青土社「吉野弘全詩集 増補新版」(2015年2刷)より、詩集「風が吹くと」を読み了える。
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詩集「北入曽」は、今月6日の記事にアップした。
 原著は、1977年、サンリオ・刊。
 なおこの詩集は、若い人向けに35編(内、旧詩集より22編)を、詩画集として編んだものである。
 詩人が51歳になって、若者向けに詩画集を、読みやすいように、などと企画して良い事はない。詩人の意図が善意であったとしても。
 「運動会」では、「ころんで血を噴く傷口も/心の傷と無関係なのが、いい。」と書くけれども、例えば鬱病と身体不調の関連は、知られている事である。
 「ウエスト」では、「誰へ/贈られる花束ですか あなたは?//誰かが/花束の紐をほどいたら/その手の上に/身を投げ出しますね/…」と、女性の社会活躍の著しい現在から見ると、古めかしい。
 しかしこの詩集には、広く人に知られている「祝婚歌」が、初収録されている。「二人が睦まじくいるためには/愚かでいるほうがいい/立派すぎないほうがいい」と始まり、異論があるかも知れないが、一面の真実を衝いている。
 吉野弘には、この「祝婚歌」や、「夕焼け」など、突出して優れた作品がある。
椿7
Pixabayより、椿の1枚。