河出書房「ドストエーフスキイ全集」(米川正夫・全訳)第2巻(1956年・刊)より、中編小説「いやな話」を読み了える。
 先の6月24日の記事、
同・中編「初恋」に次ぐ。
概要
 初出は、「ヴレーミャ」の1862年12月号である。
 訳者・解説では、「開き直って論ずるほどの重要性を有していない」と書かれた。
 知識人と大衆の対比という、基本問題が現われ始めていると、僕は感じるけれども。
感想
 役所で五等官のイヴァン・イリッチ(43歳、独身)が、酔いのあげく人道主義の想いに駆られ、十二等官・プセルドニーモフの結婚式に入り込み、式と結婚を目茶目茶にし、プセルドニーモフの転任に至る(本人は高官のため、外見上はお咎めなし)物語である。
 頭の中で人道主義を掲げても、現実には迷惑がられる人物を、戯画的に描いている。
 農奴解放直後の自由主義・進歩主義の流行への警告、民衆(ナロード)との接触という思想の幻滅性を、語ったとされる。

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写真ACより、「ファンタジー」のイラスト1枚。