介をする。写真は、紙ジャケットの表。
 前回、
同・8回目、37枚目の紹介は、6月12日の記事にアップした。
 この44枚目と次の45枚目で「完全版 チェロソナタ集」と称するらしい。
 しかしWikipediaに当たってみると、RV38~RV47の全10曲のチェロソナタの内、RV38を除く9曲を収録するのみである。作曲年代はほとんど不明である。なおRVは、ヴィヴァルディの作品の頭に付ける記号である。
 RV47変ロ長調は、重々しい曲であり、第4章でわずかに軽やかになる、
 RV43イ短調は、それほど悲しげではない。
 RV40ヘ長調は、叙情的である。CD収録順に拠る。
 クラシック音楽に詳しくない僕なので、読者は何かの方法で、ヴィヴァルディの曲を聴くことをお奨めする。





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 昨日の記事、「荒川洋治氏・受賞記念講演会」の始まる前、会場の多目的ホールの隅で、荒川洋治氏の著作が数種類、販売されていた。
 僕は記念の意を含めて、乏しい小遣いから、岩波現代文庫「詩とことば」(2016年4刷、860円+税)を買った。
 彼の詩集は、「全詩集」(思潮社)を含めて、何冊か読んだが、評論は読んでいなかった。

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 講演のあと、サイン会があったので、僕も列に並んだ。
 おばさんたちが、自分の手帳を差し出していく中、氏は苦虫を噛み潰す表情でサインした。
 僕の1冊を、職員が手に取って氏の前へ置いた時も、同じ表情だった。しかも「本には日付を入れませんから」と年月日を省略されてしまった。もっとも彼が、高校文芸部の1年先輩だった縁で、1声をかけてくださった。
 下の写真は、そのサインである。おこがましいかも知れないが、ブログにアップした。
 本を読み始めると、文庫本で版を重ねる詩論集であり、優れている。難解な評論の言葉も、難解な思想の言葉も、共に使わず、根本からの現代詩論である。僕の選択は、正解だったようだ。






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