風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

読書

 石川書房「葛原繁全歌集」(1994年・刊)より、歌集「又玄」の後半を読み了える。
 先の1月25日の記事、
同(前)に次ぐ。
 今回は、273ページ「歌びとの墓」より、しまい306ページまでを読む。
概要
 主な概要は、同(前)に記したので、ご参照ください。
 ただ1949年に結婚した宮田鶴は、おそらく師・宮柊二の妹であり、出身地も同じ町である。各年譜には、慎重に明記を避けているけれども。義兄弟となり、宮柊二や「コスモス」への忠誠も納得が行く。
感想
 付箋にメモを書いて貼って行ったので、それに従い7首の感想を述べる。
塵もなき参道の上におのづから散りて色冴ゆ紅葉の幾ひら
 墓所に参ろうとして、静かな観照の歌である。
波形に白泡残る洗はれて寒くひかれる渚の砂に
 悠久の波に向かい、写生の歌と呼ぶ1首だろう。
湧きたぎるこの憤(いきどほ)り赤軍をののしり責めて済まねば昏(くら)
 共産同赤軍派よりの赤軍を指す。政治的立場を明らかにするのは良い。
敗れゆく国を守ると若かりしうら哀しさぞ立ち還り来る
 戦中の立場を、口ごもるのではなく、明らかにするのは良い。

家妻のここは産土(うぶすな)梁落つる水のしぶきを身に浴びて立つ
 妻の実家と、その里の風景は、妙に惹かれるものだ。
薔薇咲ける園ふりかへり去らむとすかくて安らふ妻と我とは
 束の間の小さい安らぎがある。
立ちまじり冬の竹群たもとほる生(いき)に荒(すさ)べる心鎮めと
 葛原繁には内に、心の荒みがあり、写生、観照の境地に安住できていないようだ。家族にわずかに和むようだ。
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写真ACより、「乗り物」のイラスト1枚。



 角川書店「増補 現代俳句大系」第14巻(1981年・刊)より、15番目の句集、横山白虹「空港」を読み了える。
 今月20日の記事、
沢木欣一・句集「沖縄吟遊集」に次ぐ。
 実は2冊の間に1句集、安部完市「にもつは絵馬」があるが、飛ばした。定型でない。と言って種田山頭火や尾崎放哉のように自由律でもない。上句・中句・下句の体裁を保っている。破調なのだ。それに逆年順も困る。1句集、1歌集の間に成長を追って読み進むのも、自称「読み部」の楽しみである。
概要
 原著は、1974年、牧羊社・刊。1946年~1973年の句を、年別に、季節順に並べる。
 彼は戦前の新興俳句を出自とし、新情緒主義を標榜した。戦後の1946年から始まっている事は、敗戦を区切りとして好い。
感想

 なぜ28年もの間の句集を出すのか。僕も「コスモス」時代の20余年の歌集を計画しているが、僕のように無名ではないのである。横山白虹(よこやま・はくこう、1899年~1983年)は、1973年、現代俳句協会会長になっているのだ。戦中に心恥じる所があったのか。
 詩性を求めるのか、まれに比喩が見られ(「秋天にあらゆるビルが爪立ちす」など)、俳歌に(近ごろは詩にも)比喩を嫌う僕には、引っ掛かる。
引用
 以下に5句を引く。
木苺の花咲けりわが紆余の道
石鏃と冬日をもらふ片手の中
球撞きの一人一人が雪嶺見る
露霜の一夜に窶れストの旗
秋日没つ麦の穂型の噴水に(モスクワ3句より)

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写真ACより、「乗り物」のイラスト1枚。



 三浦哲郎の短編集「愁月記」(新潮文庫)より、2番目の「ヒカダの記憶」を読む。
 今月27日の記事、
同「愁月記」を読む、に次ぐ。

 12ページの短編小説だが、4章(無題)に別れる。
 第1章では、亡母が夢見を気にする性質で、気になるような夢を見たあとは、ひそひそながら作家に打ち明けた。手紙となり、電話となるが、それは続いた。自身の両親、夫、自殺した二人の娘、行方不明の二人の息子の夢である。早々と離散した子供たちのせいで、引け目を感じたのだろうと作家は推察する。

 第2章では、ほとんど夢を見なかった作家が、母の没してより1年後くらいから、亡母の夢を見るようになる。風変わりな姿だが、脛のヒカダを見て確かめる。ヒカダとは、冬に炬燵に入り浸って、女性の脛にできる火傷模様で、各人に違う。

 第3章では、子供たち全員を取り上げた産婆さんが、老いての対話である。色素のない娘二人を産んだ母は、作家を妊娠した時、堕胎しようとしたが、クリスチャンの産婆さんの説得によって、産む決意をする。産婆さんは、母のヒカダが美しかったと回想する。産むために力んだ母の足に、灯がともったようで、ヒカダがきれいだったとの回想である。

 第4章では、亡くなった母を納棺の際に、脛のヒカダを見て、悲しみに打たれる、という1ページ程の短章である。
 夢の話から、ヒカダの話に移って、母を亡くした作家の心情を語る、名編である。

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写真ACより、「乗り物」のイラスト1枚。




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 三浦哲郎・短編小説集「愁月記」より、冒頭の表題作「愁月記」を読み了える。
 新潮文庫、1993年・刊。7編の短編小説を収める。帯が破れかけているが、残している。
 故郷に長病む母の最期を看取りに、故郷へむかう列車で、以前によく上京していた母の、食事時に急に泣き出したり、作家の仕事部屋を眺めまわして満足していた時を、回想する。不遇な宿命を背負った子供たちのうち、末弟の作家が成功して穏やかに過ごしている事に満足だったのだろうと、文中にはないが察せられる。
 目が弱くて琴の師匠をしている姉、母を長く世話している世話上手の付添婦さんなど、他の小説にも現われる人物が、心優しい。親しんでくれた若い看護婦の話もある。
 作家がいったん実家に戻って休んでいる間に、母の容体が急変し亡くなる。死に目には会えなかったが、作家は喪主としてあれこれ手配し、斎場から骨壺を抱いて車で戻る所で終わる。
 好い日和に亡くなり、数日間好天だった事も、故人の徳として語られる。
 現代風のチャキチャキした文体でなく、渋い文体で淡々と語られ、優れた母への挽歌である。


 石川書房「葛原繁全歌集」(1994年・刊)より、第4歌集「又玄」の前半を読み了える。
 今月16日の記事、
歌集「玄」を読む(後)に次ぐ。
 歌集「玄」の672首に次ぎ、本歌集も555首とやや多いので、前後2回に分けて紹介する。始め239ページ~「盛夏名古屋行 Ⅱ陶土の層」272ページまでを読む。
概要
 歌集「玄」「又玄」「又々玄」は、石川書房より、1980年10月17日、同時発売された。
 1969年~1974年(扉裏の解説に「昭和45年まで」とあるのは、誤り)の作品を収める。
 「コスモス」創刊者・宮柊二の各地での誕生会(かなり祀り上げられている気がする)、毎年の「コスモス」全国大会に参加するなど、重鎮として、「コスモス」に貢献している。
感想

 これまでと同じく、付箋にメモを書いて貼って行ったので、それに従い、7首への寸感を述べる。
冷凍の白きマカジキおのおのは固き音して床におろさる
 マカジキの大きさ、重さに、驚く思いが伝わる。
加速して追ひ抜き行けり舗装路に車体のしるき影を落として(高速道4首より)
 乗車中の歌は彼に珍しく、新鮮である。
見て帰り生き生きと妻が告げ聞かすシルクロード展病めば行きて見ず
 少しの口惜しさと共に、妻の喜びを喜んでいる。
移動する牛の後尾につく人も尾を振る犬も日をあびて来る
 人のいる景を詠む事が得意で、上手だった。
赤子の手ひねるごとくに砕かれし孤立無援をわれは思へり
 遅まきながら、当時の学生運動に同情しているようである。
心中の脆き部分の表白を避けて生きたる壮年も過ぐ
 長く強がっていたと、深い述懐である。
虚空なる月に人あり跳(と)ぶごとく動く二人をテレビは映す
 月面着陸の出来事を、機会を逃がさずに詠んでいる。
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写真ACより、「乗り物」のイラスト1枚。








 思潮社「関根弘詩集」(1968年・刊)より、第4詩集「イカとハンカチ」を読み了える。
 昨年12月19日の記事
「関根弘詩集」の詩集「死んだ鼠」より…に次ぐ。リンクより過去記事へ遡り得る。
概要
 三省堂「現代詩大事典」(2008年・刊)にもウィキペディアにも、彼の欄に詩集「イカとハンカチ」はない。
 1958年・刊の真鍋博との共著「棗を喰った話」があり、同題の詩が「イカとハンカチ」にあるので、あるいは「棗を喰った話」の、自分が執筆した部分のみを収めて、詩集と称しているのかも知れない。

感想
 共産党員だったせいか、アヴァンギャルドを目指したせいか、表現が晦渋であり、初めの「過失の谷」、「変なやつ」が、何を意味するか、わからない。心理は微かにわかるようだが。
 「丸の内一丁目一番地」は、OLの危機感を描く。嫁ぐ未来だけでなく、「このままでは/いけないきがする」と、内なる目覚めである。
 「僕の基地」では、「不毛 飢餓/それが君の理性の王国だった」と書く。敗戦直後の焼け跡から出発したので、復興しつつある時代では、憤懣があるようだ。
 表題作「イカとハンカチ」は、何でも不条理と実存に結び付ける、当時の詩人を風刺するようだ。
 「ノコギリで ―原水協募金帳のために—」という作品もある。60年安保を契機として、彼は日本共産党と違う行動をし、除名された。その後はさらに活躍している。
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写真ACより、「乗り物」のイラスト1枚。



お金と自由を手に入れる在宅ワークの始め方
 Amazonより昨年12月11日にダウンロードした、無料kindle本「お金と時間の自由を手に入れる在宅ワークの始め方」を、タブレットで読み了えた。
 63歳で再任用職をリタイアしたあと、これという稼ぎをして来なかった。現場労働者だったので、技術もなく、体力は今衰えている。読書とネットと外出用事で余りの時間もないが、在宅ワークなら、と無料kindle本を読んでみた。
 オプトインアフィリエイトというものを勧めているが、内容の記述はほとんど無い。
 オプトインアフィリエイトをネット検索すると、非常に評判が悪い。
 上記サービスを扱うASP(アフィリエイト・サービス・プロバイダ)に悪徳業者が多く、報酬を持ち逃げされた人もいる。成績にボーダーを引き、月に一定の件数、金額を越えないと、報酬は支払われず、翌月は0からのスタートとなる場合もあるとか。
 著者は、初期特権で稼ぎ、今は指導する側に回って、稼いでいるらしい。
 やはりこの世に甘い話は無かった。


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