最初から
 先の4月23日の記事、「入手した6冊」で報せた内、宇野なずき・歌集「最初からやり直してください」kindle unlimited版を、ようやく読み了える。
 同時にダウンロードした、堀米好美・歌集「いのち」kindle unlimited版を、今読んでいるところ。
概要
 宇野なずき(うの・なずき)は、1989年・生。2014年より短歌を始め、インターネットを中心に活動中。
 「最初からやり直してください」は、2017年12月1日、初版・発行。
 電子版は、2018年4月1日・刊。200首を収める。
 大手出版社に頼らない独立系どころか、代行業者にも依頼しない、自力系の電子出版らしい。今はそれなりの知識と技術があれば、一人で費用無しで、電子本を出版できる時代である。
感想

 ハイライトとメモの機能(他の機能も含め)が利く歌集なので、気になった歌に線引きし書き込みを入れた。それを基に、以下に7首を挙げる。
念仏を唱えるみたいに話すなよ俺が成仏しちゃうだろうが
 よほど語りに説得力があったか。自分の生命力が弱いのか。
もう一度会って幻滅してほしい世界を元に戻してほしい
 せっかく恋人ができそうになったのに、恋愛を拒んでいる。
これからは脇役だった僕たちのスピンオフ作品が始まる
 短歌を詠んで、自信を得たのだろうか。短歌ニューウェーブの波にも乗って。
通行の邪魔になっても僕たちはずっと並んで歩きたかった
 青春と友情の歌と読めるけれども、それも過去形である。
ゆるやかに破綻していく予想図を丸めて部屋の片隅に置く
 生活の破綻を予想しながら、為す術のない若者である。
「フレンドを削除しますか?」誤操作で消えた友達がわからない
 IT社会は、大小はあれ、危機と隣り合わせである。
神様は中途半端な苦しみを抱える人と目を合わせない
 今の生活者には、信仰による救いは、既にない。

「あとがき」で「数年前までは、…短歌に救われることがあるなんて思いもしなかった」と著者は書く。短歌に頼り過ぎて、負担を掛け過ぎないよう、歩んで行ってほしい。