本阿弥書店の月刊総合歌誌「歌壇」2021年7月号を、ほぼ読み了える。
 到着は、今月17日の記事、届いた2冊を紹介する(23)にアップした。

 リンクより、旧号の感想へ遡れる。

 特集は「太陽の歌」、特別企画は「星に願いをー歌にのせて」である。陽と星、呑気なテーマである。「太陽の歌」では、明治期の太陽暦導入、古典和歌、茂吉・白秋の歌など、無難に論じている。
 今は1見、穏やかな世相に見える。コロナのワクチン接種も始まった。しかし穏やかに見える時こそ、危機である。バブル期などで、十分、体験したではないか。編集部の案出したテーマなら、その見識を疑う。政界とのブローカー、ロビーストが、圧力を掛けたのかと妄想する。あるいは大歌人がゴネたのだろうか。
 付箋を貼ったのは、花山多佳子「二〇二一年五月」20首中の2首である。「薔薇園に薔薇の花咲く何ごとの不思議なければ飽いて出でゆく」。本歌取りだろう。薔薇の不思議に打たれなくて、何が歌人だろう。改良の営為、HTローズからオールド・ローズ、イングリッシュ・ローズへの流行の変化、美だけでなく歴史でさえ、尽きない関心が湧くものだ。もう1首は「助からないのではないか、と漠然と思ひたり何のことといふでもなくて」。日常を詠む連作の中で、具体的ではなく、芥川龍之介の「ぼんやりとした不安」に近い心情が湧くかと信頼を感じる。
 アフターコロナで、短歌も変わるだろうか。旧かな古典文法の短歌が、衰える予想をしている。

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写真ACより、「雨の日」のイラスト1枚。