沖積舎「梅崎春生全集」第3巻(1984年・刊)より、4回めの紹介をする。
 同(3)は、先の5月1日の記事にアップした。
概要
 今回は、「春の月」、「A君の手紙」、「カロ三代」、「服」の、4編を読み了えた。
 「春の月」、「A君の手紙」は中編、「カロ三代」は短編、「服」は掌編と呼べるだろう。
感想
「春の月」

 出会った人物ごとに、主人公が次々に移る。下宿の追い立てをくらっている男、倒産する社長、流しのバイオリン弾き、流行らない薬局の店主、等、冴えない男ばかりを描いている。主人公の移るのは新手法かも知れないが、です・ます調なのが惜しい。
「A君の手紙」
 老人の2通の手紙(書簡体)より成る。小説家に話題提供の代わりに、お金の無心と、返済延期の申し出である。登場人物が貧しく、無気力な、世の1画を描く。
「カロ三代」

 三代めの飼い猫・カロを敵視して、竹の蠅叩きで追い回す話である。しまいに隣家の天井裏で死んでいる所を発見される。夫人から「あんたがあまりいじめるから、カロは自殺したのよ」と責められる。梅崎春生は、猫的性格から、猫を嫌ったのだろうか。
「服」
 自分によく似る(服装、境遇)人物と、近くに居ねばならない苦痛、というこれまで繰り返されたテーマの復習というか、まとめのような掌編で、全集で実質2ページである。よく似た境遇の大衆の憎しみを、作家は感受しているようだ。
 4編とも、当時の市井の1画を、捉えたようだ。
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写真ACより、「キッチン・グッズ」のイラスト1枚。