山田詠美の小編小説集「タイニー ストーリーズ」より、4回め、了いの紹介をする。
 同・(3)は、今月4日の記事にアップした。



 今回は、「涙腺転換」、「GIと遊んだ話(四)」、「クリトリスにバターを」、「420、加えてライトバルブの覚え書き」、「予習復讐」、「GIと遊んだ話(五)」の6編を読んだ。

 「涙腺転換」は、母親の遺訓に従い人前で泣かないが、涙が尿になって出る少年の話だけれども、幼年的性を揶揄しているのかも知れない。
 「クリトリスにバターを」は、身も蓋もない題名だが、作品末尾に作者が断っている通り、村上龍の芥川賞受賞作「限りなく透明に近いブルー」の原題である。アメリカに住むアメリカ人の夫、パトロン、大学生との関係を描いている。
 420は大麻の隠語、ライトバルブは電球のことである。女性の大学教師と学生の秘めた恋、という男性にサービスした設定である。
 「予習復讐」では、25年前のいじめっ子女子に復讐しようと企むが、相手が貧しく、しかも転校後に苛められたと聞いて、敵意が失せていく。
 「GIと遊んだ話(五)」は、GIと復縁する話だけれども、現実には山田詠美は元GIと離婚した。金属疲労のようなことだろうか。


 山田詠美は性を描いて、現代の徒花のように見えたが、最近は「つみびと」などシリアスな小説も執筆しているようだ。惜しいが、方向転換だろうか。

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写真ACより、「ケーキ」のイラスト1枚。