綿矢りさの小説「蹴りたい背中」を読み了える。
 デビュー作「インストール」の感想は、1昨日、3月20日の記事にアップした。



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 第2作「蹴りたい背中」は、19歳・大学生での芥川賞・受賞となった。
 河出書房新社・刊、2003年8月:初版、2004年2月:26刷。
 文章体と語り口体とが入り混じっている、親しみを感じさせる文体である。太宰治の愛読者とは、驚きだった。
 高校1年生の女子・ハツと男子・にな川は、共にクラスでのはぐれ者で、言葉を交わすようになる。しかし、にな川はファッションモデルで売り出し中のタレント、オリチャンの熱狂的なファンで、ハツを好意の対象としない。ハツは、にな川の部屋にゆき、唇まで奪うが、「好きとは落差のある」感情を持つのみである。
 ハツの旧友(高校ではそんなに親しくない)の絹代と3人で、オリチャンの初ライブにゆくのが山場だろう。にな川の背を、ハツは作品中で2度蹴っている。
 好きでもない関心の、もやもやを丹念に描いている。