県内にお住いの詩人、こじま ひろさんが贈って下さった詩集、「逝き咲き」を読み了える。
 受贈は、今月7日の記事、「届いた4冊(3)」にアップした。

 

詩集 1 
 上の写真は、表紙と帯(県ふるさと詩人クラブ・代表、川上明日夫さんの帯文)である。同じく川上明日夫さんの4ページに渉る栞を付す。
 2019年9月、山吹文庫・刊。3章22編の詩、あとがき、略歴を収める。84ページ。


 彼は1936年・生まれの一人子だったが、1944年に父が戦死した。中学校卒業後、農業で生計を立てたようだが、後に建築大工ともなった。
 還暦を過ぎた1998年に句会に参加、2001年に歌会に参加、2003年に詩の会に参加、と多彩で旺盛な活動を始め、今も活躍している。

 「行き咲き」では、「爺の体の古釘は/バールではぬけない」と、身に沁み込んだ苦労を窺わせる。文学に出会って、「一編の詩とのせめぎあい」が「渇いた心をいやすよう」と述べる。
 お孫さんにも恵まれるが、「節分」の豆撒きの終連は「老いは外と聞こえてくる/何処へもいけない」と、家庭で孤独であろうか。
 終章の「戦争があった風景」は圧巻である。掉尾の「無花果」では、父が戦死後の母子の苦しい生活を述べ、終連では「爺は/そっとよく熟れた無花果の/ひとつを かみしめた」と老後の楽しみを味わう。

 レトリックとは情意をよく伝える方便だが、「そそっかしい春が引っ越して来た」、「宵がこぼれないように」などの上滑りな比喩がある。
 リアリズムで表すには、深刻な人生だったのかもしれない。