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 今月16日の記事、「入手した2冊」で報せた内、綜合歌誌「歌壇」(本阿弥書店)2017年10月号を、作品中心に読む。
 
同・9月号の感想は、8月20日の記事にアップした。
巻頭作品20首
 永田和宏「夏のをはり」は、実感がこもって、老いの自覚と共に、親しみやすい。「永田和宏作品集 Ⅰ」を今、読み継いでいるせいもあるだろう。1首を引く。
病むために仕事辞めるにあらざれど仕事を辞めて病む友多し
 道浦母都子「梅花藻とベトナム」後半では、ベトナム戦争時の被拷問者、枯葉剤の被害者に会って、用意した慰問の玩具等が、役立たぬ現実を知る。
開かざる掌(て)にクレヨンを渡したるそのときにじかんがはたと止まった
特集「覚醒する子規――生誕一五〇年」は、ほとんど読まなかった。時代が閉塞すると、なぜ復古に走るのか。僕は子規の随筆1、2冊、俳歌少々、「歌詠みに与ふる書」を読んだくらいで、とても子規論を読む気にならない。
特別作品30首
 小林幸子「満月祭」30首は、力量のある1群である。原発災害を、近しく詠んでいる。1首を引く。

森と森のあひの窪地に緑色のシートをかぶせてある仮置き場
作品12首
 天野匠「途中下車」12首が、庶民の現在を描く。次の1首が、危機下の行楽を描いて鋭い。
公園の浅きプールに子ら遊ぶ大人も濡れて楽しそうなり
作品7首
 小林亜起子「地獄覗き」7首は、家族の果て、生活の果てを描いて、感銘を与える。
ニシキギの雨に紅増しそういえばひとり暮しが楽なこの頃