角川書店「生方たつゑ全歌集」(1987年・再版)より、歌集「紋章の詩」を読み了える。
 先行する歌集
「花鈿」は、今月24日の記事にアップした。
 歌集「紋章の詩(うた)」は、1972年、短歌研究社・刊。
 群馬県沼田市に残された、築380年以上の旧家が、国指定重要文化財となり、移築を待つ時に、旧家を継いだ苦しみを救済するべく詠じられている。
 また栃木県・那須への旅、群馬県・谷川岳への川端康成に従っての旅と共に、ハワイ、イギリス・スコットランドへの旅の、旅行詠の大作がある。
 ただしプロ歌人にして、旅行詠は難物のようだ。
 この歌集でも、抽象語や比喩を多く用いて、詠まれている。
 以下に7首を引く。
意地張りて生ききし傷の疼く日よもろき私にふれてくれるな
支へかたき家の重味か病みがちに老いゆく夫のかたへにをれば
くれなゐの椿が冬も咲くみちか嘘のやうなるわたくしの冬
紋章の拓本をとる墨選ぶ家の終末になしうるひとつ
腐蝕せぬものらはむしろ淋しきか古りてかけらとなりし陶片
心絞りくるものもなし熔火帯ゆきて刺青(しせい)のごとき羊歯群(ハワイ)
夏すでに草枯れてゐる丘多しトマトつぶれしごとき日没(スコットランド)
 (注:引用の中に、正字を新字に替えた所があります)。
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写真ACより、フラワーアレンジメントの1枚。