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 砂子屋書房・現代短歌文庫91「米川千嘉子歌集」より、第1歌集「夏空の櫂」を読み了える。
 到着は、先の2月16日の記事、届いた4冊(2)の内、続(同)と共に紹介した。プレミアム本を定価で入手した方法については、リンクをご覧ください。
概要
 現代短歌文庫・本の発行は、2011年・初版。
 米川千嘉子(よねかわ・ちかこ、1959年~)は、1979年、結社「かりん」入会、1982年、早稲田大学・文学部・卒業。
 1985年、「夏樫の素描」50首で、第31回角川短歌賞を受賞して、デビューした。
 歌集「夏空の櫂」は、1988年、砂子屋書房・刊。第33回現代歌人協会賞・受賞。
 350首、馬場あき子の長い跋文「愛、その湊合の場」、著者・あとがきを収める。
感想

 この歌集で詠われ、後に夫となった男性は、「かりん」の科学者・歌人、坂井修一である。綜合歌誌「歌壇」の自由な歌論を、好感をもって読んでいる。
 愛の歌は鬱屈している。例えば「暗鬱にしか愛し得ざりし」と詠む。世の常識に従わず、自我を通しつつ、愛の成就を願って、苦しむようだ。新婚の二人きりの現実も描かれる。
 勤めの教師としても、一途な思いを詠む。
引用
 以下に7首を引く。
無私の愛をわらへどわれらながくながく手つなぎて植物園をめぐりぬ
マウスの子の小ささにただに驚けばわが無知を愉し気に笑ひしよ(少年のマウス)
電子音にひと日まみれて来し君が言葉なくながきくちづけをくれぬ
腕のばせば幼き顔に人眠るさびしさに覚めまた眠りゆく
消えてゆくストームに子らの輪は迫りわかききびしき顔に歌へり
苦しみて告げし一語もためらひも草の香も君は忘れむいつか
牛乳を煮つつ思へりゆるゆると怒りが悲しみとなりて細るを