角川書店「生方たつゑ全歌集」(1987年・再版)より、第7歌集「白い風の中で」を読みおえる。
 先の第6歌集
「青粧」は、今月14日の記事にアップした。
 原著は、1957年、白玉書房・刊。佐藤春夫の序文、後記「をはりに」を併載する。
 年譜の1955年の項目に、「佐藤春夫氏に詩の導きを受ける。」とある。ただし佐藤春夫の詩は、古典文法の定型詩、新体詩の発展したものであり、歌集「白い風の中で」の抽象語、暗喩、心理の捉え方は、佐藤春夫の詩を越えている。
 あるいは日本の戦後詩、翻訳詩に学んだと思われる。
 歌集の初めにも、「謀られて」「革命」「絶対に」など、出自のアララギの写生を、大きく離れている。ここからどこまで発展するか、歌集を怖れながらも(危惧を持ち)楽しみである。
 旧家とはいえ、敗戦後は家計に苦しんだらしく、「不動産つぎつぎに売りて充足の日はいつに来むさびしき吾ら」等の歌も散見される。
 以下に7首を引く。
(はか)られてゐるわたくしを意識して交はりゆけば夜の埃あり
雨の夜に毛を濡らしきて舐め飽きぬけだもの臭のたつかたへなり
(むち)に似てさむさのせまる暁よ老いづかむ日もここに住みつきて
信仰を方便にして安泰にある世界かといできて思ふ(石影 竜安寺)
合歓の葉の素なほにねむるまでをりて責められしこと反芻しゐる
気短かくなりて不足の金を言ふ衰へて冬のごときこゑなり
草枯れの中に落ちゐし蹄鉄よ既知につながる鮮しさなり
梅1
Pixabayより、梅の1枚。