風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

Kindle本の第1歌集「雉子の来る庭」をKDPしました。右サイドバーのアソシエイト・バナーよりか、AmazonのKindleストアで「柴田哲夫 雉子の来る庭」で検索して、購入画面へ行けます。Kindle価格:250円か、Kindle Unlimitedで、お買い求めくださるよう、お願いします。

2021年06月

 思潮社の現代詩文庫181「続続・辻征夫詩集」を読み始める。
 到着は今年3月20日の記事、「届いた3冊を紹介する(11)」で報せた。


 また先行する「続・辻征夫詩集」のしまいの記事は、先の5月28日にアップした。



 「続続・辻征夫詩集」は、2006年・刊。辻征夫の没した2000年より、6年後である。2003年には、書肆山田より「辻征夫詩集成」が刊行されており、それに対抗するためにも、また現代詩文庫で締めるためにも、「続続・同」は必要だったのだろう。
 「続続・同」の冒頭は、これまで現代詩文庫の抄出で、除かれていた作品である。当時の編集者には考えがあったのだろうし、詩人も納得していたのだろう。それが没後、全詩集に対抗するためにも、拾い上げるのは忸怩たる思いがあっただろう。ばらばらではあるけれど、現代詩文庫3冊で、散文を1部含め、全集をまとめた事は、晴れがましいだろう。

 「続続・同」の冒頭は、現代詩文庫で5詩集から漏れた作品を集める。
 「天使・蝶・白い雲などいくつかの瞑想」からでは、「むらさきの蝶」で「酒に依存し  酒に夢を/つむぎながら」と告白する。
 詩集「かぜのひきかた」の「アルバムの余白に」では、「ぼく 依然として/六年B組の/あの/ぼくです」と締める。大学を卒業するに至っても転向せず、少年少女のまま、成年とならない人が僅かにいると聞く。辻征夫も、稀なその1人なののだろう。「続・同」の詩集「鶯」より表題作「鶯」に現れる10歳に成ろうかという女の子は、敗戦革命を乗り越えられず、成年とならなかった女性(あるいは詩人)の内心のようだ。
 詩集「ボートを漕ぐおばさんの肖像」からでは、詩人の胸に住む優しいおばさんを巡って、縷々と語る。「ぼくにはまだ会ったことのない/不思議なおばさんがいて/いつもぼくの脳細胞の暗闇で/優しく呟いてくれるのだが」。

ホワイトサウンド
「ゆりの里公園」から、「ホワイトサウンド」の1枚。




このエントリーをはてなブックマークに追加

 今日2回めの記事更新です。
 昨日に続き、僕の未発表ソネット10編より、(6)をアップします。

  
再会
    新サスケ

天才詩人の森晴美さんは
上智大学文学部仏文科を中退して
僕は神戸大学経営学部を中退して
地元の書店で偶然に再会した

彼女は「少女漫画にはまってるのよ」と苦笑した
僕は「一市民として生きる」と告げた
そのあとの七転八倒は話したくない
短歌と出会い救われた

「短歌は自己救済の文学である」と言われる
森さんはフランスに留学し
三度の結婚と離婚のあと

フランス食料機関の日本支局長となり
フランスの勲章を受けたとの噂である
僕と彼女は今 連絡を取れない
ロイヤルサンセット
「ゆりの里公園」より、「ロイヤルサンセット」の1枚。
このエントリーをはてなブックマークに追加

 6月12日の午前中に、坂井市春江町にある「ゆりの里公園」へ行って来ました。
 スライドショーながら、YouTube動画にしました。ご覧ください。BGMが大きめですので、絞ってください。


 帰途には、「うな雄」でうな弁を2つ、Go to Eat券でテイクアウトし、贅沢をしました。



レッドアラート



このエントリーをはてなブックマークに追加

 今日2回めの記事更新です。
 昨日に続き、未発表ソネット10編より、(5)をアップします。

  目覚まし時計

    新サスケ

目覚まし時計を予約するが
ベルが鳴らないのか
目覚めない朝が重なった
故障かと二台めを買う

安価な品である
実験をすると鳴る
だんだん音が大きくなる
それでも寝過ごした

僕の朝の眠りが深いらしい
目覚しのベルはしばらくで止むらしい
どうにもならない

前夜に妻に頼んで
朝にひと声かけてもらうと
すぐに目覚めるのだが


0-13
写真ACより、「建築」のアイコン1枚。


このエントリーをはてなブックマークに追加

 ぶんか社のマンガ誌「ご近所の怖い噂」vol.167より、暁龍さんの「40歳の夜明け」(モノクロ32ページ)を読み了える。
 本の到着は、今月5日の記事、届いた4冊を紹介する(5)で報せた。

 暁龍さんのマンガを読むのは、今年3月12日の記事にアップした、「可哀想な姉」以来である。リンクより、過去作品の感想へ遡れる。




「40歳の夜明け」
 第2特集「再婚良いトコ悪いトコ」の1編として、旧作が掲載される。画像は、ページを開いて多機能プリンタに押し付け、スキャンしたものをトリミングした。
 暁龍さんは、プロ・マンガ家として、「あんこと麦と」のブロガーとして、フォロワー4万4千人以上のインスタグラマーとして、またTwitterYouTubeでご活躍である。

 「40歳の夜明け」は、夫のモラハラによってか離婚した主人公が、少年となった息子2人を抱えて、再婚相手を求め、幸せを求めてゆく物語である。友人より45歳未婚という銀行員を紹介され、交際するが性格が合わず別れる。
 ネットの出会い系サイト(きちんとした所)を友人に勧められ、最後にしようとメールした男性(バツイチ、46歳、子供なし)と遣り取りをし、実際に会うことになる。喫茶店にてお互いの離婚の訳を話し合い、某テーマパークで遊ぶ。
 男性は、主人公の2人の息子に会う。息子は「お願いします」「この人を幸せにしてあげて下さい」と、大人っぽく理解を示す。主人公は「ありがとう」と涙をあふれさせる。しまいのト書きでは、「明日のことは わからないけど 肩を寄せ合って 生きて行くのも いいかもしれない」と小さな結婚写真と共に、ハッピィエンドである。
 このマンガは、暁龍さんの体験に基ずくフィクションである。ネットの最先端を取り入れる所が、暁龍さんらしい。



このエントリーをはてなブックマークに追加

 今日2回めの記事更新です。
 昨日に続き、10編のソネットより(4)をアップします。

   
スピーカーセット
     新サスケ

病院で大動脈瘤がみつかり
太過ぎるので開胸手術と言われる
はじめての経験なので 怖い
一度は拒否すると妻に言った

妻と取り引きをした
僕が手術を受ける代償に
ほしかったJBLの3ウェイの
スピーカーセットを買うことになる

Amazonより注文の翌日に届く
低音も高音も良い
ふと思いついて 妻に

「六万七千円て、おめの月給でねえけ?」
「そうよ なに?」と無邪気な返事
「スマン」と僕は心より詫びた


 その後の顛末は、4月4日のブログ記事をご覧ください。


ステレオ・スピーカー




このエントリーをはてなブックマークに追加

 岩波文庫のヒポクラテス「古い医術について 他八篇」より、7回めの紹介をする。
 同(6)は、先の5月8日の記事にアップした。リンクより過去記事へ遡れる。


 今回は、「流行病 第三巻(148ページ~)」、「医師の心得(14節、181ページ~)」、「誓い(191ページ、192ページ)」を以って、本書の仕舞いまで(注解、解説を除いて)読み了えた事になる。
ヒポクラテス
 岩波文庫の表紙を再掲する。




 「流行病 第三巻」には、12の症例、「気候」15節、16の症例の記述がある。症例では、回復した例もあるが、死亡した例が多い。「気候」では、ある年の気候によって、「悪性の丹毒」が多数発生したとする。症例を見ても、余病を併発しても、1病態とされた場合があるようだ。体温計もない状態では、病状の把握も、排泄物、出血、痙攣、譫言等でしか判断できない。

 「医師の心得」14節では、無益な議論を戒め、報酬に気遣い、模索状態では他の医師の助力を求めるよう勧めている。医師の身なり、講演への欲求にも戒めを書いている。
 「誓い」は文庫でわずか2ページであるが、今の医師もほぼこれに服しているらしい。医術の教授、学習を受けさせること、を無償とする。「情交を結ぶようなことはしません。」とあるのは、不犯だろうか、不倫しないという意味だろうか。
 読み了えて、紀元前400年頃に、呪術や哲学であった医術より、技術として医学を形成しようと藻掻くさまが見えるようである。


このエントリーをはてなブックマークに追加

↑このページのトップヘ