風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

 お報らせです。2020年9月6日で以って、Kindle本「少年詩集 鳶の歌」を自力発行致しました。原稿は自分で作成し、表紙はデザイナーさんにお願いしました。上梓は自力で行いました。
 Amazonの「Kindleストア」カテゴリで、「少年詩集 鳶の歌」と検索すれば、すぐに出て来ます。右サイドバーのバナーよりも至れます。僕のペンネームは柴田哲夫です。価格は500円ですが、Kindle Unlimited版を追加金無料で購入できます。多くの方のご購読を願っております。

読書

 「開高健 電子全集」特別限定無料版より、エッセイ「私の釣魚大全」の初めを読む。
 同書より、「ベトナム戦記」前半を読む、は今月22日の記事にアップした。





特別限定無料版

 僕は文春文庫の開高健「私の釣魚大全」決定版を持っている。後期を含めて、334ページである。
 ところがこの電子版では、初めの「まずミミズを釣ること」「コイとりまあしゃん、コイをとること」「タナゴはルーペで釣るものであること」「ワカサギ釣りは冬のお花見であること」の4章、79ページまで分しか載っていない。
 釣りは子供の頃、農業用水池で、チャナンピンと呼んでいた小魚を釣った事があるのみである。浮き、糸、錘、針のセットは町内の万屋で買って、竿は篠竹の枝を落としたものだった。餌はご飯粒だった。
 釣りは、好みではないが、耐性がないので面白く読んだ。いずれも凝った蘊蓄話がある。
 僕は文春文庫の「私の釣魚大全」を読むことがあるかも知れない。蔵書は半分に減らして5千冊、と豪語しており、新しい本も入ってくるので、いつ読めるかわからない。

 「開高健 電子全集」限定無料版には他に主に、「夏の闇」が収められているが、これは「開高健 全作品」で読みたい。それで電子全集・限定無料版の読書は、これまでとしたい。


 岩波文庫の一茶「七番日記」(上)より、4回めの紹介をする。
 同(3)は、今月13日の記事にアップした。



 今回は、文化9年正月~6月の半年分、219ページ~280ページの62ページである。ただし6月の中に、文化10年10月分11月分が、記されている。紙の貴重な時代、余白を借りたものらしい。
 狂歌の流行のせいか、庶民生活的、俗語の多用、滑稽味の強調、などがある。
 現代俳句に至る流れとは、1筋違っているだろう。

 以下に5句を引く。
(寄)るは年さはさりながら梅の花
鉢の松是
(これ)も因果の一つ哉
(菜)の花のとつぱづれ也ふじの山
いざい
(往)なん江戸は涼みもむつかしき
ちりめんの狙
(さる)を抱く子よ丸雪(あられ)ちる
松の盆栽
写真ACより、「松の盆栽」のイラスト1枚。


 砂子屋書房「葛原妙子全歌集」(2002年・刊)より、しまいの歌集「をがたま」を読み了える。
 先行する「鷹の井戸」は、先の8月29日の記事にアップした。



 葛原妙子は、1981年(74歳)に季刊歌誌「をがたま」を創刊したが、視力障害のため1983年に終刊。1984年より没年の1985年にかけて、発表がない。
 歌集「をがたま」は、その没後、盟友の森岡貞香が作品を集めて、1集と成したものである。
 このあと「をがたま」補遺、「異本 橙黄」があるが、僕は読み残す。
 これで「葛原妙子全歌集」のしまいである。この本も、僕に出会って不幸だっただろう。前衛短歌に理解ある者(近代短歌に苦しんだ者)、あるいは女性であったなら、もっと理解を得たかも知れない。
 俵万智以降、昭和萬葉集に学んだ僕は、前衛短歌の熱気を知らない。政治的前衛でもあった、岡井隆の歌は好きで、全歌集(生前版、思潮社・刊)を好意的に読んだのだけれども。


 以下に7首を引く。正字を新字に直した箇所がある。
微かなる日灼をたまへ青草と鳥の卵を食ひをる君に
あらはるるすゆに失せゐき ちかぢかと汝はたれ、とつぶやきし者
ビルの影たふれ 墓の影たふれ 明き冬至に人の影たふる
墓祭異形を交へ催せり幽魂らふそくのひかりにあそぶ
眼底にはつか紅をもつれしめ曼珠沙華とふ花の畢りぬ
流竄者なんぢにあらね入りてゆく暗き団地のありといふべく
前頭葉に薄霧かかりおぼつかなわが一対の脚降りてゆく
オガタマの花
写真ACより、「オガタマの花」の写真1枚。


 

 沖積舎「梅崎春生全集」第4巻より、小説「砂時計」の3回め、しまいの紹介をする。
 同(2)は、先の7月14日の記事にアップした。




 今回は、149ページ~222ページの、74ページ分を読んだ。
 栗山佐助は、夕陽養老院の臨時書記という事で、八木七郎、栗山佐助、夕陽養老院の3者が、仮に結び付く。
 176ページからしまいまで、黒須院長を含む、養老院の経営者会議の場面となる。経営者会議では、在院者たちを老朽物質扱いし、月2名の回転率を院長にノルマに課す。
 経営者たちが散会して、折詰を提げながら出てゆくところを、数匹の野犬に襲われる場面で、長編小説(梅崎春生の最も長い小説でもある)は、ファルスとなる。
 工場騒音、老人施設等の当時新しい社会問題を取り上げた。内面の踏み込みが少なく、成功作とは言い難い。
野犬
写真ACより、「野犬」のイラスト1枚。


 筑摩書房「ウンガレッティ全詩集」より、詩集「喜び」を読み了える。
ウンガレッティ全詩集
 1988年・刊、河島英昭・訳。514ページ。函がヤケている。
 2011年12月に、所蔵している記録があるのみなので、ブログ「サスケの本棚」開始の2007年以前に古本を購入したものか。
 僕は購入より何10年かして、読み始める事がある。購入して1年で読まなければ処分する、という誰かの杓子定規な扱いができない。

 この度、読む気になったのは、職をリタイアして7年、古希にもなったので、外国の詩人も職無しのさまよい人と捉えたなら、読める気がして来たからだ。昔、詩誌「群青」の相棒・こぐま星座さんと「外国の詩は難しいね」と語り合ったが、その時はお互いに仕事があった。

 ウンガレッティは、クァジーモドと共に、戦後イタリアの大詩人である。(僕は「クァジーモド全詩集」も持っている)。エジプトでイタリア人の両親のもとに生まれ、1912年、24歳でイタリアに短期滞在し、パリへ移り、大学で学ぶ。1915年、第1次世界大戦にイタリア兵として従軍、1918年に除隊したらしい。


 「喜び」には、パリ時代、従軍時代の詩が収められている。詩「苦しみ」より、「だが嘆きを糧にしては生きるな/盲鶸のようには」とうたう。除隊直後には、「見出された女」で女性の豊穣を、「祈り」で神への祈りをうたって、詩集「喜び」は閉じられる。



 「開高健 電子全集」特別限定無料版より、「ベトナム戦記」前半を読む。
 同「掌のなかの海」は、今月21日の記事にアップした。




 元々「ベトナム戦記」は「週刊朝日」1965年1月~3月に連載され、1965年3月20日に刊行された。
 僕の持っている「開高健全作品」全12巻の内、第11巻「エッセイ2」に載っている。その127ページ~212ページの内、限定無料版では初めより152ページまでしか載らない。
 その後もクーデター、VC少年兵の公開銃殺とその報復テロ、戦闘従軍記など、重要な場面が続くのだが。いつか限定無料版の以降を読みたい。
 限定無料版では「ベトナム戦記」となっているが、原型は「ヴェトナム戦記」である。
 (現在のベトナムは、経済的に繁栄していると読むが、そうなら喜ばしい。)
 開高健の小説は、文庫本で多くを読んだが、いつの日か、再読を含めて「全作品」を読みたいと思っている。
カービン銃
写真ACより、「カービン銃」のイラスト1枚。


 KIndle本の「開高健 電子全集」特別限定無料版より、短編小説集「珠玉」の「掌のなかの海」を読み了える。
 入手は、今月19日の記事、入手した3冊を紹介する(10)にアップした。


 「掌のなかの海」は、回想記風に始まる。作家デビューした作者が、焦燥のあまり寄るバーで、高田先生と呼ばれる老人と知り合う。高田老人は医師だったが、スキューバダイビングの用意をして行方不明となった一人息子を探して、日本各地のポイントを追ったが無駄で、海を墓守の心境で暮らそうと、船医になる。
 作家は誘われて下宿を訪い、飲み直す。先生は「さびしくて、さびしくて、どうもならんです」と泣き出し、大泣きとなる。
 僕は作家の筆力に感心するが、内容は感心しなかった。人生でもっと苛酷な体験をした人は多い、と思っているからである。
バー
写真ACより、「バー」のイラスト1枚。



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