かたすみさがし 田中ましろ
 今月16日の記事「歌誌と歌集を入手」で報せた内、田中ましろ・歌集「かたすみさがし」kindle unlimited版を、タブレットで読み了える。
 プロローグのリンク8編、Amazonでの諸版の発行年次、価格は上のリンクで紹介したので、それをご覧ください。
概要
 田中ましろ(以下、敬称・略)は、1980年・生。理系大学院を修了後、大手広告代理店・勤務。
 短歌の投稿等をへて、フリーペーパー「うたらば」創刊。歌人グループ「かばん」所属。
 「かたすみさがし」は、3章編成で、第2章の父の病気と死の大連作を挟んで、恋の歌が(失恋を含めて)続く。第3章では、「一回のオモテの妻の攻撃がもう三時間続いています」などの歌があって、結婚したようだ。
 巻末に東直子「解説 抒情と存在証明」、著者「あとがき」、「新鋭短歌シリーズ ラインナップ」のリンクを収める。
感想

 この歌集は、ハイライトとメモの機能があるので、気になる歌にハイライトしメモを残すのだが、ある程度の量に抑えてアウトプットしようとすると、困難を感じる。
 以下に7首を引き感想を述べる。
茶化しあいながら大きな布を織る手を撫でていく風のいくつか
 彼女は歌の大きな曼陀羅を織るのだろうか。ライトな感覚で。
正しさを求めない日も手のひらは涙をぬぐうための大きさ
 正しくない恋に泣いている。穏やかに寄り添う二人が正しい恋だろうか。
ストライク投げても受け止めないくせにミットかまえて「恋」なんて言う
 独りよがりな、不実な恋人を詰っている。
告げられた余命をしまう場所がなく空を行く鳥見上げて父は
 思いの通う父の、不治の病と死を、しっかりと看取って、挽歌の大連作を成す。
生きるとは何を残すかではないと父は言う何も残さないと言う
 生の証明として作品を創作する、と僕は習って、今もそう思っているのだが。
どちらかが悪いわけではないのだと頬はひとしく緋色に染まる
 恋の末の諦念だろうか。暗いばかりの未来ではないようだけれども。
食塩は湿気を帯びる飛び出せば自由が待っているはずの朝
 妻となっての思いだろうか。初句2句が、心情をよく表わした暗喩となっている。