角川書店「増補 現代俳句大系」第13巻(1980年・刊)より、6番目の句集、三橋敏雄「まぼろしの鱶」を読み了える。
 先行する句集、
山田みづえ「忘」は、先の2月21日の記事にアップした。
概要
 原著は、1966年、俳句評論社・刊。321句、著者・後記を収める。
 三橋敏雄(みつはし・としお、1920年~2001年)は、1937年~の同人誌「風」、京大俳句で活躍するも弾圧に拠り、1941年よりグループで古典研究に入る。1943年・従軍。
 戦後、練習船・事務局長等として長く船上勤務、1948年より作句再開、「断崖」、「天狼」等に拠る。晩年まで無季俳句の可能性を問い続けた。
感想
 旧作も収めるが、作句再開後の俳句が多いようだ。練習船の船上生活は、海の放浪者だろう。復員船、戦没者遺骨収集、シベリア抑留者引揚げ、等に関わる。
 それでも、落ち武者のごとく(僕の第4詩集「詩集 日々のソネット」に収めた「落ち武者」のように)、田舎に定住者として賤職を全うした者とは、感覚が違う。妻と離別し、娘二人を親に預けた生活感情も。
引用

 以下に地上での作より5句を引く。
いつせいに柱の燃ゆる都かな
凍る夜へ没しゆく貨車引張られ
霜咲かせ戦屍のやうな行倒れ
咆え牛に山彦戻る春あかつき
釘買つて出る百貨店西東忌
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写真ACより、「おもてなし」のイラスト1枚。