青磁社「永田和宏作品集 Ⅰ」(2017年5月・刊)より、第8歌集「方位」を読み了える。
 先行する歌集「荒神」は、今月9日の記事にアップした。
概要
 原著は、2003年、短歌研究社・刊。
 404首と、あとがきを収める。1998年~2000年の作品である。
感想
 生物学研究者として師を送り、後輩の研究者・学生に諭す立場でもあった。
 息子・淳に子ができて祖父となり、娘・紅は京都大学を卒業し父と同じ大学で研究者となった。
 また2000年には、妻・河野裕子に乳癌が見つかり、左乳房の乳腺の2/3を摘出した。河野裕子の歌(歌集「日付のある歌」より)に、「何といふ顔してわれを見るものか私はここよ吊り橋ぢやない」、「悔しがり大泣きしたるざんばらを黙し見てゐしは君と紅のみ」、他がある。

引用
 以下に7首を引く。
ゆで卵が湯に騒ぐなり澱のごとき敗北感は昨日より続く
将来の保証無き職業に耐え得ぬとまたひとりわが部屋を去りゆく
バンダナがまだ似あいおり似あうのにどうして父になるなどと言う
キャンパスの北部南部に棲みわけて娘とわれはときおり出会う
サイエンス以外はなべて遠ざけて来しと聞きしかばすなわちひるむ
大泣きに泣きたるあとにまだ泣きて泣きつつ包丁を研ぎいたるかな
ポケットに手を引き入れて歩みいつ嫌なのだ君が先に死ぬなど
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写真ACの「童話キャラクター」より、「ピノキオ」のイラスト1枚。