風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

Kindle本の第1歌集「雉子の来る庭」をKDPしました。右サイドバーのアソシエイト・バナーよりか、AmazonのKindleストアで「柴田哲夫 雉子の来る庭」で検索して、購入画面へ行けます。Kindle価格:250円か、Kindle Unlimitedで、お買い求めくださるよう、お願いします。

2017年08月

CIMG0365
 今月2日の記事「ムクゲ2種」に続き、庭のムクゲ2種とそれに空蝉の写真をアップする。
 上の写真は、赤紫色の1重である。
 株は大きいのだが、花は今のところ少ししか咲いていない。
CIMG0374
 上の写真は、白の八重咲き(千重咲き?獅子咲き?バイラス病?)である。
 背の高い木になって、花の写真を撮りにくくなった。
 他にも、自然交配した実生生えの木が3つかあるので、開花したなら、紹介したい。
CIMG0368
 しまいに空蝉(うつせみ)の写真をアップする。蝉が羽化したあとの、抜け殻である。
 写真は、勝手口近くの、コンクリ台のものである。
 前足を上端に掛け、あとの足をコンクリの凸凹に掛けている。
 意外と小さい。風雨に当たって、小さくなったのかも知れない。
 都会の人には、図鑑以外には珍しいだろうと、アップしてみた。



このエントリーをはてなブックマークに追加

 河出書房「ドストエーフスキイ全集」(米川正夫・個人全訳)第2巻(1956年・刊)より、短編小説「九通の手紙に盛られた小説」を読み了える。
 先行する
短編小説「プロハルチン氏」は、今月4日の記事にアップした。
 7通の往復書簡と、それぞれの妻の手紙、2通より成る。
 書簡体小説らしく、いきなりトラブルめいた書簡で始まり、2人のいかさまカルタ師が1人の田舎領主の青年から、お金を巻き上げていたが、1人が金を独占して姿をくらましている事がわかる。
 しかし、2人に暴露された妻たちの手紙に拠って、2人の妻とも青年と密通していた事が明らかになる。このどんでん返しは、さほど面白くない。
 兄への手紙で、ドストエフスキーがお金が無くてネクラーソフの所へ寄った時、この小説のアイデアが浮かび、さっそく1晩で書き上げたと、伝えている。ドストエフスキーには自負があったようだが、当時の評論家・ベリンスキーも否定的だった。解説には他に、ゴーゴリ、ツルゲーネフの名前が出て来て、19世紀ロシア文学の隆盛を知る。
 短編小説は読みやすく、長大な小説で知られるドストエフスキーに、これら短編がある事は好ましい。
0-40
写真ACより、「お花屋さん」のイラスト1枚。



このエントリーをはてなブックマークに追加

 角川書店「増補 現代俳句大系」第12巻(1982年・刊)より、4番めの句集、右城暮石「声と声」を読み了える。
 今月3日の記事、
萩原麦草「麦嵐」に継ぐ。
 原著は、1959年、近藤書店・刊。山口誓子・序、496句、後記を収める。
 右城暮石(うしろ・ぼせき、1899年~1995年)は、仕事面では1954年、関西電力配電局長で定年を迎えており、順調だったようだ。
 俳句は松瀬青々・主宰「倦鳥」より始まり、戦後に沢木欣一・編集発行の「風」を経て、1949年に山口誓子・主宰の「天狼」に加わった。1956年、「運河」主宰となる。
 「声と声」の序文で山口誓子は暮石を、「倦鳥」を台木とし「天狼」を接いだ、接木作家だと述べている。沢木欣一は「作品解説」で、「俳句という窓を通して、対象の不条理を問い続けているのである。」と述べる。
 1925年~1959年の作品を、10の年次に分けて収め、人事を吟じて優れていると思われる。
 以下に5句を引く。
水かけて道の夜寒に紅葉売る
一筋の縄にて冬の子等遊ぶ
妻が呼ぶ声夕焼の中につよし
浮かぬ顔しつゝ氷室に働けり
甘藷を掘り運ぶラジオを鳴らしづめ
0-39
写真ACより、「お花屋さん」のイラスト1枚。




 
このエントリーをはてなブックマークに追加

 沖積舎「梅崎春生全集」第2巻(1984年・刊)より、8回目の紹介をする。
 
同・(7)は、今年5月23日の記事にアップした。
 今回に僕が読んだのは、「猫男」、「傾斜」、「一時期」の、3短篇小説である。
 いずれも1948年(昭和23年、敗戦後3年目)の初出である。戦後だが、僕の誕生の前だと思うと、不思議な気がする。
 「猫男」は、口からは出まかせの嘘も言い、偽りの行ないもして、社会の底辺を渡る中年男を描く。どの社会にも、一人はいるタイプの人物で、その卑怯さを作者は注視している。
 「傾斜」は、クリスチャンで闇屋の鬼頭鳥子、娘の花子、太郎の家に間借りする事になった「彼」が、気づくと部屋は馬小屋と隣り合っていた、という話だ。鳥子の矛盾(?)、花子の顔の火傷、子供ながら博打をする太郎、「彼」の戦時体験など、混乱の残る世界を描いている。
 「一時期」は、戦中の役所で、若手ばかりの仲間が、日中から隠れて博打をしたり、飲み屋に行列したりする話である。設定は梅崎春生と合うので、幾らかは事実だったかも知れない。彼らには徴兵、更には敗戦まで、予感されていたのかも知れない。
 第2巻で残るのは、あと4短編小説である。読み了えたなら、ここで紹介したい。
0-38
写真ACより、「お花屋さん」のイラスト1枚。


このエントリーをはてなブックマークに追加

IMG
 7月29日の記事で到着を報せた、結社歌誌「覇王樹」2017年8月号を、ほぼ読み了える。
 月刊だけれど、42ページと、ページ数は多くない。
 全5クラスの内、会員の「覇王樹集」は4名、準同人の「紅玉集」は7名であり、同人が3クラスある。
 しかも通常の6首掲載の他に、10首詠4名、力詠15首2名は、同人から選ばれている。
 「覇王樹賞」20首詠の発表があった。受賞のK・六朗氏の「日常と偶感」も良いけれど、僕は秀作になった、T・節子さんの「移ろひ」に惹かれた。
 付箋を貼った1首を次に引く。
風止めば雪となるべし冬帽子きつちり被り白菜を採る
 離れ住んでいる病む夫を想いつつ、農業にいそしみ、帰宅した夫に安堵している。
 夫婦の情感の籠もった、佳い連作だと、僕は思う。




このエントリーをはてなブックマークに追加

IMG
 仙台市にお住まいの詩人・秋亜綺羅さんが、季刊個人詩誌「ココア共和国」vol.21を贈って下さった。
 先行する
同・vol.20は、昨年10月20日の記事にアップした。
 今号の表紙は、また多機能プリンタより、スキャンして取り込んだ。
 冒頭の招待作品、佐々木貴子の小詩集「学校の人」は、暗喩というより1つの象徴の世界を心の内に持って、外界と対峙している。
 形式は、1行34字で底を揃えた、20行ないし20数行の、散文詩である。生徒の「僕」や「わたし」が鬼を飼ったり、影がないので死んだ子の影を借りたり、人柱になったり、11編でシュールな世界を展開する。展開は悲劇的だが、それによってようやく外の世界から自分を守っている。
 橋本シオンの散文詩「わたしの国家」は「みんなが吐き出す死にたいという言葉で、とうきょうの空は真っ黒だ。」と始まり、藤川みちる「きみをさす」は「転がり落ちる心/きみは壊れてしまったんだ」と始まる。共に1990年前後生まれの作者で、現代の若者の生き辛さを描いているようだ。
 秋亜綺羅「黄色いバス」は「きみを待っているあいだに/核戦争がありまして」と始まり、核戦争後の世界を状況とともに心理の側から描いて、大震災後の世界をも捉えているようだ。
 秋亜綺羅の16編のエッセイ(副題「1200字のひとりごと」)は、政治や社会に対して大胆な提案をしている。


このエントリーをはてなブックマークに追加

 青磁社「永田和宏作品集 Ⅰ」(2017年5月・刊)より、第3歌集「無限軌道」を読み了える。
 第2歌集
「黄金分割」は、先の7月30日の記事にアップした。
 原著は、1981年、雁書館・刊。
 冒頭の「饗庭抄」は、生地の「饗庭(あいば)村」より採って、母恋の連作30首である。母の結核発病のため、2歳より近所に預けられ、4歳の時に母が亡くなり、彼には母の面影が無いという。想像の面影を顕たせるなど、哀切な連作である。
 また妻・河野裕子との葛藤、研究あるいは短歌のライバルとの競争、なども詠まれる。
 この間、1978年に31歳で理学博士となり、翌年に京都大学講師に採用された。短歌では、評論、討論会の企画・参加でも活躍した。
 以下に7首を引く。
立ちしまま浮子(うき)流れゆく流されて思えばわれに無き少年期
抱かれし記憶持たざるくやしさの、桃は核まで嚙み砕きたり
ささくれて世界は暮るる 母死にし齡に近く子を抱きて立つ
ずたずたにわれらさびしく眠る夜を遠く鳴きおりはぐれふくろう
敵として立たん覚悟のさしぐみて汗の鳩尾、壮年の坂
アノヤロウ、タダオクモノカ迸る蛇口の水に髪打たせいる
中枢を発して行き場失える怒り燃えおり 逆光の耳
0-37
写真ACより、「お花屋さん」のイラスト1枚。




このエントリーをはてなブックマークに追加

↑このページのトップヘ