短歌新聞社「岡部文夫全歌集」(2008年・刊)より、合同歌集「候鳥」「湖明」の岡部文夫・集を読み了える。
 今月6日の記事、
3合同歌集より岡部文夫・集を読む、に次ぐ。
概要
 「候鳥」:1952年、長谷川書房・刊。全歌集で9ページ。
 「湖明」:1954年、海潮短歌会・刊。全歌集で見開き2ページ内。
感想
 戦後となると、自然詠は少なく、人事詠、家庭詠、心境詠が多くを占める。
 自然詠の余裕は少なく、満足していられなかったのだろう。
 この全歌集の後は、解説、年譜、初句索引などで、歌集編はこれで了いなのだが、934ページの大冊を読み了えた感慨はない。早い時期の合同歌集だからだろう。
 生前しまいの歌集、「雪天」を読み了えた時は、感慨があった。この歌人の場合、境涯と離しては、短歌を味わい得ないのだろう。
 彼が福井県を終生の地としてくれた事は、親しみと共に、感謝の念がある。
引用

 以下に7首を引く。
木蓮の花びら白く布(し)きたるを拾ふをさなご何に用ゐる
吾児(あこ)が持つしろたへ木槿(むくげ)八十四歳の君が母しきりにほしがりたまふ(哲久生家)
洗ひたる銀杏(ぎんなん)を白く石に置く老いてさびしきことばかりなり
すきとほるばかりになりし釘ひとつ紺の炎の中にみゆるを
蜜柑箱に桟を打ちゐし吾が妻が上等上等といひて立ちあがる
天井の影は煮干の籠ならむしまらく揺れてをりてやみたる
菜の花の中の往還を吾が母とをさなき吾とゆきし昨夜(よべ)の夢
0-08
写真ACより、「アールデコ・パターン」のイラスト1枚。