短歌新聞社「岡部文夫全歌集」(2008年・刊)より、この全歌集で8番目、「風」を読み了える。
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歌集「玄冬」は、先の3月4日の記事にアップした。
概要
 原著は、1948年、高嶺書房・刊。428首、著者「巻末小記」を収める。
 巻末小記に、師・橋本徳壽の励ましや、出版に丸山忠治という人の援助があったと記されている。
 壮んに活動していると、援ける人も現れるのだろう。
 また交友のあった棟方志功の装画を得ている。
感想
 40歳、壮年に至って、苦労をかけた妻を憐れむ歌が多い。
 また良心に痛む事もあるらしく、それを詠う歌もある。
 それは「ふかぶかとしたる陥穽をつくりつつ彼が陥ちるのを傍観しをり」という、生き方にも因るのだろう。
引用
 以下に7首を引く。
雪の夜の蠟のまたたき寒けきに何編む妻よともに生きたし
ゆたかなる雪美しき夜の縁に吾が妻が乾す潤鰯(うるめ)ひとつひとつ
煮ゆる小豆小指(をゆび)の腹にためしゐる妻よ五人目の児をみごもるか
少年は炎を浴びて働けり貧しき母に生れたるゆゑに(銑鉄)
ぎりぎりに生くるいのちか朝早も暗き焦燥がこころを嚙むも
冬青(もち)の葉のひとつひとつに溜る光(ひ)のにぎやかに寂し照りにつつあり
午後となる冬日にやさし吾が妻の鋏にむすぶ小さき鈴は
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写真ACより、「おもてなし」のイラスト1枚。