風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

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2020年05月

 Amazonからタブレットにダウンロードした、Kindle版「室生犀星作品集」より、怪談1編とエッセイ2編を読んだ。
 先行して「忘春詩集」を、今月11日の記事にアップした。



 怪談は「あじゃり」と題する。峯の寺の阿闍梨は、孤高に住んでいたが、他寺に100日の修行より帰る時、一人の童子を連れて来た。稚児趣味ではなく、実の親子という。仲睦まじく住んでいたが、童子が病気になり亡くなると、阿闍梨は取り乱していた。ある禅師が後日、寺を訪ねると、阿闍梨はされこうべを抱いたまま、衣類と白骨になっていた。以上がストーリーだが、孤高の僧が人間の情に囚われて滅びる、反宗教色を見るのは、うがち過ぎだろうか。
 犀星が寺の内妻に貰われたという、出自も関わるかも知れない。

 エッセイの1編は、「芥川の原稿」である。犀星が芥川龍之介の部屋を訪ねると、先客の雑誌編集者が原稿の強要をしている。来月号に書く約束で、編集者は帰る。
 編集者の眼力を恐れる事に触れる。またある編集者は、芥川の原稿を書巻にして大事にしたという。犀星の回顧談だろう。

 もう1つのエッセイは、「冬の庭」と題する。作庭趣味のあった犀星が、冬の庭には春夏秋の手入れ、心遣いが表れると述べ、冬庭の眺め方を説いている。骨董にも作庭にも趣味がない僕は、ははあそうですかと拝読するよりない。
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写真ACより、「アジアンフード&ドリンク」のイラスト1枚。




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 綿矢りさの連作小説、「しょうがの味は熱い」と「自然に、とてもスムーズに」を読み了える。
 文庫本3冊をまとめて買った内、先行する「ひらいて」は、先の2月24日の記事にアップした。文庫本3冊をメルカリでで買った経緯にも、リンクしている。



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 この文春文庫は、2015年5月10日・刊、176ページ。
 「しょうがの味は熱い」と「自然に、とてもスムーズに」の連作2編を収め、続き物と呼んで良いくらいである。

 帯にもあるように、同棲3年になりながら、結婚に踏み切れない弦(ゆずる)と、結婚を焦る奈世の物語である。弦の経済等で躊躇う気持ちも、長く同棲して焦る奈世の気持ちもわかる。
 後編では、弦が婚約指輪を渡し、明日に入籍しようとしながら、どたん場で延期する。
 僕には同棲どころか、両想いの恋もなく、お見合いで結婚したので、そのような男女の思いは、切実には伝わらない。
 恋にも結婚にも、1時は修羅場があるだろうから、同じ事である。



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 僕の属する同人詩誌「青魚」No.92を読み了える。
 到着は、今月9日の記事、同人詩誌2種が届く、で報せた。リンクより、関連過去記事へ遡れる。



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 「青魚」はB5判、目次より後書まで含めて、37ページ。2段。
 僕はソネット「ブロック」、「クーデターか亡命か」、「ボケの自覚」、「古書店興亡」4編を寄せた。ネットで公開する時もあるだろう。

 冒頭はY・英一さんの追悼文「ハインライン氏の訃報を知って」2ページである。アメリカの旧友の死を嘆いた。
 T・幸男さんは4編を寄せるが、内2編は既刊詩集からの再掲である。僕と同じく、詩想が溢れないらしい。
 新参加のS・沈潜さんは戯話めいて深刻な「アイコ」を寄せた。代表、T・晃弘さんと同じく、老年大学に学んでいるA・信子さん、H・喜代子さん、K・文子さん、T・育夫さんも家族を描くなど、元気である。
 T・晃弘さんの追悼文「詩友、鎌数学を悼む」は、「青魚」創刊同人の鎌数学さん(寺の住職だった)の死を悼んでいる。


 A・雨子さんの長い散文の連載は、今回は「慶太郎さん」11ページである。家族親族・同級生らを回顧して、当人には手応えがあるのだろう。
 詩の困難な時代に各人、向かう態勢が少しずつ違ってきたようだ。



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 プロ・マンガ家インスタグラマー(フォロワー、3万4千人越え)、あんこと麦とのブロガー等としてご活躍の、暁龍さん(あかつき りゅう さん)が、ブログでフレークシール集の販売を告知していたので、フリマのメルカリを通して購入した。メルカリで「あんこと麦と フレークシール」で検索すれば良い。
 昨年8月に次ぐ、第2弾である。


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 まず封筒より出し、ぷちぷちシートを取った、ビニール袋入り。
 次にビニール袋より出し、ばらけさせた所。期待が高まる。


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 パソコン机のある広縁の、入り口ガラス戸の下部、板部分にランダムに貼った所。写真は鮮明ではない。
 飼い猫の、あんこさん、麦くん、まるくんの動きを巧みに捉えている。
 全21枚。価格:920円(税・送料・込み)。原価、送料、手数料を引くと、手許にはあまり残らないと思われる。
 心の和むフレークシールをどうぞ。


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 角川ソフィア文庫「西東三鬼全句集」より、第2句集「空港」を読み了える。
 第1句集「旗」は、今月10日の記事にアップした。



 句集「空港」は、1940年6月、河出書房「現代俳句」第3巻に所収。句集「旗」より抜いた句に、新作を加えてある。なお同年8月、京大俳句弾圧事件で検挙された。

 なお「空港」の内、どの句が「旗」の抜粋であり、新作であるか、腑分けする労を取っていられない。
 「旗」の自序に、「或る人達は「新興俳句」の存在を悦ばないのだが…。私の俳句を憎んだ人々に、愛した人々にこの句集を捧げる。」と、新興俳句の旗手として揚言した。
 「空港」では、内を「空港」と「戦争」の2章に分けた。生活吟では負のイメージの句が多い。
 戦争吟では、かなをカタカナとし緊迫感を出すとともに、新感覚派的スタイリッシュ性がある。

 以下に5句を引く。
海鳴りの晦きにおびえ氷下魚釣る

 (筆者注・氷下魚は、コマイと訓み、タラ目の魚)
主よ人等ゆふべ互みにのゝしれり
緑蔭に三人の老婆わらへりき
湖を去る家鴨の卵手に嘆き
戦友ヲ葬リピストルヲ天に撃ツ
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写真ACより、「アジアンフード&ドリンク」のイラスト1枚。




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 福井県俳句作家協会・編の「年刊句集 福井県 第58集」(2020年3月・刊)より、5回めの紹介をする。
 同(4)は、今月7日の記事にアップした。リンクより、関連過去記事へ遡れる。



 今回は、104ページ~139ページ、坂井地区(坂井市、あわら市)と、奥越地区(勝山市、大野市)の、68名、680句を読んだことになる。
 老いの華やぎ、独居老人、代替わりの機微、など惹かれる句は多い。
 前衛、古守、ともに少なく、現代の調和の吟じ方だろうか。

 以下に5句を引く。
寒紅はハネムン土産パリの色(O・清女)
薄氷や木の葉ひとひら留めをり(W・千加江)
脇役をあれこれ替へて大根煮る(K・陽子)
帰省子の未だ手こずる蔵の鍵(T・滋良)
柚子味噌の香りにあそぶ独り膳(S・恭子)

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写真ACより、「アジアンフード&ドリンク」のイラスト1枚。



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 Kindle版「室生犀星作品集」より、「忘春詩集」を読み了える。
 前回の「抒情小曲集」は、今月4日の記事にアップした。




 室生犀星(むろうorむろお・さいせい、1889年~1962年)は、既に著作権が切れており、こういったKindle版・作品集を、99円という破格の値段で出版できるのだろう。
 「忘春詩集」の原著は、1922年、京文社・刊(Wikipedeiaに拠る)。

 「忘春詩集」は、自序と「忘春詩集」編、「わが家の花」編、「古き月」編、「かげろふ」編等より成る。
 「忘春詩集」編では、「象」などの骨董趣味、「童心」などの作庭趣味が、既に始まっている。
 「わが家の花」編では、儲けた幼児を亡くした悲しみ、寂しさがうたわれている。僕は子を亡くした悲しみを知らないが、切々とうたわれて、心に迫るものがある。
 「古き月」編の「貧しきもの」では、極貧時代を経た者としての心情、買い物などを描く。

 1919年には中央誌に小説が載り、作家として成功しつつあったが、詩作を続けた。この作品集に「愛の詩集」、先の「抒情小曲集」と、詩集は3冊のみらしく惜しまれる。
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写真ACより、「アジアンフード&ドリンク」のイラスト1枚。



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