風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

 このブログを運営している新サスケ(ハンドル名)が、この10月17日付けで、AmazonのKindle本、第4詩集「詩集 日々のソネット」(縦書き)を発行しました。著者名は、柴田哲夫(僕のペンネームの1つ)です。
 再任用・リタイア前後の、庶民の日々の悲喜哀歓を綴った4章48編と、巻末に哲学風小連作・2章7編を収めます。
 Amazonの「Kindleストア」カテゴリーで、「柴田哲夫 詩集 日々のソネット」と入力して検索してくだされば、即で見つけられます。
 また、ブログの右サイドバーの上部、アクセスカウンターの下に、Amazonアソシエイトのリンク画像「あなたへ詩集をAmazonで」を貼りましたので、画像をクリックしてくだされば、購入サイトへ飛びます。
 kindle版で540円(税込み)、kindle unlimited版も発行しています。よろしくご購入をお願い致します。

読書

 思潮社「吉本隆明全詩集」(2003年2刷)より、「第Ⅳ部 初期詩編」の「Ⅺ 残照編 (1949~1950)」を読み了える。7回目の紹介である。
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同・「Ⅹ 詩稿Ⅹ」は、今月13日の記事にアップした。
概要
 27編を集める。なお(1949~1950)と添え書きされるが、1950年には「Ⅻ 日時計編Ⅰ」148編が制作されている。
 手製の原稿用紙24枚の表裏48ページの詩稿とされる。全50編のうち、残り23編は判読困難とされて、収められなかった。
感想
 この詩編群では、これまでよりも思想性が露わになっている。
 「午前」では「清廉 潔白 端正な形の眉/ああそいつはぼくの心理のいづれのはしくれも占めてゐない/汚濁 反抗 忿瞋と泥沼/まるでどうにもならないやりきれなさで充ちてゐるんだ」と戦後派のやりきれなさを描いている。
 「理神の独白」では、「ぼくは生存の条件/を何か他の要素でおきかへたため 脱落して路頭にある」と孤立の思いを確かめている。
 「列島の民のための歌」では「大凡ありとあらゆる地上の愚劣と卑小は/この島を占有してゐる/いまも眠つてゐる太古のままの民たちよ」と日本庶民の未開を嘆く。
 「昔の歌」では「ぼくもうたをうたふからには/たしかに人間の集積してきた巨大な精神を/すべて忌みきらひ反抗するのであつて/妥協の余地はないのである」と、反抗の詩人としての決意を明らかにしている。
 「長躯」では「たゆたふことなく論理は心理の影像を帯びはじめた」と心理と論理の一体化した、思想を展べる基礎が現われる。
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写真ACより、「ファンタジー」のイラスト1枚。



海、悲歌、夏の雫など 千葉聡
 今月6日の記事「3冊をダウンロード」で報せた内、千葉聡・歌集「海、悲歌、夏の雫など」を、タブレットで読み了える。
概要
 紙本版は、2015年4月14日、書肆侃侃房・刊(現代歌人シリーズ1)。Kindle版は、2016年1月27日・刊。
 価格は、紙本版が2,052円(Amazonのマーケットプレイスの中古本で、10円+送料350円より)、Kindle版が1,000円、Kindle Unlimited版が追加金無料。
 千葉聡の第5歌集である。208首、「桜丘高校の小さな黒板―あとがきにかえて」を収める。
感想
 ネット上に「千葉の短歌は未熟だが熱い」と書かれ、たしかに現代の大人(たいじん)の成熟には遠い。
 しかし彼は、成熟を目指していないと僕は思える。成熟が後退成長か、世間との馴れ合いを意味する時節、彼は成熟を拒否し、いつまでも若くあろうとする。1歩ずつの前進、成長は必要だけれども、と僕も思う。
引用

 以下に7首を引く。
「千葉Qへ」手紙の最後に書いてある T田が俺につけたあだ名が
悩みごと二つかかえてナイトラン大桟橋に着き伸びをする
Tの字は震えに震え「真剣に歌を詠めよ」と説教ばかり
母さんがくれた茶色い文庫カバー 太宰(だざい)専用カバーと決める
君に会って別にどうすることもない ただ会うということ 会うことだ
「始めまーす」マイに続いて全員が「はーい」と叫んでアップ始まる
県大会出場を決めたわがチーム 明日も練習 その次の日も



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 角川書店「増補 現代俳句大系」全15巻も読み進んで、第13巻(1980年・刊)に入る。第13巻より増補巻に入るらしく、第12巻が(1959年~1968年)であったのに対し、第13巻は(1964年~1971年)と、1部遡って句集を採っている。
 第13巻の初めは、古賀まり子「洗禮」である。第12巻のしまいの句集、
石田波郷「酒中花」は、今月3日の記事にアップした。
概要
 原著は、1964年、麻布書房・刊。
 水原秋桜子・序文、438句、藤田湘子・跋文、自筆後記を収める。
 古賀まり子(こが・まりこ、1924年~2014年)は、1946年より秋桜子「馬酔木」に参加、秋桜子没後は堀口星眠・主宰の「橡(とち)」に参加した。
 結核病のため、1949年、清瀬病院入院、死の淵をさまようが、母の作ったお金で当時まだ珍しかったストマイ(抗生物質ストレプトマイシン)7本を打つ等に拠って回復した。
 1952年、洗礼を受け、1956年の退院後は横浜スラム街の療養所に勤務するなどした。

感想
 俳句、医学、信仰の救いを感じさせる句集である。「短歌は自己救済の文学である」と伝わるけれども、ある人にとっては俳句も同様かも知れない。医学の進歩の恩恵は、僕も受けている。
 信仰の救いは、生きがたい人にとっては拠り処であろうが、僕はあまり信用していない。
 前半「清瀬」は闘病俳句として、後半「運河のほとり」は献身の俳句として、感銘の残る句集である。
引用
 以下に5句を引く。
酸素吸ふ梅雨夕映に汗ばみて
麦青む日々を咳きつつ細りゆく
病みし過去しづかに隔て雪積る
眉寒く若し父母の名秘めて死す(放浪中病を得し人夫あり)
雲夕焼童顔人夫日銭得て




 
 

 思潮社「吉本隆明全詩集」(2003年2刷)より、「第Ⅳ部 初期詩編」の「Ⅹ 詩稿Ⅹ(1948)」の(2)残り63編の詩編より紹介する。6回目の紹介である。
 
5回目の紹介は、今月4日の記事にアップした。
概要
 前回は、104編ある「詩稿Ⅹ」のうち、初めの「挽歌」より41編目の「打鐘の時」までを読んだ。今回は42編目の「芥河」からしまいの「(とほい昔のひとが住んでゐる)」に至る63編を読み了える。
 1948年の詩作の、現在発見されている詩稿のすべてと思われる。「詩稿Ⅴ」~「詩稿Ⅸ」は発見されていない。
感想
 変わらず旧仮名遣い(1部誤まっている)であり、定型調の短詩が散見される。
 ハイトーンに「訣別」のテーマが詠われる。「回帰の幻想」の「立ち訣れた心理のイメージの中に/…」、「青桐」の「時がふたりを訣れさせる/…」、「荒天」の「訣れ路をひとがとほる/…」、「告訣」、と止めどがない。
 「雪崩」の末連「すなはち女性からは絶望を宣告され/高邁なヒユマニズムの医師からは/ありつたけの力で逃げてきた/ひん死の病者こそわたしだから」と自分を見詰め、掉尾の「(とほい昔のひとが住んでゐた)」の終行で「おゝこれからはどうしよう!」と嘆いている。
 しかし「少年期」の末2行「もうすべてが視えなくなつたかはりに/すべてがみえるようになったから」と不可視の関係が視えるようになった彼は、「祈り」の第2連「おお/貧しいものたち/おまへの願ひは決してきかれない/鋭敏な革命家によつても/神によつても」と、庶民からの思想に出立するようである。
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写真ACより、「おもてなし」のイラスト1枚。


 短歌新聞社「岡部文夫全歌集」(2008年・刊)より、第5歌集「朱鷺」を読み了える。
 
第4歌集「魚紋」は、昨年12月11日の記事にアップした。
概要
 原著は、1947年9月、青垣会・刊。先の「魚紋」より、約9ヶ月後の刊行だった。
 橋本徳寿・序文「岡部君」、464首、著者後記「巻末小記」を収める。
感想
 橋本徳寿は序文で、敗戦の痛苦をしみじみ感じていない者の旺盛な作歌を不思議、美しい、頼もしいと述べ、また同じような者からの第二芸術論その他を空しい言葉だと断じている。序文の末尾で、「君の作品は大いに動きつつあるやうに感じる」と感嘆している。
 自然詠は純化し、主情の歌(相聞歌、家庭詠、産業詠を含む)は純化し、時に混じり合う作品もありながら、手応えは感じているようだ。
 掉尾の歌が「口にいでていまだいふべきことにあらぬひとつの思想昨日よりもちぬ」であって、弱者を踏み越えてでも前進しよう、という思想のように今は受け取れる。
引用

 以下に7首を引く。
笹山の寒きくもりにひびきつつ鶫のこゑかまたしきりなり
冬の光(ひ)はうすらにさむし白白とこの山中の砂に素枯に
(も)ゆる火の余燼のごとしといふなかれいのちかがやきて君を恋ふのみ
ふかき夜を地震(なゐ)に目ざめてひとりなり吾が児の骨は昨日葬りし
闇市に日の暮に来つ雑踏の饐(す)えし空気の黄も堪へがたき
あたたかき乳のコップを卓におきいづこより差すひかりとおもふ

貨車の炭(たん)降りこむ飯(いひ)を食ふ母児(おやこ)いづくをたより引揚げゆかむ
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写真ACより、「おもてなし」のイラスト1枚。




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