沖積舎「梅崎春生全集」第4巻(1984年・刊)より、4回めの紹介をする。
 同(3)は、先の9月24日の記事にアップした。



 長編小説「砂時計」を了え、今回は「猫と蟻と犬」「古呂小父さん」「犬のお年玉」「風早青年」の4短編小説を読んだ。
 「猫と蟻と犬」では、年少の秋山画伯が持ち込んだ猫・カロの粗相がひどいので返し、飼い犬・エスの花火嫌いを直すに失敗する話である。秋山画伯は、ビキニ水爆実験の放射能雨を、しきりに気にとめている。
 「古呂小父さん」は、少年の目で父の会社の秋季郊外遠足を描く。不器用な古呂小父さんが、支店長の息子にまで笑い物にされて、しまいには酔って憤慨する。
 「犬のお年玉」では、犬の意地で、1度他の犬が食べた新しい食器では食べない。怒ったり、嘆息しながら飼っている。
 「風早青年」は掌編で、知り合いの風早青年が勝手に納戸に住み着き、結局出て行ってもらうのだが、その際、私は一杯食わされる。
 戦後約10年、日常生活が戻ったかに見えるが、その平安に馴染めない市井の者の心情を描いている。
ヤッターネコ
写真ACより、「猫」のイラスト1枚。