2018年05月
光森裕樹・歌集「うづまき管だより」kindle unlimited版を読む
光森裕樹の電子単独本・歌集「うづまき管だより」kindle unlimited版を読み了える。
同・第1歌集「鈴を産むひばり」は、今月11日の記事にアップした。
概要
彼の略歴の1部は、リンクした記事に書いたので、ご参照ください。
「うづまき管だより」kindle版は、2013年1月31日、第2改訂版・刊。128首、あとがき、初出一覧、略歴、等を収める。
あとがきで、勤めていた仕事を辞めると告げ、2014年1月・現在、沖縄県石垣市・在住。
感想
「鈴を産むひばり」と同じく、ハイライト、メモの機能のある本だったので、それに従い4首を挙げる。
もうあとがないんだからと云ひ聞かせ彼の日あなたは立ち上がりたり
歌集「鈴を産むひばり」の成功により、作歌中心の生活に移ろうとしたのだろうか、切実な事態である。
あなたがやめた多くを続けてゐる僕が何も持たずに海にきました
私事だが、僕の周囲にも、ブログを、短歌を、詩を止めた人がいる。僕も囲碁、洋蘭栽培、鉢植え園芸を止め、詩歌創作の他は、読書とネットの日々である。
鉛筆をタクトのやうにふりあげて始まりかたはみづから決める
ポーズは小さくても、大きな決意だっただろう。
そよかぜがページをめくることはなくおもてのままにkindleをおく
彼はkindleの読書、歌集出版の、先駆けだっただろう。
レトリック重用の歌(この歌集では、1時の現代詩風の韜晦など)、短歌グループに属さない事は、長く活躍するに向いていないように、僕は思う。彼の活躍を願う。
kindle版・詩集「改訂版 ソネット詩集 光る波」の刊行を発注
今日2回目の記事更新です。
今月8日の記事、原稿・完成に次いで、5月10日に電子書籍出版代行のパブフルに、2冊目のkindle版・詩集「改訂版 ソネット詩集 光る波」の原稿を送信し、刊行を発注しました。翌日11日には受注の返信がありました。
まだ紹介文、キーワード、価格などを決めねばならず、正式な契約になっていません。
5月14日(月曜日)にはそれらを送信して、正式契約し、編集作業に入るようお願いする予定です。
費用はパブフルサポートプラン・29,800円、表紙作成・5,000円、クーポン・5,000円値引きで、計・29,800円です。
写真ACより、「アールデコ・パターン」の1枚。
「年刊句集 福井県 第56集」より(7)
福井県俳句作家協会「年刊句集 福井県 第56集」(2018年3月・刊)より、7回目の紹介をする。
今月9日の記事、同(6)に次ぐ。
概要
今回は、161ページ~186ページの26ページ分、52名の520句を読んだことになる。
南越地区(越前市、南越前町)の、すべてである。
感想
俳歌で新と真を求めると言っても、レトリックの新として、比喩(暗喩を主とする)は、たくさんだという気がする。戦後詩において、暗喩を主とする比喩は大掛かりに追及され、その時代も過ぎてしまった。むしろ直叙や対句、リフレイン、オノマトペ等の古典的レトリックに、新しい技法を求めるべきだろう。また新しい題材も、無限にある。
俳歌の真といっても、人情の真は、古代よりあまり変わらないように思える。その真の心情の発露は、無限の形を取るけれども。
引用
以下に3句を引用する。
T・房子さんの「小夜時雨」10句より。
ねむる児に母の団扇と童歌
K・秀峰さんの「笑ふ絵馬」10句より。
もて余す串刺し鯖や半夏生
(注:福井地方では半夏生の日を「はげっしょ」と呼んで、その日に焼き鯖を食べる風習がある)。
K・蒼美さんの「初鏡」10句より。
身に入むや今のままでと願ひをり
写真ACより、「おもてなし」のイラスト1枚。
今月9日の記事、同(6)に次ぐ。
概要
今回は、161ページ~186ページの26ページ分、52名の520句を読んだことになる。
南越地区(越前市、南越前町)の、すべてである。
感想
俳歌で新と真を求めると言っても、レトリックの新として、比喩(暗喩を主とする)は、たくさんだという気がする。戦後詩において、暗喩を主とする比喩は大掛かりに追及され、その時代も過ぎてしまった。むしろ直叙や対句、リフレイン、オノマトペ等の古典的レトリックに、新しい技法を求めるべきだろう。また新しい題材も、無限にある。
俳歌の真といっても、人情の真は、古代よりあまり変わらないように思える。その真の心情の発露は、無限の形を取るけれども。
引用
以下に3句を引用する。
T・房子さんの「小夜時雨」10句より。
ねむる児に母の団扇と童歌
K・秀峰さんの「笑ふ絵馬」10句より。
もて余す串刺し鯖や半夏生
(注:福井地方では半夏生の日を「はげっしょ」と呼んで、その日に焼き鯖を食べる風習がある)。
K・蒼美さんの「初鏡」10句より。
身に入むや今のままでと願ひをり
写真ACより、「おもてなし」のイラスト1枚。
光森裕樹・歌集「鈴を産むひばり」kindle unlimited版を読む
光森裕樹・歌集「鈴を産むひばり」kindle unlimited版を読み了える。
今月4日の記事、「歌集5冊をダウンロード」で報せた内の、1冊である。
概要
光森裕樹(みつもり・ゆうき)は、1979年・生。
京都大学・卒業後は特定の組織に属さず歌作を続ける。
歌集は、2010年、港の人・刊。2013年、電子書籍化。314首を収める。
本・歌集にて「現代歌人協会賞」受賞。
引用と感想
ハイライト、メモの利く本だったので、それに従って6首と感想を述べる。
鈴を産むひばりが逃げたとねえさんが云ふそれでもいいよねと云ふ
「鈴を産む」が、雲雀の鳴き声の比喩だったとしても、それが逃げる、それでもいいよね、とは何の暗喩だろうか。
母と呼ぶひとふたりゐてそれぞれが説くやさしさの違ひくるしき
事実だろうか。バックボーンたる母が、二人、異なる事を説くのは、苦しいだろう。
手を添へてくれるあなたの目の前で世界をぼくは数へまちがふ
協力者がいながら成し遂げられない、社会不適応、世界への異和感を表わすか。
だとしてもきみが五月と呼ぶものが果たしてぼくにあつたかどうか
レトリックだけの歌だと思った。しかし言い負かされた時の、負け惜しみかも知れない。
人を待つ吾はめぐりの街灯に暗き展開図を描かれて
自分の幾つも映る影を、暗喩と句跨りで描く。
陽の色の抜けゆく草はら踏みわけて検索結果になき湖へ
真実という湖は、検索結果で辿りつけない、の意だろうか。
総じて、重い内容を、華やかなレトリックで、旧かな遣いの異化を以って、描いている。
角川「短歌」5月号を読む
先の4月26日の記事で、ダウンロードを報せた角川「短歌」5月号を、短歌作品中心に読み了える。
「現代歌人特集シリーズ」の「馬場あき子」は、面白くなかった。新作50首は力作である。
ただし総論、鼎談、2つの対談、「馬場あき子の言葉」8編なども、あまりに持ち上げすぎて、生前葬のようである。もっともこの特集で沈む、歌人ではないだろうが。
巻頭作品では、道浦母都子「皇子と王子」28首が関心を惹いた。彼女の初期以外の作品を読んでいないので、ここへ至る道が偲ばれる。
散文では、酒井順子「平安の女友達」が面白かった。菅原孝標女を、女友達のように扱って、紹介している。
1首のみ引用する。小田裕侯の「冬青」7首より。
耐へ来しは吾より妻の多からんいつしか耳の疎くなりつつ
なお今号で、角川「短歌」を離れようと思う。あまりの権威主義、守旧主義のせいである。電子版雑誌の読みにくさ故ではない。
綜合歌誌を何冊も読むほど、資金も時間もない僕なので、本阿弥書店「歌壇」に戻るべく、既に同誌6月号をAmazonに予約した。
「年刊句集 福井県 第56集」より(6)
福井県俳句作家協会「年刊句集 福井県 第56集」より、6回目の紹介をする。
今月2日の記事、同(5)に次ぐ。
概要
今回は、123ページ~159ページの36ページ(途中、扉が1ページある)、71名の710句を読んだ事になる。1ページ2段、1人1段10句の発表だから。
奥越地区(勝山市、大野市)と、鯖丹地区(鯖江市、越前町、池田町)のすべてである。
感想
俳歌の芸術性というと、戦後の「第二芸術論」に苦しみ、努力もあったという。
しかし文学としての芸術性から観て、俳歌は詩に及ばないのでは、と僕は思う。ただし詩と言っても、現在の訳のわからない1部は除く。
俳歌は、大衆芸術として、現在の隆盛に至っている。想いは短さと定型によって、1作品となり、多く創り多く捨てる事に由って、選ばれた率の少ない秀作が残る。
俳句が世界的詩型として広まっている事は喜ばしい。
引用
以下に3句を引く。
故・M・としさんの「立葵」10句より。
風を着て陽を着て早苗根を張りぬ
H・定子さんの「火の玉」10句より。
一度のみ着たる浴衣や子から孫
U・一法さんの「蟻地獄」10句より。
初仕事うるし一滴膝に落つ
写真ACより、「お花屋さん」のイラスト1枚。
今月2日の記事、同(5)に次ぐ。
概要
今回は、123ページ~159ページの36ページ(途中、扉が1ページある)、71名の710句を読んだ事になる。1ページ2段、1人1段10句の発表だから。
奥越地区(勝山市、大野市)と、鯖丹地区(鯖江市、越前町、池田町)のすべてである。
感想
俳歌の芸術性というと、戦後の「第二芸術論」に苦しみ、努力もあったという。
しかし文学としての芸術性から観て、俳歌は詩に及ばないのでは、と僕は思う。ただし詩と言っても、現在の訳のわからない1部は除く。
俳歌は、大衆芸術として、現在の隆盛に至っている。想いは短さと定型によって、1作品となり、多く創り多く捨てる事に由って、選ばれた率の少ない秀作が残る。
俳句が世界的詩型として広まっている事は喜ばしい。
引用
以下に3句を引く。
故・M・としさんの「立葵」10句より。
風を着て陽を着て早苗根を張りぬ
H・定子さんの「火の玉」10句より。
一度のみ着たる浴衣や子から孫
U・一法さんの「蟻地獄」10句より。
初仕事うるし一滴膝に落つ
写真ACより、「お花屋さん」のイラスト1枚。