風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

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2019年11月

グアテマラ伝説集
 文庫本棚より、岩波文庫のアストゥリアス「グアテマラ伝説集」を取り出して、読み始める。
 ミゲル・アンヘル・アストゥリアス(1899年~1974年)は、グアテマラ生まれ、インディオの血を引く混血児である。1967年、ノーベル文学賞受賞。
 世界的にラテンアメリカ文学が流行した時代があり、日本でも翻訳され、何種類かのラテンアメリカ文学全集が出版された。それらは古書界でも高価で、僕は買えなかった。
 ガルシア・マルケスの「百年の孤独」を始めとする新潮社・刊の何冊か、集英社版「世界の文学」でコルタサル「石蹴り遊び」など何編か、を読んだ記憶があるだけである。
 アストゥリアスの作品は初めてである。マジック・リアリズムの創始者の1人とされる。
 この岩波文庫は、2009年、第1刷。定価:720円+税。
 9編を収め、僕は初めの「グアテマラ」、「「金の皮膚」の回想」を読み了えた。
 「グアテマラ」は、インディオ文明、スペインの征服時代、現代のグアテマラ、と積み重ねられた都市と文明を語る。
 「「金の皮膚」の回想」は、古代文明の伝説を基とする幻想譚と言って良いだろうか。フランスへ亡命して、マヤ族の創世神話、年代記を、仏訳からスペイン語に翻訳するなど、古代メソアメリカの研究の上に、書かれた。
 このあと、7編の伝説集が続く。


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 青幻舎の文庫版「北斎漫画」(全3巻)より、第3巻「奇想天外」の第4章「神仏風姿」を見了える。
 同・第3章「百鬼図会」は、今月12日の記事にアップした。



 「神仏風姿」は196ページ~244ページの、49ページに渉る。
 釈迦の小さな図より始まり、空海の図などを交え、~尊者と称される僧の図が10程載る。
 狐に乗るダキニ天、字のごとく稲を担う稲荷大明神、日本神話の猿田彦太神、天臼女命(アメノウズメノミコト)等、ググってみると面白い。大苫辺尊、大戸之道尊も、同様である。ググるとWikipediaに出て来る。手置帆負命、天彦狭知命、共に神話で当時の庶民にも知られていたのだろう。
 三面大黒天、武士に信仰のあった摩利支尊天、刀八毘沙門天、魚濫観世音、正八幡大菩薩、など当時の信仰を集めたのだろう。
 連歌・俳諧の宗鑑、一休禅師の図もある。維摩居士、達磨(?)の面壁の図がある。風神雷神の図は俵屋宗達の風神雷神図に及ばない。和合神を仕舞いの図とする。
 最後に「而尾」の文字が掲げられ、終末、フィナーレの意味らしい。北斎漫画15冊の結着である。

 この本には、後に各冊の序文を収め、蜀山人、式亭三馬、柳亭種彦、など見たことのある名前もあるが、褒め上げる挨拶文を出ないので、ここでは取り上げない。これで青幻舎の文庫版「北斎漫画」の紹介の仕舞いとする。
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写真ACより、「キッチン・グッズ」のイラスト1枚。


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 角川書店「増補 現代俳句大系」第15巻(1981年・刊)より、8番めの句集、石川桂郎「四温」を読み了える。
 先の10月17日の記事、永井龍男「永井龍男句集」を読む、に次ぐ。


 
 また2017年2月11日の記事に、同・大系第11巻より、石川桂郎「含羞」がある。


 石川桂郎(いしかわ・けいろう、1909年~1975年)は、家業の理髪店を1941年・廃業、総合俳誌の編集長を経て、食道癌で亡くなった。

 原著は、1976年、角川書店・刊。遺句集。515句(年代順)と長男の「あとがきにかえて」を収める。
 僕は1970年代が、よくわからない。初めは囲碁に没頭し、帰郷して職を転々、1977年についの就職、1978年に結婚、1979年に一人子・誕生と、文学に目を向ける余裕がなかった。

 「含羞」では、貧しい家庭の温かみがある、と書いたけれども、終生を家族に貧しい思いをさせてはいけない。また自分一人は美食家であったという。
 僕は結婚後、現場職で落魄感に耐えながら勤め続け、再任用3年めで退職した。彼は甘かったと、後世の名誉はどうあれ、僕には言える。


 以下に5句を引く。
声寒く無心す家賃四年溜め
植木屋の無口めでたし松落葉
にんにくを薬の食や冬ぬくし
意地汚しと言はるるも鯰煮て
粕汁にあたたまりゆく命あり
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写真ACより、「キッチン・グッズ」のイラスト1枚。


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 11月19日(第3火曜日)の朝9時半より、メンバー3人が喫茶店に集まって、短歌研究会A第62回を持った。
 同A第61回は、先の10月19日の記事にアップした。



 僕が早めに喫茶店に着き、ブレンド・コーヒーのモーニング・セットを食べ了える頃、MさんとTさんが着いた。
 歌誌の貸し借り・返却、情報交換のあと、研究に入る。研究会Aは、お互いの詠草の検討である。
Mさんの11首より。
 2首めの下句、「並木の紅葉あかあかと燃ゆる」は赤が重複なので、結句を「夕陽に燃ゆる」に直すよう、Tさんが奨めた。
 6首めの上句中句「小春日になにも成さぬは退屈で」を、中句「惜しくして」に直すよう、僕が奨めた。他に何ヶ所か。
Tさんの11首より。
 2首めの中句4句が「太陽の陽射しに‥」と重複なので、自分で直す事になった。
 10首めの中句「日差しかや」の「かや」は詠嘆の助詞が重なっているので、Tさん自身が旧案「かな」に戻した。他に1ヶ所。

僕の10首より。
 僕のネット用語の多用や、独善性を反省し、歌稿プリントより、選び直して、結社歌誌に出詠する事にした。
 7首めの結句「ネット漬けなり」の「なり」が古典文法だというと、Tさんが「だよ」に直すよう、奨めた。

 研究会のあと、僕の今期1ヶ月の詠草、70首余のプリントを2人に読んでもらい、感想をもらった。
 次回の日程を決め、11時近くに散会した。
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写真ACより、「キッチン・グッズ」のイラスト1枚。



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 11月15日に、総合歌誌「歌壇」(本阿弥書店)2019年12月号が届き、覇王樹全国大会を挟む4日間で、ほぼ読み了えた。
 同・11月号の感想は、今月8日の記事にアップした。



「歌壇」11月号
 特集の、斎藤茂吉VS佐藤佐太郎は、関心を持てなかった。斎藤茂吉は全短歌を読んだけれども、佐藤佐太郎は生前版の全歌集を持ちながら読んでいない。斎藤茂吉の歌が、近代短歌の礎石の1つと認めるが、いま傾注すべき歌人ではないと考える。
 事故・災害等の歌もなく(それらを詠むべきとは言わないけれども)、回想や観念や生活周囲(内部ではない)歌ばかりである。
 歌誌代の半年分を送金して、初めての歌誌だけれども、代金が尽きたなら、他の歌誌に乗り換えようかと思っている。県立図書館の雑誌の棚に、歌誌が並べられ、稀に手に取ってみると、僕の思いと近い歌誌がある。



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 11月16日(第3土曜日)午後一時より、吹田市のあるホテルで、第61回 覇王樹全国大会が催された。僕は地理に疎く、JR新大阪駅より道を聞きながら、ようやくホテルに辿り着いた。

 受け付けで、大会の事務局として僕が問い合わせたりしたY美加代さん、「紅玉集展望」で批評を下さったO朝子さん、歌集とエッセイ集を下さったW茂子さん、佐田・編集人、歌集を下さったS素子さんたちに、改めてお礼を申し上げた。

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 Y美加代さんの司会で、佐田編集人の挨拶があり、昨年逝去された佐田毅代表へ黙祷を捧げた。
 参加者は29名、来賓3名の、総32名の大会となった。
 郷土研究家のM啓一氏の講演「桐田蕗村と若山牧水」があった。若山牧水との深い交わりがあった桐田蕗村が、橋田東聲らと「珊瑚礁」、「覇王樹」を創刊し、生涯「覇王樹」に依ったとされる。桐田蕗村のお孫さんにあたる方が、言葉を下さった。
 その後、集合写真を別室で撮った。
 14時20分より、歌会に移る。O朝子さんの司会で、全29首を、2名or3名が批評し、助言者4名が分担で助言した。途中休憩で、ケーキとコーヒーor紅茶を頂いた。
 15時55分~17時15分で、歌会の後半。その後15分で、助言者の全体的な講評があった。
 覇王樹各賞の表彰があった。
 会計報告のあと、編集人・佐田公子さんが、代表・編集発行人となり、4名の編集委員を置き、先達の数名(何名か僕は忘れた)は顧問として相談に乗って頂く方針が発表された。異見も出たが、重鎮のH俊明氏が収めて、方針は了承された。


 18時半~20時、別室で夕食懇談会が持たれた。
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 3テーブルだった。僕の左が編集委員のS素子さん、右側が顧問のH俊明氏で、貴重なお話を伺えた。H俊明氏は、僕のブログを読んでいて、Kindle版の僕の2詩集も読んで下さっていた。僕が梅崎春生全集を読んでいるなら、友人の梅崎春生・研究書を送ろうと約束もして下さった。恐縮至極である。

 お開き後、当ホテルの個室に1泊し、朝早く帰路に着いた。佐田公子さんに挨拶し、H俊明氏とは地下鉄で途中まで一緒だった。お昼過ぎに地元駅に着き、妻の迎えの車で、無事に帰宅した。




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 D・H・ロレンスの「愛と死の詩集」Kindle Unlmited版を、タブレットで読み了える。
 Amazonよりのダウンロードは、今年3月15日の記事、歌集3冊と詩集1冊をダウンロード、で紹介した。




D・H・ロレンス 愛と死の詩集
 安東一郎・訳。(有)グーテンベルク21・刊。Kindle版は、2014年7月4日・刊。432円。
 訳者がD・H・ロレンスの全詩業から、59編を選んで訳出した詩集である。
 読んだ小説「息子と恋人」、「チャタレイ夫人の恋人」(旧訳)が合わなかったとリンクに書いたけれども、結局、この詩集も僕を満足させるものでなかった。読了に月日が掛かったのは、そのせいである。
 ホイットマンの影響を受けたという、説教臭さ、デリカシーの無さだと思う。僕は北原白秋や、戦後「荒地」派の詩を好んで読んだ。
 D・H・ロレンスは生涯、性愛の哲学を叫び続けたと翻訳者は書くけれども、性愛は人生の最大部分ではないと、僕は考える。
 旧いイギリスで、炭鉱夫の息子に生まれた彼が、抑圧と貧困から脱出するために、世に反抗した事は、わかる気がする。



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