思潮社「吉本隆明全詩集」(2003年2刷)より、「第Ⅳ部 初期詩編」の「Ⅸ 白日の旅から (1947)」3編と、「Ⅹ 詩稿Ⅹ (1948)」より1回目を、紹介する。
 
前回は、昨年12月2日の記事にアップした。5回目の紹介である。
Ⅸ 白日の旅から (1947)
 3編の詩のみより成る。「定本詩集」編に収められた長詩「(海の風に)」と同じ日記帳断片に、ばらばらに収められていたという。
 「(にぶい陽の耀きが洩れて)」は、題名がなく、初行を題名としたのだろうか。「草葉のやうになげき/鳥たちのやうにうたふ/だが異様につらいうたを」とあり、のびやかな口調で苛酷な心を謳う素地はあった。
Ⅹ 詩稿Ⅹ (1948)
 雑記帳に書かれた104編より、あまりに編数が多いので、今回は初めの「挽歌」より「打鐘の時」に至る41編を読み了える。彼は22歳くらいと若く、嘆き(姉を亡くした嘆きとされる)も、怒りも、僕には遠い。
 「打鐘の時」では、「瞋怒は過去に投げられ/…/影ははるばる過去を投げて」と謳われる。今の僕には、成されないであろう事に由って未来に瞋恚を持ち、過去はささやかながら愛しむものである。
 彼の老年の思いが、後期の詩篇より読み取れるか、今はわからない。
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写真ACより、「おもてなし」のイラスト1枚。