風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

Kindle本の第1歌集「雉子の来る庭」をKDPしました。右サイドバーのアソシエイト・バナーよりか、AmazonのKindleストアで「柴田哲夫 雉子の来る庭」で検索して、購入画面へ行けます。Kindle価格:250円か、Kindle Unlimitedで、お買い求めくださるよう、お願いします。

2018年05月

佐藤涼子 Midnight Sun
 今月25日の記事「2冊を入手」で報せた内、佐藤涼子・歌集「Midnight Sun」のkindle unlimited版を、タブレットで読み了える。
概要
 単行本:2016年12月9日・刊、1,836円。
 kindle版:2017年1月30日・刊、800円。
 佐藤涼子(さとう・りょうこ)は、宮城県・在住。2012年「塔短歌会」入会。
 2012年12月~2016年9月までの304首、江戸雪「解説 「弱さ」を恥じている、そして守っている。」、著者の短い「あとがき」を収める。

感想
 第1章第1節の「グレープフルーツムーン」では生活詠や青春詠だったのが、第2節「記録」では震災詠、2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震の被害とその5年後までの後遺を描く。震災当時のことは回想詠らしいが、被災者らしい切迫感があって、心に迫る。
 その後の歌は、被災以後を生き延びる歌と、新しくはない恋の歌が並ぶ。「かぼちゃ煮てセーター編んだと詠むような人生だってあったはずだが」と詠んで、安楽な生のない覚悟をしている。
引用

 歌集の初めの方から7首を引く。
震度7母が我が子を抱くように職場の床でパソコンを抱く
眩暈か余震かもはや誰にも区別はつかない ただ揺れている
「母さんは流されたぞ」と告げられた者でも勤務させるしかない
手鍋から湯を注がれて髪洗い「もう疲れた」と泣いたその夜
もう駄目と悲鳴を上げる決心がようやくついた三年たって
一年で地平の高さが変わったか 更地の町の違いを探す
愛されていた人が死んだ 生かされて何かがずれた朝がまた来る




佐藤涼子さんから、ツイートを頂きました。
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 今月28日の記事「届いた2冊(2)」で報せた内、詩誌「水脈」62号をほぼ読み了える。
 ある政治的背景を持っており、同人詩誌とは名乗っていない。
概要
 15名23編の詩、俳句同好会の11句、N・えりさんの小説「青山さんのこと」、随筆2編、通知報告欄・等がある。
 生活詩が多く、先の豪雪が多く歌われている。宗教色のある作品もある。
感想
 Y・知一郎さんの「“きだらいの”おばさん」は旧作らしいが、幼くより親しんだおばさんが、老いて亡くなり、偲ばれるに至る細部が重ねられ、しみじみとする作品である。
 M・祐子さんの「春の芽吹き」は、大雪との闘いを描いた末に、「雪で身体をきたえたばあさん/また長生きするかと深いため生き」とユーモラスに厭世的である。
 M・あき子さんの「くまバチ」は、「私の畑には/くまバチが一匹います」と始まり、「この春もスモモの花に来ました/私が来たねと言うと/夫はうんと言いました」と締め括って、自然と共生する穏やかさを表わす。
 N・としこさんの散文詩「クローバの・・・・・」は、幼馴染みだった「えいちゃん」との交流とその後、自分が四歳の時に出征し亡くなった父への思いを交えて、転変する生を抒情した1編である。


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かたすみさがし 田中ましろ
 今月16日の記事「歌誌と歌集を入手」で報せた内、田中ましろ・歌集「かたすみさがし」kindle unlimited版を、タブレットで読み了える。
 プロローグのリンク8編、Amazonでの諸版の発行年次、価格は上のリンクで紹介したので、それをご覧ください。
概要
 田中ましろ(以下、敬称・略)は、1980年・生。理系大学院を修了後、大手広告代理店・勤務。
 短歌の投稿等をへて、フリーペーパー「うたらば」創刊。歌人グループ「かばん」所属。
 「かたすみさがし」は、3章編成で、第2章の父の病気と死の大連作を挟んで、恋の歌が(失恋を含めて)続く。第3章では、「一回のオモテの妻の攻撃がもう三時間続いています」などの歌があって、結婚したようだ。
 巻末に東直子「解説 抒情と存在証明」、著者「あとがき」、「新鋭短歌シリーズ ラインナップ」のリンクを収める。
感想

 この歌集は、ハイライトとメモの機能があるので、気になる歌にハイライトしメモを残すのだが、ある程度の量に抑えてアウトプットしようとすると、困難を感じる。
 以下に7首を引き感想を述べる。
茶化しあいながら大きな布を織る手を撫でていく風のいくつか
 彼女は歌の大きな曼陀羅を織るのだろうか。ライトな感覚で。
正しさを求めない日も手のひらは涙をぬぐうための大きさ
 正しくない恋に泣いている。穏やかに寄り添う二人が正しい恋だろうか。
ストライク投げても受け止めないくせにミットかまえて「恋」なんて言う
 独りよがりな、不実な恋人を詰っている。
告げられた余命をしまう場所がなく空を行く鳥見上げて父は
 思いの通う父の、不治の病と死を、しっかりと看取って、挽歌の大連作を成す。
生きるとは何を残すかではないと父は言う何も残さないと言う
 生の証明として作品を創作する、と僕は習って、今もそう思っているのだが。
どちらかが悪いわけではないのだと頬はひとしく緋色に染まる
 恋の末の諦念だろうか。暗いばかりの未来ではないようだけれども。
食塩は湿気を帯びる飛び出せば自由が待っているはずの朝
 妻となっての思いだろうか。初句2句が、心情をよく表わした暗喩となっている。


 
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 最近に手許に届いた、詩誌と結社歌誌を紹介する。
 まず5月24日(木曜日)に、詩誌「水脈」62号を受贈した。「詩人会議」系の、県内の詩誌である。いつも欠かさず送ってくださって有り難い。
 2018年5月15日・刊。A5版、55ページ。2月の新年総会において、I・信夫さんが代表を勇退し、同じく創刊メンバーのS・周一さんにバトンタッチされた。

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 5月26日(土曜日)に、僕の所属する結社の歌誌、「覇王樹」6月号が届いた。40ページ。
 僕の歌「メルカリ」6首(出詠8首より選歌)は、特選だった。
 僕の歌に就いて、もう1つのブログ「新サスケと短歌と詩」の、5月27日の記事より、少しずつ順次載せていくので、横書きながら是非ご覧ください。
 2誌とも、読み了えたなら、ここで改めて紹介したい。


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 今年も庭のハナザクロ(花柘榴)が咲き始めました。樹が伸びて、年々高くで咲いて困ります。
 昨年は、5月30日の記事
「サツキと花ザクロ」として、紹介しました。
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 庭の1角では、ハマナス(浜茄子)の花も、咲き始めました。
 妻の頂いて来た苗を植えたのですが、樹勢が強く、近くのコニファーや木苺を侵蝕して大株となっています。
 昨年の記事には、どのような表記でも載っていません。
 2つ共、相変わらずの日の丸写真ですみません。

 
 悲しい事に、水道水配管の漏れのため、再配管工事をしたので、家を40年前に建てて以来のツツジ3種大株と、30年来のムクゲ2種大木を、株元から伐りました。再生は無理かも知れません。
 ツツジは昨年5月5日の記事
「紫木蓮とツツジ」で紹介した3株ですが、幸い僕が殖やして庭のあちこちに植えたので、花は見られるでしょう。
 ムクゲは、昨年8月2日の記事
「ムクゲ2種」で紹介した、一重白花と八重赤紫花の種類です。株元から枝が出るか、根からでも芽生える事があるので、気をつけていきたいです。


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 5月16日の記事、「歌誌と歌集を入手」で報せた内、綜合歌誌「歌壇」(本阿弥書店)6月号を、作品中心に読み了える。
 リンク記事にも書いた、角川「短歌」の威圧感はない。
概要
 2018年6月1日付け・刊。通刊373号。169ページ。
 特集「生活詠にみる時代」、新シリーズ、特別作品30首、などを組む。
感想
 巻頭の「うたびと4字熟語⑱」からが面白い。栗木京子(以下、敬称・略)は、色紙に「天衣有縫」と書き、「ほころびや裂け目があったり接ぎがあたったりしてもよいのではないか。…」と解説する。ルーズで余裕があって好い。
 「全国大会の思い出 今昔⑥」は、僕の属する「覇王樹」で、「歌壇」に戻って来ていきなりの取り上げは、奇遇だった。
 特集「生活詠にみる時代」は、生きにくい社会を感じて、市民のリアルな感情をみたい、と組まれた(編集後記)。短歌の題材として、親元をはなれた60年代末からしか自分に迫る要素はないけれども、戦後短歌はいつも、時代に抗う心があったようだ。
 「定綱が訊く ぶつかりインタビュー 第1回」は、馬場あき子である。歌壇登場や「かりん」創刊とその後、夫・岩田正を語って、角川「短歌」5月号のインタビューよりリラックスしている。
 特別作品30首は、佐佐木頼綱「陽を受けて透く」である。ご夫婦に初の子供さんが産まれた喜びを詠む。FB上の記事で、写真なども観ているので、親しみを感じる。1首を引く。

・移ろへる一月の陽の輪の中で泣く子を抱いてゐる息をしてゐる
 坂井修一「蘇る短歌 第三回」は、一、二回を知らないのだが、科学者らしく実証的に論理的に短歌を論じている。
 短歌作品は、言葉遣いに新古ありながら、新と真を追求している。




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 5月23日に、三月書房より沖積舎「西東三鬼全句集」再販本(4,000円、税・送料・別)を買う積もりだったが、参考にAmazonを観ると、角川ソフィア文庫で1,339円で出ている。
 廉価で、俳句なら1句1行で読みやすいかと、注文した。
 翌日、5月24日の午後に届いた。内容を見ると、1ページ10句で、混み合って少し読みにくい。
 ちくま文庫「尾崎放哉全句集」(未読)の本編のように、1ページ5句くらいかと思ったのだ。字の大きさは同じくらいだが、俳歌の本は余白の美を尊ぶもので、ネット購入でよくある「残念」に近い。貧しい者の責任として、いつか読もう。
佐藤涼子 Midnight Sun
 書肆侃侃房の新鋭短歌シリーズから、佐藤涼子「Midnight Sun」kindle unlimited版を、Amazonよりタブレットにダウンロードした。
 このシリーズは、僕の知るところ、田中ましろ「かたすみさがし」を例外として、字が小さい。タブレットの下部のナビゲーションバーで「拡大」を使うと、1首がタブレット画面をはみ出す。ピンチアウトで拡大できるが、次ページでは戻るようで、ページごとの操作は面倒だ。
 栞機能はあるが、ハイライト、メモが利かない。それでも、そういう本だと思って読んで来たので、とくに不満はない。コストパフォーマンスにも由るのだ。




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