風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

 これまで記事にアップしなかったけれど、寺井奈緒美・歌集「アーのようなカー」Kindle Unlimited版をタブレットにダウンロードしており、先日に読み了えた。
寺井奈緒美「アーのようなカー」
 書肆侃侃房・新鋭短歌シリーズ46。同シリーズとして、先の8月3日の記事、二三川練・歌集「惑星ジンタ」に次ぐ。

 単行本:2019年4月11日・刊。価格:1,836円。
 Kindle版:2019年8月2日・刊。価格:1,600円。
 掲載首数、不明。東直子・解説「「そこにいた時間」の新しい豊かさ」、著者・あとがきを付す。

 優しさを施したい、求めたい心情がある。言葉の斡旋がうまく、レトリックが上手になって、人生の真実味が深まらないようだ。
 あとがきに「色を失っていたのは街ではなく自分自身だったのだと、ようやく気がついた。」とある。人生の暗部も見つめつつ、歌に拠って、危うい時代を生きて行ってほしい。

 以下に7首を引く。

舌打ちの音でマッチの火が灯るようなやさしい手品がしたい
フジツボのように背中を張り付かせ駅の柱はやさしい岩場
コピーアンドペーストのため囲われた文字に地下への隠し通路を
追い炊きのボタンを君に埋め込んで一年経つが未だ押せずに
戦前を生きるぼくらは目の前にボタンがあれば押してしまうね
街をいく人たちみんな大根を持っているけど何かの予兆
再生をされてトイレットペーパーになったら隣り合わせましょうね


 思潮社・現代詩文庫242「続続 荒川洋治詩集」より、3番めの「詩集『渡世』から」を読む。
 今月8日の記事、同「『坑夫トッチルは電気をつけた』から」を読む、に次ぐ。

 彼の詩は難解である。ある時、「遊びと言われようと、詩は新しさを求めるしかない」と語った。僕は表現の新しさではなく、心の(民俗でない)懐かしさ、事柄の新しさ(ネットの民俗など)を求めている。

 詩「くろまめ・めのたま」の中で、「稲の国のプラントオパールの村落青年では/ブナの木の先のことはすべてわからない」と述べる。僕の少年時代も全くそうで、世間がわかっていなかった。高校生時代、彼の主導で作ったガリ版刷り詩集の表紙代も、作家に序文を頂いた謝礼も、僕は全く気付かず、彼が払ってくれたと50年後に感謝している。

 詩「昨日の服」では、従軍生き残りの人たちを、「止まった/  愛のために/彼のセンスはもう/どこからもやってこない」と述べる。戦後詩は、豊かだった思いが、僕は今もあるけれど。70年以降の詩を指すなら、合っていたかも知れない。

0-65
写真ACより、「キッチン・グッズ」のイラスト1枚。


ダイビング川柳 其の弐
 海河童さんのKindle本、「ダイビング川柳 其の弐」を読み了える。
 タブレットへのダウンロードは、今月10日の記事、入手した3冊(4)にアップした。

 ほとんど海中の魚介類の写真に、川柳、解説、寸評(駄句、佳句、秀句、特選、の評価付き)を入れている。川柳は、初句、中句、結句、まとめて1川柳と、ページが違い、写真も異なる。
 定型に収まる句があるが、はみ出す句も多い。

 川柳の、世に盾突く姿勢がない。自分で解説し、評価を付けている所も、文学らしくない。「三十度あたたかいけどサンゴは無事か?」が特選となっている。
 海河童さんのダイビング、ダイビングの普及、海中写真、KDPに掛ける情熱は素晴らしいと思うけれども、上手とはいえない川柳である。写真集のみで評価を受けられる。無料でダウンロードして、大きな声も出せないけれども。


↑このページのトップヘ