てんとろり
 今月7日の記事、笹井宏之・第1歌集「ひとさらい」に続いて、第2歌集「てんとろり」の紹介をする。
概要
 書肆侃侃房より、2011年1月・初刷、同2月・2刷。
 「ひとさらい」以後、2005年から2009年に26歳で夭逝するまでの作品より、「未来」での師であった加藤治郎が451首を選んだ歌集である。
感想
 句割れの歌(「きんいろのきりん あなたの平原で私がふれた唯一のもの」)や句跨り(「リビングに小さな川が流れいてせせらぎが寝室までとどく」)の歌が多い。さらに1漢字の訓みの中で句が別れる場合がある(「人殺しにも幸せの木琴がかすかに鳴り響きますように」(ひとごろし/にもしあわせの/もっきんが/かすかになりひ/びきますように))。この例は、他の若い歌人の歌に読んだ事があるが、彼が初めだろうか。
 初句7音を含めて、定型への反発が内にあったのかも知れない。
 叶わない相聞の歌、死への予感(治癒の望みもあったようだが)、死後への詫び言と取られる歌もあって、駆け抜けた短い生の様が感じられる。
 代表歌の1つとして、「風。そしてあなたが眠る数万の夜へわたしはシーツをかける」がある。「数万の」は。「数万人」の「あなたへ」という意味かと思ったが、歌の流れからいうと、一人の「あなた」の「数万日の夜へ」の意味のようだ。
引用

 以下に7首を引用する。
暮れなずむホームをふたりぽろぽろと音譜のように歩きましたね
美しい名前のひとがゆっくりと砲丸投げの姿勢にはいる
札束でしあわせになるひとびとを睫毛あたりで肯定してる
真夏日の夜の公園にばらばらの鍵盤としてちらばる私
さざなみのねむりのふちをゆっくりと宿をはずしたやどかりがゆく
悲しみでみたされているバルーンを ごめん、あなたの空に置いたの
たましひの還る世界に似て遥か インターネットといふ混沌は
(「佐賀新聞」掲載作品より)