短歌新聞社「岡部文夫全歌集」(2008年・刊)より、6番目の歌集、「激流(げきりう)」を読み了える。
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歌集「朱鷺」は、先の1月12日の記事にアップした。
概要
 原著は、1947年、北陸青垣会・刊。463首、巻末小記を収める。
 青垣叢書「いしかは」「流氷」「寒雉集」「魚紋」の歌集の選に洩れた作品より成る。「いしかは」は1937年・刊の合同歌集であり、「流氷」はこの題名でなく合同歌集「日月」として1944年に刊行された。
 戦後・刊の「寒雉集」「魚紋」に就いては、このブログで取り上げた。
感想
 1926年~1946年の、7度の転任ごとに章をまとめ、巻末に「虫芥集」の章を置く。
 先の「朱鷺」の1ヶ月後の刊行であり、熱意と、資力のありようが偲ばれる。
 1940年~1943年の「信州飯山」の章に、「あかあかにぬり絵の線をはみいでて児(こ)がクレヨンのいろぞ量(かさ)なす」があり、今なら読み過ごしてしまいそうだが、当時としては贅沢な品だったろう。
 資力があったから悪い、というのではなく、蕩尽せずに歌集として残した事は、後の道を行くものにとって有益である。
 自信があったであろう「虫芥集」は、あまり感銘を受けなかった。生活詠・家庭詠に、惹かれる作品が多かった。
引用

 以下に7首を引く。
薄暗き本堂に吾ら掌(て)をたたきひそまりきくに鳴龍啼きけり
色渇せし麻蚊帳のなかにふしてをり家の貧しさを吾が思はざらむ
河の洲にいまだものこる夕明り子らほうほうと蟹追ふこゑす
夜を一夜(ひとよ)水鶏(くひな)のこゑのひびくなりこの山住(やまずみ)に堪へなむとおもふ
犯したるみにくき責(せめ)のいくつかは私にして隠し終ふべし
葱汁に鶏卵(けいらん)ひとつおとすさへおどおどとしてあからさまにせず
朝湯より帰り来し吾がをさなめを片粉(かたこ)の花のごともおもほゆ
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写真ACより、「おもてなし」のイラスト1枚。