短歌新聞社「岡部文夫全歌集」(2008年・刊)より、14番目の歌集「石の上の霜」を読み了える。
 今月6日の記事、同「青柚集」に次ぐ。
概要
 「石の上の霜(いしのうへのしも)」は、1977年、短歌新聞社・刊。683首、著者・後記を収める。
 「青柚集」より、約2年後の刊行である。
感想
 後記にあるように、「(北陸の)人間や風土が前集よりも幾らか深切に歌はれている」と言える。
 貧しい村の、老いた知識人として、村人の相談相手になり、また農業の教えを受ける。
 魚介を背に行商の媼たち、海女に、冬の副業に勤しむ媼たちを、とくにあわれ深く詠んでいる。
 また新しく、原発に潤う村をも詠む。
引用
 以下に7首を引く。
報いなきことに手を貸す隣ならず境の雪は吾が除(のぞ)くべし
鯵を鯖を振りて商ふ媼たち生くるに怯むなき媼たち
原電に潤ふ海の村といへ心けはしく荒(すさ)びゆくらし
隠すなき貧を互みに貶めて一つ入江には一つ村あり
洗濯機廻したるままに来しと言ふ媼の今朝の訴へは何
こぞりたつ浅葱は君の呉れしもの並びて萌ゆる韮に記憶なし
隠元の支への篠は今少し高く結へよの媼に倣(なら)
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写真ACより、「アールデコパターン」の1枚。