昨日に続き、花神社「茨木のり子全詩集」より遺稿詩集「歳月」の、2回めの紹介をする。
 遺稿の内、第2章までは、詩の順番(目次)のメモが残されたが、詩稿の箱には小さく「Y」(夫のイニシャル)とだけ書かれており、詩集名は編集した甥の宮崎さんが付したという。
 第2章は、16編。回想の詩が多くなって、亡き夫を身近に感じる詩はすくない。
 しかし、ここに引けないエロチックな作品「獣めく」もある。
 「殺し文句」より。「「これはたった一回しか言わないからよく聞けよ」/…/こちらは照れてへらへらし/「そういうことは囁くものよ」とか言いながら/実はしっかり受け止めた/今にして思えば あの殺し文句はよく利いた//…そう言えば わたしも伝えてあった/悩殺の利き台詞  二つ三つ/…」。本心の愛を生前に伝え合った、夫婦の姿がある。
 「町角」より。「…/待合せのときには/なぜあんなにもいそいそと/うれしそうに歩いてきたのか//…あちらこちらの町角に/ちらばって/まだ咲いている/あなたの笑顔//…いえ/いま咲きそめの薔薇のように/わたくし一人にむかって尚も/あらたに ほぐれくる花々」と、夫の笑顔を幻に視ている。
 「急がなくては」では、「あなたのもとへ/急がなくてはなりません」と語り、「梅酒」では没後10年を経てようやく、生前に仕込んだ梅酒を飲む心境になっている。
 亡夫恋の最上の詩が、ここにある。
菊3
フリー素材サイト「Pixabay」より、菊の1枚。