同じ白さで雪は降りくる
 今月14日の記事、「歌集2冊をダウンロード(3)」で報せた内、中畑智江・歌集「同じ白さで雪は降りくる」を、タブレットで読み了える。
 諸版の発行年次、価格はそのリンクを参照ください。
 今月21日の記事、
田丸まひる「硝子のボレット」に次ぐ。
概要
 歌集は、344首、大塚寅彦・解説「旅のはじまり」、著者・あとがきを収める。
 中畑智江(なかはた・ともえ)は、1971年・生まれ。
 2008年、「中部短歌会」入会。2012年、中城ふみ子賞・受賞。
感想
 解説で述べられているが、短歌の比喩がとても上手である。比喩に賭けているような所がある。それに拘りすぎると、「歌なんてどうでもよくなる時があり」という心境になる。
 様々なレトリックを凝らした短歌を読んでくると、それらでは感動しにくい自分がいる。
 むしろ子育て、夫との齟齬、などの主題が気になって来て、現代的である。
引用

 以下に7首を引く。
レタスからレタス生まれているような心地で剥がす朝のレタスを
アメリカンチェリーの果汁しみるごと美(は)しき依存をしてみたき夏
限りなきひかり寄り添うボトルには水の期限が記されており
学校に行けなくなった子の昼にあかるき秋がすみわたりおり
握力の失せて展きしままにある右手の平はしずかな荒野
離してはいけないはずの手を君は傘の柄くらいに思っていたか
簡単にあきらめるという才能を持つ子が公孫樹の緑陰に入る