思潮社「吉本隆明全詩集」(2003年2刷)より、初期詩編の3回目の紹介をする。
 
同・2回目は、今月1日の記事にアップした。
概要
 戦後の初めの詩、「Ⅴ 「時禱」詩編 (1946~1947)」11編と、「Ⅵ (1946~1950)」8編である。
Ⅴ 「時禱」詩編
 「時禱」詩編の初め、「習作四(宝塔)」では、「一木を重ねまた一木を重ねなほ苦しい忍耐のあと//この巨大な虚無は組立てられたでせう」と、戦後へ踏み出す思いを述べる。「習作五」「習作七」と続くが、欠落している番号の詩は、散逸したのだろうか。
 「習作廿四(米沢市)」は散文詩であり、戦前にもわずかにあったが、1952年の「固有時のとの対話」に至る散文詩の始まりだったろうか。
 「習作四十三(愛歓)」では、「お前を捉へイタリアン・ロンド風の/古風な踊りをしたいのだけれど/そんなにもわたしが嫌ひなのか/それとも斯うして/追ひ追はれてゐることが/意味ある愛歓の舞踏だといふのか」と結んで、恋の駆け引きを否定する。


 「Ⅵ (1946~1950)」は8編だけれど、この時期には他に多数の詩が書かれ、まとめられている。まとめに入らなかった作品を集めたのだろう。75調や外国の詩に学んだ作の最後に、散文詩「影の別離の歌」が置かれる。重要な所で、散文詩が現われる。想いが強過ぎて、行分け詩では砕けてしまう所を、散文の形で緩め、意味を強くして、耐えさせているのだろう。
 次は「Ⅶ 詩稿Ⅳ (1946)」と「Ⅷ かなしきいこひに (1947)」を、紹介したい。
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写真ACの「童話キャラクター」の「桃太郎」より、猿のイラスト1枚。