風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

 このブログを運営している新サスケ(ハンドル名)が、この10月17日付けで、AmazonのKindle本、第4詩集「詩集 日々のソネット」(縦書き)を発行しました。著者名は、柴田哲夫(僕のペンネームの1つ)です。
 再任用・リタイア前後の、庶民の日々の悲喜哀歓を綴った4章48編と、巻末に哲学風小連作・2章7編を収めます。
 Amazonの「Kindleストア」カテゴリーで、「柴田哲夫 詩集 日々のソネット」と入力して検索してくだされば、即で見つけられます。
 また、ブログの右サイドバーの上部、アクセスカウンターの下に、Amazonアソシエイトのリンク画像「あなたへ詩集をAmazonで」を貼りましたので、画像をクリックしてくだされば、購入サイトへ飛びます。
 kindle版で540円(税込み)、kindle unlimited版も発行しています。よろしくご購入をお願い致します。

読書

ひとさらい
 先の11月27日の記事で到着を報せた、笹井宏之の歌集2冊の内、第1歌集「ひとさらい」を読み了える。
概要
 夭逝の歌人、笹井宏之(ささい・ひろゆき、本名・筒井宏之、1982年~2009年、享年26.)は、難病の「重度の身体表現性障害」(著者あとがき、より)を患い、初め楽曲制作等を行っていたが、よりエネルギーの少なくて済む短歌創作へ移っていったようだ。
 21歳の頃から歌を創り始め、「第4回歌葉新人賞」受賞、結社「未来」への参加、と2度の転機があったようだ。
 「ひとさらい」は、「未来」入会前、2005年3月~2006年4月までの作品を、歌人の加藤治郎・荻原裕幸が携わって纏めた。2011年1月、書肆侃侃房・刊、2015年9月・3刷。
感想
 1代限りの、前衛短歌の復活だろうか。岡井隆の重厚、塚本邦雄(少ししか読んでいない)の華麗に対し、命懸けの軽業(綱渡り、梯子乗り、等)だろうか。
 「八月のフルート奏者」の感想(初めの「笹井宏之の歌集2冊」より辿れる)で、ポップ感と書いたけれども、それは佐賀新聞文芸欄を読む祖父母を意識したもののようで、この歌集ではファンキーな感覚である。ファンキーとは、あるサイトに拠ると「いい意味で、型にはまっていなくて、一風変わっているさま」の意である。
 引用歌にあるが、暗喩の中庭で歌意を拾い上げ、生の真実を表わす。
 これも引用歌に、昭和戦後の庶民の像も、捉えている。
引用

 以下に7首を引用する。
風という名前をつけてあげました それから彼を見ないのですが
父さんが二百メートルほど先のいくさで子猫ひろって帰る
羊歯のふり巧みになって帰宅する農家の人とすこししたしい
野菜売るおばさんが「意味いらんかねぇ、いらんよねぇ」と畑へ帰る
「ねえ、気づいたら暗喩ばかりの中庭でなわとびをとびつづけているの」
安物の衣類をまとい夕暮れと夜のさかいに立ち尽くす主婦
食い荒らし食い荒らされて生きてゆく にんげんたちの一夜の宴




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 短歌結社「覇王樹社」の歌誌、「覇王樹」2017年12月号を、ほぼ読み了える。
 
歌誌の到着は、先の11月29日の記事にアップした。
 なおスキャンして取込んだ表紙が、先の記事では露出補正が足らず、地の白色に紛れそうだったので、今回は更に暗くした。元は白地である。
概要
 2017年12月1日付け・刊。A5判、39ページ。
 同人3クラスは、出詠6首のまま掲載、会員・準同人は出詠8首より6首選で掲載される。
 10首詠4名、力詠15首2名の他は、社友に掲載歌数の差はなく、平等である。
感想
 入社する時、会員、準同人、同人、どのクラスでも入れる、と知らされた。選歌のある、準同人に入って良かったと思っている。ルサンチマン(?)の僕なぞ、無選歌の同人に入っていたなら、どんな歌を詠んだか知れない。
 付句・題詠を全員より募集しているが、よほどの疵がないなら採られるようで、楽しみである。

 ホームページ「短歌の会 覇王樹」の更新も早く、すでに「作品紹介」など、12月号版になっている。僕の1首も載っていて、歌誌を読むのとは違う励みになる。
引用
 巻頭・八首抄より、M・照男さんの歌。
ダンプ行きクレーンも動く現場には明治の木屑昭和の破片
 古民家の解体作業だろうか。現場を描写しつつ、昭和から遠く明治まで、時代を掬っている。
 覇王樹集の特選1編、K・いつもさんの「インド更紗」6首より1首。
湯上りのインド更紗のワンピース優しく淡く友を想いぬ
 「優しく淡く」は、着心地にも、友の性格にも、友を想う気持ちにも、3つに掛かっているのだろう。




 思潮社「吉本隆明全詩集」(2003年2刷)より、初期詩編の4回目の紹介をする。
 
同・3回目は、先の11月16日の記事にアップした。
 今回に紹介するのは、「第Ⅳ部 初期詩編」より、「Ⅶ 詩稿Ⅳ(1946)」24編と、「Ⅷ かなしきいこひに(1947)」21編である。
詩稿Ⅳ(1946)
 1946年の詩作の内、「時禱」詩編に収められた少数を除き、すべてが収められていると、目次を追ってわかる。
 「童子像」(同名2作目の、フランス語の副題のある方)では、「(血まみれたみちをゆくがよい/童子よ/うまれたときからの執着の匂ひをさけてはいけない/あの風のこころとおまへのこころとどこに関りあらう」と、人の欲望を肯定するかのようだ。同じ詩に「童子のまへには無限の砂礫があるのみ/もろもろの門は架空のおきてのみ/…/或日/童子は天の眷属/あの強じんな風に訣れた」と結んで、天の無垢と別れ、もろもろの門(イデオロギー、宗派)とも別れ、地の砂礫を走る事を決意するのだ。
 「幼年」の1行では、「さあれ幼き日のおまへの生きた如くいまもナルチスムスの飢えを充さねばならぬ」と書いて、後に明らかとなる強いナルシシズムの現われを見せる。
かなしきいこひに(1947)

 1947年の詩作の内、「時禱」詩編、このあとの「Ⅸ 白日の旅から」に収めた3編、を除くすべてである。
 冒頭の「かなしきいこひに」は、幼い者たちに寄せて懐旧しながら、「わたしはたすかるだらうか/これからはたったひとり/兎小屋の兎をみたりして/おたまじゃくしの尾をみたりして/またひとりでゆけるだらうか」と生の危機感を描き、立原道造の詩の影響も感じさせる。
 「秋」は57調の7行の詩で、新体詩を思わせ、古い詩型への思いが残っていた事を示す。
 集の末尾の「黄昏に」を、「黄昏/わたしにはあらゆることが見えている/わたしはうす雲の反映に/もうすべてを忘れることができる/わたしはあぶなくはなく独りでゐる」と締めて、戦前への決別と、生の自信をうたっている。
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写真ACの「童話キャラクター」より、「白雪姫」のイラスト1枚。


やさしいピアノ
 Amazonのkindle unlimited版の新鋭短歌シリーズより、嶋田さくらこ・歌集「やさしいピアノ」をタブレットで読み了える。ダウンロードは記録に拠ると、今月17日だった。
 同・版の同・シリーズとして、今月21日の記事、
笹井宏之「八月のフルート奏者」に継ぐ。
概要
 嶋田さくらこ(ペンネーム)は、1975年、滋賀県生まれ。
 ツイート上のある歌に惹かれて歌を詠もうと思い、フリーペーパー「うたらぼ」に掲載されるべく、企画・制作者の田中ましろのサイトに投稿をし続けていた、とあとがきにある。
 歌集の紙本版は、2013年11月30日、書肆侃侃房・刊。kindle版は、2016年5月19日・刊。
感想
 恋人にマゾヒスティックなまでに従順で、結局はフラレる。もちろん事実ではなく、デフォルメやフィクションも多いだろうが、現代では少ないだろう女性像が浮かびあがる。恋の1型である。
 現代の青年は、自立した、あるいは自立しようとする、女性を求めるのだろう。
 その彼女が、歌人集団「うたつかい」では9名の編集部員と共に、120名もの仲間をまとめている。時代に合った才能は、現われるものだ。
引用

 以下に7首を引く。
仲直りしてあげるから買ってきて雪のにおいのアイスクリーム
日曜のまひるあなたを思うとき洗濯ものもたためなくなる
ぎゅっと、でも、そっと握って。手のひらを繋いだだけじゃ伝えられない
親戚が寄ってたかって褒めそやす、ゆかちゃん、ってそうか、わたしのことか
星あかり月あかりのもと玄関とポストと犬の位置を覚える(新聞配達)
半分こしたのバレてるぼくたちの紅いくちびる(りんご飴味)
もう少しそばにいたくて世界からいちばん遠い嘘を信じた




 角川書店「増補 現代俳句大系」第12巻(1982年・刊)より、13番目の句集、「定本 木下夕爾句集」を読み了える。
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飯田蛇笏「椿花集」は、今月12日の記事にアップした。
概要
 原著は、1966年、牧羊社・刊。井伏鱒二・序、4章・564句、安住敦・跋、著者略歴を収める。
 木下夕爾(きのした・ゆうじ、1914年~1965年)は、戦前に詩人としての地位を確立しながら、戦中に俳句を始め、1946年に久保田万太郎・主宰の俳誌「春燈」創刊に参加、終生離れなかった。
感想
 「定本 木下夕爾句集」は、没後に周囲の協力を得て、成った句集である。
 跋で、「師として選ばれた久保田万太郎は、この異質と思われる作家の俳句を認めるにやぶさかでなかった。」と記される。共に「俳句は余技である」の立場が、共通していたのだろうか。
 俳句としては、詩的叙情性の強過ぎると思われる句もあるが、戦後の生活俳句に新風を拓いたものだろう。
引用

 以下に5句を引く。
この丘のつくしをさなききつね雨
在るは樹と日と雲とのみ滴れり
繭に入る秋蚕未来をうたがはず
ふるさとや正月を啼く川原鶸
日曜につづく祭日しやぼんだま
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写真ACの「童話キャラクター」より、「白雪姫」のイラスト1枚。




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