風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

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2016年10月

 角川書店「増補 現代俳句大系」(全15巻)を読み進んで、第11巻(1982年・刊)の初めの句集、沢木欣一「塩田」を読みおえる。
 9月17日の
記事(←リンクしてあり)、同・第10巻の田川飛旅子「花文字」に継ぐ。
 原著は、1956年、風発行所・刊。1939年~1955年の675句を収める。
 沢木欣一(さわき・きんいち、1919年~2001年)は、戦後いちはやく俳誌「風」を創刊し、社会性俳句を提唱したとされる。
 「塩田」には、社会闘争の句といってはない。
 それよりも、戦前の句をなぜ、従軍体験もありながら、戦後の句と続けて並べるのだろう。彼には「敗戦革命」という経験はなかったのだろうか。
 60年安保以後、句風が移って行ったと解説される(三省堂「現代俳句大辞典」)から、今後の読書を楽しみとしたい。
 以下に5句を引く。
鳩の尾の扇なすとき別れかな
米借りて梅雨の晴れ間を東京へ
妻を恋う六月渚雲雀得て
行商の荷に油紙能登の雪
夜明けの戸茜飛びつく塩の山(「能登塩田」より)
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フリー素材サイト「Pixabay」より、りんごの1枚。

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 結社歌誌「コスモス」2016年11月号より、「その一集」特選欄を読みおえる。
 1昨日の
記事(←リンクしてあり。特に後日の読者の為)、同「月集」に継ぐ。
 この特選は、9選者×各5名×各5首である。
 この特選の一人に、僕たち短歌研究会のメンバーが選ばれて、喜ばしい。正直、妬ましくもある。感覚の鋭い歌人である。
 レトリックと共に、正直に詠むことが必要のようだ。
 僕が付箋を貼ったのは、次の1首。F・徳子さんの5首より。
百四の母のいのちを思ふ夜半かすかな寝息に安堵してをり
 このあと母親は亡くなられ、あとの3首は挽歌である。
 大往生だっただろうが、結句が「哭きに哭きたり」の歌もある。
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 フリー素材サイト「Pixabay」より、りんごの1枚。




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 福井県詩人懇話会から、「年刊 詩集ふくい2016 第32集」2冊が届いた。
 57名63編(一人2編以内、4ページまで、参加できる)の詩と、執筆者名簿、「’15ふくい詩祭 記録」を合わせて、179ページに収める。
 2016年10月30日・刊。
 福井県在住、あるいはゆかりのある詩人の作品の、1年1度のアンソロジーである。
 また’15ふくい詩祭の全記録を、モノクロ写真と共に収める。
 僕もソネット「住所印を洗う」を寄せていて、内容はもう1つのブログ、「新サスケと短歌と詩」の10月27日付けの
記事(←リンクしてあり)に横書きながらアップしたので、ご覧ください。
 この本を読み通したなら、またここにアップしたい。

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 今月18日の記事(←リンクしてあり)「届いた4冊」で紹介した、結社歌誌「コスモス」2016年11月号より、「月集」を読みおえる。
 「コスモス」は大部だし(会員1900名!)、次の号が来るまでに、どこまで読み進められるか判らないので、少しずつ紹介しようと思う。
 「月集」の歌は、育った歌壇の時代か、余裕か、品格があるなあ、と感じ入る。
 「月集」でも、小島ゆかりさんの孫育て、K・絢さん、S・ちひろさんの子育てなど、乳幼児を詠んだ歌が目立つ。
 僕が付箋を貼ったのは、次の1首。「月集シリウス」のS・美衣さんの5首より。
飼ひ犬のやうに呼んだら出てこんか過ぎてなくした時のかずかず
 大胆に口語の比喩で詠まれている。
 喜びの時も悔いの時も、還らないと知りながら、惜しむのである。
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フリー素材サイト「Pixabay」より、りんごの1枚。


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うずく、まる
 kindle本の中家菜津子・詩歌集「うずく、まる」を、タブレットで読みおえる。
 今月13日の
記事(←リンクしてあり)、「頂いた本と買った本、5冊」で紹介した内、最後の5冊めを読みおえた事になる。
 元版は、2015年6月、書肆侃侃房・刊。
 短歌群と詩群を繋ぎ合わせた詩歌集である。
 短歌に節の題なく、詩に題なく、1冊をもって1作品とするようだ。
 題名の奇妙な切れ方に惑わされそうだが、「うずく」も「うずくまる」も、痛みの表われである。
 写実の作風ではないので、細かな事はわからないが、辛い恋をし、のちに結婚・出産を経たようだが、そのあとはわからない。
 ネットの詩歌梁山泊「詩客」の詩歌トライアスロンに応募し、「現代詩手帖」に掲載された事が出発だったと、「あとがき」で彼女は述べている。
 僕は電子書籍に違和感はなく、むしろ紙本より読みやすいくらいだが、表示の拡大・縮小の仕方を見つけるのに苦労した。
 以下に5首と2節を引く。
あれからの日々を思って鉢に撒く期限の切れたミネラルウォーター
火を飼ったことがあるかとささやかれ片手で胸のボタンをはずす
ストライプシャツの袖口折りかえし右手をつなぐ左手に歌
からだごと君にあずけたゆるやかに右へふくらむカーブにゆれて
気怠さの理由は君にはわからない洋梨ふたつの重さかかえる

かあさん かあさん おかあさん ふりつもるよびごえ
子宮に眠る地球では星が降りしきっているよ

微熱からとけだしてくる哀しみに
  トレモロの点滴をうつ午後
病室の煽り窓から雨だれが
  鳥の見ている夢へと落ちる

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 BRILLIANT CLASSICS版の廉価版「ヴィヴァルディ作品集」(写真はセット箱の上面。右端をトリミングしてある)全66CDより、27枚めをパソコンのiTuneで2度聴く。
 前ブログ「サスケの本棚」の今年8月9日の記事で、19枚めを紹介して以来である。
 ヴィヴァルディ(1678年~1741年)は、イタリアのバロック期の作曲家。
 27枚めは、室内協奏曲の1枚め(全3枚)である。
 リコーダーのゆるやかな、あるいは早いテンポの音色が、リードする場面が多い。
 奇想風の曲より、これら穏やかな6曲(全49分余)が好ましい。
 Amazon Prime Musicを聴く時が多く、この作品集よりしばし離れていた。もっと聴くようにしたい。
 なお僕は、音楽に不明なので、その事はご寛恕願いたい。

 
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 宮本君子さん(「コスモス」会員)が送ってくださった第二歌集、「梅雨空の沙羅」を読みおえる。
 今月13日の
記事(←リンクしてあり)、「頂いた本と買った本、5冊」で紹介した内、4冊めの本である。
 2016年9月30日、柊書房・刊。437首。
 読み始めて、「あれ、宮本さんの歌はこんなのかな? 森重先生の選はこんなのかな?」と疑いながら進むと、すぐに歌は優れた作品ばかりとなった。
 中年後期から初老に至る齢の、哀歓を描いて、惹かれる作品が多く、10余枚の付箋を貼ったが、前例に倣い、7首を以下に引く。
愛想のよき中年の奥にある哀しさに似て梅雨空の沙羅
老い支度いえ死に支度などと言ひ友は蔵書をつぎつぎ呉れる
人声の絶えて滅びし<夏夜鳥集落>はふかき山に戻りぬ
来た来たと誰か叫(おら)べるまたたく間一位の走者走り抜けたり
癌を病む兄が見舞ひにおとづれて左半身麻痺の夫抱く
秋の夜をひつそり起きて授乳する娘へ熱き生姜湯いれる
三歳の駿太は林檎の皮が好き真赤真赤とうたひつつ食ふ




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