林和清 去年マリエンバートで
 今月4日の記事、「歌集5冊をダウンロード」で報せた内、5冊目の林和清「去年マリエンバートで」kindle unlimited版を読み了える。
 今月20日の記事、
原田彩加・歌集「黄色いボート」同・版に次ぐ。
 Amazonでの諸版の発行年次、価格は、1番目のリンクの記事に挙げたので、ご参照ください。
概要
 林和清(はやし・かずきよ)は、1962年、京都市・生まれ・在住。「玲瓏」所属。
 「去年マリエンバートで」は、12年ぶりの第4歌集。タイトルは、アラン・レネ監督のフランス映画から。
 彼は去年の「ふくい詩祭」(福井県詩人懇話会・主催)で、師の塚本邦雄の話を交えて、講演をしてくださったので、親しみがある。その時にこの歌集の紙本版を20冊ほど、販売していたが僕は買えなくて、待つと今回のようなチャンスもある。
感想
 第1~第3歌集を読んでいないので、はっきりした事は書けない。
 生活の不安定(1ヶ月50を越える講座と、執筆で、生活しているようだ)の不安があるのか。3・11地震災害、いじめなどへも関心を持つ。
 「24時間」と題する、1日を時刻(分刻み)入りで詠んだ、100首連作があり、生活を明かすようだ。
 「人体のなかの砂漠の部分指せ三分たてば目隠しを取れ」等の、僕にはわからない歌も混じる。
引用

 以下に7首を引く。
ふりむけば落武者ばかり群れてゐた芙蓉の寺のぬかる庭土
再来年くらゐに会はう(または後世)恵比寿の破れたビルの前にて
なぜ自分は無傷なのかとおもふとき三月の空また雪が降る
西空の背骨を見たり父の身を火に葬りたるのちの日暮に
また雨が来るもみがらを焼いた田のふすぶる煙にまた雨が来る
殺人のニュースがひととき絶えてゐたそのことも記憶の瓦礫のひとつ(注:3・11詠)
家の中でどこをさすらつてゐたのだらう東山から月がのぼる(注:奥さんを詠む)