角川書店「生方たつゑ全歌集」(1987年再版)より、第9歌集「海にたつ虹」を読み了える。
 第8歌集
「火の系譜」は、先の2月28日の記事にアップした。
 原著は、1962年、白玉書房・刊。井上靖の推薦文(帯文か)、佐藤春夫の序文(3歌集目)、後記「おわりに」を併収する。
 「火の系譜」のあとがきで、「生命の不安にゆすぶられながら」とあるように、健康への不安があったようだ。
 「海にたつ虹」のあとがき「おわりに」には、「「火の系譜」のはげしさから抜け出ようとして、「海にたつ虹」の苦悶は、少なからず私に混迷を強いた。」、また「新しい「きざし」をもつべき転機が私の作歌の上にもきているかも知れぬ…」と述べられる。彼女は脱皮を繰り返して、新しい歌境を拓いたのかも知れない。
 以下に7首を引く。
血塊のごと墜ちやまぬ無尽数の椿おそれし夢も重たし
剪毛のをはれば痩せし緬羊らいたく強情に雨の草喰ふ
火を盗むかなしみのこと読み終へてきしきしと捲く小さき竜頭
鉱鋅(のろ)あかき空地さらして月あれば嘘などはなき明日が来るべし
口紅に似たる蕾の花買へり冬脱ぎてゆくやさしき一日
埋立ててはやも荳科の蔓匍へりかかる自生も妬みにかよふ
風鐸に似てかなしみが鳴るわれかなだめられゐて明きゆふぐれ
椿6
Pixabayより、椿の1枚。