昨日に続き、花神社「茨木のり子全詩集」(2013年2刷)より、遺稿詩集「歳月」の最終第3章を紹介する。第3章は9編。
 茨木のり子は、1926年・生、1949年・結婚(23歳)、1975年・夫が肝臓癌で死去(詩人・49歳)、2006年・死去(79歳)。夫婦に子供はなく、音信不通のため訪れた甥に発見される。世に俗にいう孤独死である。
 「歳月(Ⅲ)」は、遺稿に目次のメモがなく、編集した甥の宮崎さんが、故人の意向に添うように配列した。その事に不満はない。
 ただ詩集名を、最終詩編の題名より「歳月」とした事は、遺稿詩集とはいえ、内容からみて地味ではないか。もっとつやのある詩集名、あるいは原稿の入っていた箱に書かれていた「Y」(夫のイニシャル)もシンプルで良かったのではないか。
 詩では、「なれる」事を嫌い、パンツ1枚でも品があったと回想し、「人を試す」事で叱られ感謝している。
 遠ざかる面影に縋るような、切実な1編があるので、以下に全文引用する。

  電報

オイシイモノ サシアゲタシ
貴公ノ好物ハ ヨクヨク知リタレバ

ネクタイヲエランデサシアゲタシ
ハルナツアキフユ ソレゾレニ

モットモット看病シテサシアゲタシ
カラダノ弱点アルガゴトクアラワニ見ユ

姿ナキイマモ
イマニイタルモ
菊4
フリー素材サイト「Pixabay」より、菊の1枚。