角川書店「増補 現代俳句大系」第12巻(1982年・刊)より、10番目の句集、稲垣きくの「榧の実」を読み了える。
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村越化石「独眼」は、今月5日の記事にアップした。
概要
 原著は、1963年、琅玕洞・刊。久保田万太郎の序句1句、253句、安住敦の跋文、著者あとがきを収める。
 稲垣きくの(いながき・きくの、1906年~1987年)は、若い頃に女優、戦後は茶道師範。
 1937年、大場白水郎「春蘭」に入る。1946年、久保田万太郎・主宰の「春燈」が創刊され、参加。
感想
 久保田万太郎の言う「余業」ほどの本業を持たず、専門俳人でもなかった。俳壇の社会性俳句・根源俳句の波からも逸れ、60年安保の波からも逸れ、僕には物足りない句集だった。
 1966年、牧羊社・刊の「冬濤」(第6回 俳人協会賞 受賞)が、優れていたかも知れない。
 この「大系」元版は第12巻(1959年~1968年)が最終巻で、増補版は第13巻(1964年~1971年)と、やや混乱している。第13巻以降を読んでみないと、わからないけれども。
引用

 以下に5句を引用する。
秋風や汽笛に耳を立つる山羊
秋の風天丼たべて別れけり
野火消ゆる如くに想ひ熄(や)む日あり
さばかれてゐるとも知らず柳の芽
秋風や石とてもかく踏みへらし(八丈島)
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写真ACの「童話キャラクター」より、「浦島太郎」のイラスト1枚。