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 今月20日の記事、「届いた1冊、頂いた7冊」で報せた内、同人詩誌「果実」79号を読み了える。
 
同・78号の感想は、今年4月10日の記事にアップした。
概要
 2018年11月、果実の会・刊。B5判、43ページ。詩は1段組み、散文は2段組み。
 7名・17編の詩、5名・5編の随筆を収める。
 県内の教員、教員経験者を、主に同人とする。
感想
 巻頭のK・不二夫さんの「救急車と女」では、第2連の始めに「わたしと仕事 どちらが大事なの/突如 女が叫ぶ」と書き、約束を破られた、二の次にされた女性の心情に、後になって思い遣っている。
 O・雅彦さん(都内在住。W・本爾さんの詩に心打たれて参加)の「かわりゆくものに」はカリグラム(視覚的な詩の技法。この語が広辞苑になくて、僕がどれだけ苦労したか)で、行頭を高低させて変化させている。編末3行は「今日の空に/わたしの心は/救われた」と希望的である。
 F・則行さんは「机 Ⅰ」で百年愛されてきた小机を、「机 Ⅱ」で専用の椅子机がなく、腹這ってものを書いて来た事を書く。危うい時代には、家庭内と自分に視線を向けるのが賢明な方法かも知れない。
 W・本爾さんの「二月のうた」は、歳月を経て純化された、母への挽歌である。
 T篤朗さんは5編の詩を寄せている。「交差2」では、「僕たちは並行している/それでいいじゃないか…遠く離れても/君が見える/それがいいじゃないか」と、交わる事のない同行者を信頼している。
 随筆5編も、思いの籠もった作品である。