短歌新聞社「岡部文夫全歌集」(2008年・刊)より、合同歌集「日月」「海潮」「青泉集」の岡部文夫集を読む。
 先の9月13日の記事、
合同歌集「いしかは」より同、に次ぐ。
概要
 「日月」は1937年、青垣会・刊。全歌集で13ページ。
 「海潮」は1950年、海潮短歌会・刊。全歌集で見開き2ページ内。
 「青泉集」は1951年、海潮短歌会・刊。全歌集で見開き2ページ内。
感想
 定型短歌に依る事によって、戦時下も心平らかであり、幼い娘の死にも耐えた。
 敗戦前の自然詠に、僕の関心がほとんど動かない事に驚く。戦後は人事に切迫しているのだろう。
 戦争詠があったのか、なかったのか、この資料には見えない。左翼からの転向者として、一切口を噤んだのか。1937年より敗戦まで歌集がないので、隠蔽されたのだろうか。全歌集の編集上で、手が加えられたかも知れない。
引用
 以下に7首を引く。
うつしみとおもほえぬまでたひらかに吾のこころはいま和(な)ぎてをり
みごもりてかたへにねむる吾が妻はものをいひけり大きあらしに
青青と氷の上に影はあり何をおもひて立ちゐしならむ
ほそほそと早やをみななす眉形(まゆがた)や死(し)ゆく吾(あ)が児を抱(だ)きてやるなり(短命童女)
排他的といふにもあらず野菜のリヤカー囲む女らの中の吾が妻
あり(’’)を含み赤きひかりにとびたちしはんめう(’’’’)はいづべの砂に帰らむ
火傷(やけど)せるその舌のさき馬鹿だねといひつつみゐる冬の灯(ひ)に向けて
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写真ACより、「アールデコ・パターン」のイラスト1枚。