砂子屋書房・刊の「葛原妙子全歌集」(2002年)より、第7歌集「朱霊」を読み了える。
 第6歌集「葡萄木立」は、先の5月5日の記事にアップした。リンクより、関連過去記事へ遡れる。



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 全歌集の函の表の写真を再び挙げる。

 「朱霊」は、1970年、白玉書房・刊。715首、著者・後書を収める。
 前衛短歌の一人とされながら、僕にインパクトが少ないのはなぜだろう。戦争未亡人の森岡貞香ではなく、元・華族のプライドを秘めた富小路禎子でもなく、医師の妻に過ぎない。実質・厨歌に過ぎない作品もまじる。仮定の上の悲傷もある。
 稀に迫力のある幻視の歌、暗喩が決まった幻想の歌もある。
 啄木、「赤光」、「サラダ記念日」、「昭和万葉集」完読と進んだ僕は、後まで前衛短歌に触れる事が少なかった。生活の短歌しか詠めない由縁だろう。
 なお俵万智のライトヴァースは否定されたとされるが、僕には解せない。バブル期でなくとも、「かるみ」を目指す歌があって良い。


 以下に7首を引く。正字を新字に替えてある。
等身の鏡にあゆむ 現
(うつつ)よりふとたしかなるわれの足どり
夏澄むに悲痛せむかなあたらしき中国に老残の宦官ありとして
疾風はうたごゑを攫ふきれぎれに さんた ま、りぁ、りぁ、りぁ
南風の夜の月明水中に沈める死者は椅子に居りにき
犬などがことことと階段をのぼりゆくひたすらなるにわれは微笑す
昼しづかケーキの上の粉ざたう見えざるほどに吹かれつつをり
陽を着たる一人の男低丘を迂回する道いま登りゆく