風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

 お報らせです。2020年2月20日で以って、Kindle本・短編小説「底流」を自力発行致しました。原稿は自分で作成し、表紙はデザイナーさんにお願いしました。上梓は自力で行いました。
 Amazonの「Kindleストア」カテゴリで、「柴田哲夫 底流」と検索すれば、すぐに出て来ます。柴田哲夫は、Kindle版・詩集「詩集 日々のソネット」、「改訂版ソネット詩集 光る波」と同じく、僕のペンネームです。価格は500円ですが、Kindle Unlimited版を追加金無料で購入できます。Kindle版の無料キャンペーンも随時行ないます。多くの方のご購読を願っております。

読書

 近澤有孝・句集「踝(くるぶし)」を読み了える。
 僕の親しむ彼のブログに、刊行が公開され、Amazonより880円(税込み)で取り寄せた。

句集「踝」
 2020年3月31日・刊。制作印刷・喜怒哀楽書房。ここ3年の273句、著者・あとがきを収める第1句集。帯文は辻村麻之(「篠」主宰)。94ページ。

 近澤有孝(ちかざわ・ゆうこう、1960年・生)は、俳句の他に、語学に堪能で、ランボーの詩や「マザー・グース」の新訳を、ブログにアップしている。
 俳歴は長いのだろう。俳誌「篠」同人。

 収録された句のレベルの高さを認めた上で、忠告したい事がある。旧かな古典文法で句作したりすると、習熟に連れて、レトリック、用語、言葉の運び方などに、俳壇らしい臭みが出る場合がある。生活にアンテナを張って、いつまでも新鮮な句を吟じてほしい。
 季語とともに、自然との機微を掴んだようだ。「踏青やいずれ故郷を忘れたる」は、反語だろうか。


 以下に5句を引く。
文を書く東風の吹くころ封をする
西行忌落雁ひとつ齧りたる
艦船を眼下に花は杏かな
去りゆける守宮つもりがあるらしく
茶の花や触れてはならぬと云はれたる






 角川書店「増補 現代俳句系」第15巻(1981年・刊)より、16番めの句集、森澄雄「鯉素」を詠み了える。
 先行する阿部みどり女・句集「月下美人」は、今月3日の記事にアップした。



 原著は、1976年、永田書房・刊。381句、著者・あとがきを収める。
 森澄雄(もり・すみお、1919年~2010年)は、1940年の加藤楸邨「寒雷」創刊に参加、1970年に「杉」を創刊。飯田龍太と共に、伝統俳句の代表作家と呼ばれた。
 その後も句集を刊行し、1997年に恩賜賞・日本芸術院賞を受け、芸術院会員となる。

 「鯉素」は、漢詩に依り、「手紙」の意である。4年間の句は、旅に得た作品が多い。旦那俳人が、地方の旦那衆俳人を巡って指導するようで、嫌味である。地元で吟じられた句は、嬉しいようにも思うけれども。社会性俳句、前衛俳句に、背を向けた果てだろう。


 以下に5句を引く。
をさなくてめをとはよけれ二つ雛
青涼の葦と暮らして葦長者
甘橿の国見に雲雀羽ふるふ
吾亦紅すこしいこへば空の冷
青紫蘇を嗅いで力に峠越

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写真ACより、「アジアンフード&ドリンク」のイラスト1枚。


 文春新書「僕たちが何者でもなかった頃の話をしよう」を読み了える。
 メルカリからの購入、他の関連事項の幾つかは、今月4日の記事、届いた2冊を紹介する(13)にアップした。




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 4人のスーパーリーダーが短い講演をして、そのあとそれぞれ永田和宏(生物学者、歌人)と対談するスタイルである。
 まず山中伸弥。iPS細胞研究所所長。ノーベル賞・受賞。4名のビジターの内、この催しの趣旨を最も受け入れたようで、悩みと自信喪失時代を語って、決断と仲間、機会を掴む大事さを語る。
 羽生善治。将棋棋士。永世6冠(当時)。講演・対談は上手で、対談では永田和宏をリードする場面もあるが、内容はこれまでの著書を超えていなかったようだ。
 是枝裕和。映画監督。各賞・受賞。カメラを通して見た違う世界、脚本と違う優れた進行、などを語る。僕はあまりドラマ、映画を観ないけれども、黒澤や小津と違う、優れた映像のある事は信じる。
 山極壽一。霊長類研究者。京都大学総長(当時)。先生(師)を持つ事の大事さ、ネット時代の困難、などを語る。

 僕は傷が後を引くので、あまり積極的でなかった。傷が少なければリスクを取る事、機会を掴む事(オファーを受ける事など)を、心掛けたいと思う。

 先の3月30日の記事、届いた2冊を紹介する(12)で報せた内、結社歌誌「覇王樹」2020年4月号を読み了える。

 リンク元には、3月号の感想、4月号の僕の歌への、リンクが貼ってある。
 また結社のホームページ「短歌の会 覇王樹」も、4月号の仕様になっている。




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 今号には、「弥生(卯月の誤り?)10首詠」(僕の「花咲爺」10首を含む)等、通常の短歌と散文の他、代表・佐田公子さんの「うた新聞」2月号よりの転載、「七草のころ」5首などがある。
 今号の詠草の締め切り日は2月1日だけれども、既に新型コロナウイルスの脅威を詠む歌があって驚く。
 新会員3名、出詠購読会員5名の加わった事は喜びである。


 以下に3首を引いて、寸評を付す。
 W・茂子さんの「非対称(アシンメトリー)」より。
積年の思ひに訪ひし友呆けてやさしく笑ふはははと笑ふ
 人生のあはれを感じさせる、力量がある。
 T・照子さんの「年末年始」より。
歳晩に昭和、平成、令和へと思いこもごも交錯しくる
 僕も3代を生きる感慨が湧く。
 H・俊明さんの「病む睦月」より。
日毎来て朝夕を来てミコアイサ撮るアマチュアのをのこありけり
 流行の探鳥撮影を詠んで、「伊勢物語」を思わせる結句を置いた。







 角川書店「増補・現代俳句大系」第15巻(1981年・刊)より、15番めの句集、阿部みどり女「月下美人」を読み了える。
 先行する鷲谷七菜子・句集「花寂び」は、先の3月24日の記事にアップした。



 阿部みどり女の句集は、同・大系にあった筈と、先のブログ「サスケの本棚」を内部検索すると、2013年1月19日の記事に、感想をアップしている。1947年・刊の「笹鳴き」である。


 阿部みどり女(あべ・みどりじょ、1886年~1980年)は、「月下美人」刊行当時、卒寿を越えていた。
 原著は、1977年、五月書房・刊。200部限定、価格:1万5千円の豪華本だった。210句(月下美人の連作、8句を含む)、著者・あとがきを収める。
 この後の句集に「石蕗」(1982年・刊)がある。
 阿部みどり女は、1915年、虚子「ホトトギス」に参加、1932年に「駒草」創刊・主宰し、戦後、再刊させる。

 情緒ある、有季定型の句を創り、枠をはみ出さなかった。210句を、5章に分けて収める。この句集を含む業績により、1978年、蛇笏賞・受賞。



 以下に5句を引く。
重陽の夕焼に逢ふ幾たりか
雉子羽をひろげ野良猫逃げてゆく
鳶烏左右に別れ冬の山
退院の握手を医師と夏の雲
栗鼠渡る秋深き樹を皆仰ぎ
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写真ACより、「アジアンフード&ドリンク」のイラスト1枚。



 所属する短歌結社の歌誌「覇王樹」の編集部より、受贈歌集3冊の紹介記事を依頼され、既に3冊とも紹介文を送った。その内、1冊分が4月号に掲載されたので、以下に転載する。
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 登坂喜三郎・歌集「いのち」新書判。紹介に字数制限(20字×25行)がある。

 「地表」編集委員長の著者の第7歌集。2007年に出版した「メッシュの靴」以降、主として「地表」に発表した歌より、541首を自選した。
 「地表」編集代表の大井恵夫氏の肝癌の手術と入退院、著者の鬱病発症(後に完治)とたいへんな時期もあったが、短歌に打ち込める日々になった。優しい奥様、二人の立派な息子さん、健気なお嫁さん、犬の逝いたあとには猫と、恵まれて多くの歌となっている。
 末尾には大井恵夫氏の短歌鑑賞・54首分を加えて、編集代表への篤い思いを収録した。「地表」の目指す(写生に基ずく知的抒情)に邁進する歌人である。

けふは重湯明日から粥と病室に君は明るき声に言ふなり
お父さん行って来ますと出で行けり「荒川マラソン」参加の嫁が
梅雨晴れの小公園に児童らの課外授業かしばし騒めく
老木のさくらの幹に吹きし芽のしぼれる命よいま咲きにほふ
犬ほどの表情はなけれど飼ひ猫の妻の傍へにじゃれてゐるなり
(地表短歌社、2019年11月27日・刊)


 結社「コスモス短歌会」の若手歌人による、季刊同人歌誌「COCOON」Issue15を読み了える。
 同誌の到着は、今月19日の記事、届いた3冊を紹介する(8)にアップした。リンクより、関連過去記事へ遡り得る。



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 2020年3月15日、COCOONの会・刊。83ページ。短歌掲載は、1ページ6首~8首と余裕がある。同人は、1965年以降生まれの26名。
 評論、エッセイ、歌入りイラスト、歌合わせ、など多彩な企画である。
 現実に立ち向かって、苦しむ歌が多い。現役世代に失礼かもしれないが、鳥瞰して俯瞰的な視線を持てないものか。

 初心者を過ぎて、壮年に入る前の中間らしい4人の歌を、以下に引く。
生きている限りは光る電球の疲れが照らす六畳の部屋(S・ちひろ)
収入が足りないことを言われおり確かにねなどと返答したが(M・竜也)
申命記に「悩みのパン」の言葉ありパンも悩める三月となる(K・なお)
たまさかの<ミニとんかつ>を刺すばかりつくんつくんと少女の箸は(M・陽子)




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