風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

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2017年04月

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 以前に買い置いた、河出書房新社「ドストエーフスキイ全集」(全19巻)の、第1巻(1958年2刷)より、ドストエフスキーの第1作「貧しき人々」を読み了える。
 共に貧しい中年男・ジェーヴシキンと娘・ヴァーリンカ(共に愛称)が交す、書簡体の小説である。貧しい者の正直さと、相手を自分より大事にする心が、あからさまに描かれる。
 ヴイコフ氏という人物が現われ、ヴァーリンカと急いで結婚し、去ってしまう。将来の不安も暗示されるが、人は一人一人、苦境より抜け出すより他にないのだ。
 また僕は、ドストエフスキーに晩年までつきまとった、「貧困」の問題の出発を見る。実生活において大作家となった後も、ルーレットなどの賭博にのめり込んだり、出版社より前借りをしている。
 2番目の夫人が、しっかり管理するようになったようだけれども。
 この「ドストエーフスキイ全集」を読み進みたいけれども、他の読書や時間の関係で、読み進められるかどうか判らない。

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 昨日(4月28日、金曜日)に、メンバー3人がある喫茶店に集まり、短歌研究会B第14回を持った。
 
同・第13回は、先の3月24日の記事にアップした。
 短歌研究会Bは、岩波文庫「宮柊二歌集」(宮英子・高野公彦・編)の読み込みである。
 研究会の常は、朝9時半~11時だが、3人それぞれの都合があり、遅く始まり早く終わった。
 まず歌集「小紺珠」より、前回に続く「無援の思想」の章(73ページ)より入る。
 「積みあげし鋼(はがね)の青き断面に流らふ雨や無援の思想あり」の1首の、4句までと結句の繋がりが、僕たちにはもうわからない。
 「録音」の節の「ラヂオより流るる英語鋭くて…」「応答に抑揚低き日本語よ…」の2首は、戦犯を裁く東京裁判を描いた歌と推測した。
 「小現実集」の章では、「堅炭(かたずみ)を一俵買いて蔵(しま)ふとぞああ吾妻(あづま)はやその果無事(はかなごと)」では、現役サラリーマンと主婦(歌人でもある)の金銭感覚の違いが表われているようだ。
 「混沌と進む重大を覚えつつ…」は、日本と世界の世相を指すらしい。
 別の歌の「われには杳(とほ)しチロルの干草」の結句の由来が、3人ともわからないが、のどかな物語があるのだろう、と推測した。
 様々に語り、75ページに至った。
 誌、本の受け渡しのあと、次回の研究会の日を決め、10時半頃に散会した。
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写真ACより、フラワーアレンジメントの1枚。


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 昨日の「月集シリウス」に続き、結社歌誌「コスモス」5月号より、「その一集」特選欄・読了を報せる。
 「その一集」特選欄は、9選者×各5名×各5首の、225首より成る。
 人生の感慨、重大事を、それぞれ詠んでいる。日常詠も選ばれているが、数が少ないようだ。
 僕が付箋を貼ったのは、次の1首。N・好美さんの「ゼントルマン」5首より。
「悪いね」と夫は微笑み吾を見つむ集中治療棟の患者となりて
 集中治療棟に入るのに、「悪いね」と言い、微笑み、妻を見つめる夫の、ゼントルマン(看護士の声)ぶりを、よく表わしている。それもほぼ定型を守って。
 他の歌に拠ると、幸い夫は数日で退院したようで、恃む人のない夫婦の絆が、鮮やかである。
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写真ACより、フラワーアレンジメントの1枚。


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 昨日に続き、結社歌誌「コスモス」2017年5月号より、「月集シリウス」を読み了える。
 まず「月集シリウス 特別作品」の12名5首が、ページ1段で載る。続き「シリウス集」通常欄(4首or5首・掲載)がある。
 特別作品欄には、ブログ仲間でカナダ在住のS・紀子さんや、同人歌誌「棧橋」の宿泊批評会でお世話になった、O・淳子さん、K・絢さんの名前も見える。
 僕が付箋を貼ったのは、同じく「特別作品」より、次の1首。A・千里さんの「レモン畑」5首より。
大寒波襲来予報 八十三の母も色めきレモン収穫す
 2句の体言止め、1字あき、3句の字余りなどが、色めく様を浮かばせる。
 「月集シリウス」を改めて読むと、親近感を持って読み継いだ歌人の、これまでが偲ばれる。
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写真ACより、フラワーアレンジメントの1枚。


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 結社歌誌「コスモス」2017年5月号より、作品欄の初めの「月集スバル」を読み了える。
 5月号の到着は、今月20日の記事
「歌誌2冊が届く」に報せた。
 「月集スバル」は、選者及び選者経験者の欄であり、無選歌で各5首が載る。特選欄めいた「今月の四人」欄がある。
 僕が付箋を貼ったのは、次の1首。K・紀子さんの5首より。
十代をかたみに知るは二人のみ生きてゐることに先づ杯を上ぐ
 少女時代よりの友人は、掛け替えのない人間関係だろう。このように歪んでしまった世界では、心の憩まる少ない場の1つだろう。
 同時には「旧友に会ふや健康談義にて大腸カメラの経験談聞く」と隠し立てなく、また「取つ手とれし抽出しのなかにねむりをり数枚残す十代の写真」と少女時代への郷愁もかきたてられたようだ。
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写真ACより、フラワーアレンジメントの1枚。



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 青土社「吉野弘全詩集」(2015年2刷)より、第11詩集「夢焼け」を紹介する。
 先行の
「北象」「自然渋滞」は、今月16日の記事に紹介した。
 「夢焼け」は、1992年、花神社・刊。4章に分け、27編を収める。
 巻頭の「元日の夕日に」では、「元日の夕日を、どう呼んだらいいか/私はわからずにいます」と書くけれど、元日の朝日を「初日」と呼ぶから悪いので、正式には「初日の出」であり、元日の夕日は「初日の没(い)り」と呼べば良いと、僕は考える。
 この時代に俳句をたしなんだらしく、その経験が「俄(にわか)俳句教室」、「秋景」、「冬の鳩に」等に現れている。
 標題作の「夢焼け」では、文選工のミスを咎めず、夢に焼かれている人間、という1面を表わした。
 「漢字喜遊曲」の流れの作品もある。
 生前の詩集としては、これが最後である。このあと、詩画集、写真詩集の出版はあったけれども。
 またこの本の巻末近く、未発表詩篇選があり、初出の最後は1995年頃である。「歌詞一覧」と共に、ここでは取り上げたくない。
 没年の2014年まで、彼は詩を書かなかったのだろうか。体を悪くしたのか、このような形で詩よりフェイドアウトして行ったのかと思うと、歌人たちの場合と比べて、詩人として侘しい。
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写真ACより、フラワーアレンジメントの1枚。



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 昨日(4月23日、第4日曜日)の午後1時半より、教育センターの1室で、福井県詩人懇話会・総会(2年に1度)が催された。参加者は22名だった。
 懇話会の催しは、3月19日の「第35回 会員の詩書を祝う会」以来である。
 僕はコンパクト・デジタル・カメラを持って参加したのだが、大きなミスをした。各発表者のズーム写真にかまけて、全体の写真を撮り忘れたのだ。
 総会は、代表挨拶、議長・選出のあと、議案に入り、第16期(2年間)の活動経過報告、収支決算、会計監査報告が読み上げられ、いずれも拍手で承認された。
 第17期(今年度より2年間)の活動計画案、収支予算案、が読み上げられ、学生への普及活動の提案のあと、承認された。
 役員選出は、全員の再任で承認された。
 記念講演があり、福井ふるさと文学館の学芸員、I・陽子さんが「高村智恵子を描いた作家たち」と題して、講演を行った。高村光太郎「智恵子の半生」、「智恵子抄」、佐藤春夫「小説智恵子抄」、津村節子の小説「智恵子飛ぶ」、野田秀樹の戯曲「売り言葉」、俵万智の「拝啓 智恵子様」を取り上げながら、光太郎と智恵子の捉え方の変化を語った。
 副代表の閉会挨拶で、4時過ぎに閉会した。
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写真ACより、フラワーアレンジメントの1枚。


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