風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

読書

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 村上春樹「騎士団長殺し 第2部 遷ろうメタファー編」を読み終える。
 
「第1部 顕れるイデア編」は、今月2日の記事にアップした。
 主人公「私」が、試練(イデア「騎士団長」を殺し、洞窟から狭い穴を抜け通って)を経て、友人・免色の娘かも知れない秋川まりえの試練を、心の共振的に助け、二人とも元の生活場所に戻る。
 場面の中で、「優れたメタファー」を褒めているが、「二重メタファー」は悪者扱いされる。
 「私」は、別れ話を切り出した妻・ユズとやり直しの生活を始め、「私」が夢の中で妊娠させたと信じる娘と共に生活する。肖像画家から、芸術的な絵を描くようになっていたのに、生活のため肖像画家に戻ってしまうストーリーは残念である。
 あるブログで、この小説を「成熟した『ねじまき鳥クロニクル』」と評していた。試練の物語として、「ねじまき鳥クロニクル」の若さがない。「1Q84」のスリルがない。
 ただし男が大人になるための大きな試練を、幻想をまじえて描いている。


 昨日の記事、結社歌誌「コスモス」2017年3月号<風鳥派>に続き、作品欄の「COSMOS集」を読了する。
 「COSMOS集」は、入門の「その二集」とそれに次ぐ「あすなろ集」の、特選欄である。
 各5首(まれに6首)が、選者による題名を付けて、掲載される。
 歌歴の若い人には、可能性としては、将来がある。昇級の夢、歌壇で活躍する夢も、可能性としてはある。
 僕が付箋を貼ったのは、次の1首。T・千尋*(新仮名遣いのマーク)さんの「すうはあすう」5首より。
すうはあすうアスファルト上の修行者の息が聞こえるマラソン大会
 字余りの多い1首(苦しさに繋がるようだ)だけれども、マラソン走者の荒い息遣いを言葉化した事と、「アスファルト上の修行者」と捉えた事が、新しい表現である。体言止めで、まさに1首を止めている。
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Pixabayより、椿の1枚。



 結社歌誌「コスモス」2017年3月号より、エッセイ特集<風鳥派>を読みおえる。
 3月1日の記事、
同「その一集」特選欄・読了、に次ぐ。
 <風鳥派>は、「コスモス」誌の3月号、10月号に載る、エッセイの特集で、ふつう4編が4ページに載る。
 「コスモス」3月号が着いた時の記事で、「散文も読まなければ」と書いたから、エッセイ特集を記事アップする。
 S・ユウコさんの「オニグルミ」は、樹齢40余年のオニグルミの樹を、2年越しで伐採し、テーブルを作ってもらう話である。物心ついた時には、木登りができる高さで、数々の思い出をも語っている。
 H・瓔子さんの「沖縄のひと」は、沖縄出身のドライバーのタクシーに乗って盛り上がり、かつて1年半、沖縄県に暮らした頃の人々の優しさと共に、先行きを案じている。
 A・みどりさんの「干し柿いも」は、創作菓子をかつての恩師(皆に慕われた)の元に持って行き、即席に「秋の名残り」「去年(こぞ)の名残り」と名付けて、差し上げる話である。
 N・聡子さんの「巣立ちの季」を含め、人情味あるエッセイである。
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Pixabayより、椿の1枚。


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 村上春樹の新作・長編小説「騎士団長殺し」(第1部、第2部)より、「第1部 顕れるイデア編」を読みおえる。
 この
2冊の到着は、先の2月26日の記事にアップした。
 主人公「私」は、妻に別れを告げられ、友人の父親が住んでいた、山中の一軒の留守を預かる。
 第1章で、二人は9ヶ月後に生活をやり直すようになる、と告げられており、その点は安心して読める。
 抽象画を描いていた「私」が、生活のため肖像画を描いたけれども、画家として復活する様はていねいに描かれる。
 幻想的な要素は、プロローグの顔のない男が肖像画を描けと迫る場面と、小さな騎士団長の姿をとって現われる<イデア>のみである。
 謎の多い男「免色」が現れるが、ストーリーは段取りが整った段階で、「第2部 遷ろうメタファー編」でどのような、大団円(カタストロフィー)へ運ばれるか、楽しみである。


 結社歌誌「コスモス」2017年3月号より、「その一集」特選欄を読みおえる。
 先行する
同「月集シリウス」読了は、先の2月27日の記事にアップした。
 「その一集」会員は多く、昨年12月18日の記事で、約750名と算出している。総会員・約1900名の4割をしめる。
 「「コスモス」会員の吹き溜まり」などと揶揄せず、新会員増と共に、方策はなかったのか。
 「その一集」特選を2年間で8回以上受けるか、結社内外の短歌賞を受ければ、次の「月集シリウス」へ進める。
 僕が付箋を貼ったのは、次の1首。Y・佐保さんの「細き引力」5首より。
はちみつを瓶に入れ替へするときに地球の細き引力の見ゆ
 再発見の歌であり、「細き引力」の表現が超絶的である。
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Pixabayより、梅の1枚。


 角川書店「生方たつゑ全歌集」(1987年再版)より、第8歌集「火の系譜」を読みおえる。
 先の第7歌集
「白い風の中で」は、今月21日の記事にアップした。
 原著は、1960年、白玉書房・刊。
 井上靖の帯文、佐藤春夫の序文、小杉放庵の絵、後記「をはりに」を併載する。
 1967年、1975年と、井上靖ら文学者が発起人となり、「生方たつゑを励ます会」が持たれており、歌壇以外の文学者にも見守られていたのだろう。
 集末に、2章にわたる連作「火の系譜」を置き、能に取材した女性の執念を描く。
 暗喩に由る心理描写に長けるが、「炭化せる樹骸がくさにかげすればうつむく吾は愛もつごとし」という、失敗と思われる作品もある。
 彼女はアララギ系から出発して、戦後短歌運動、文学の趨勢、社会の推移の中に、新しい短歌を建てた。
 以下に7首を引く。
炎塵のにほひかわける日ぐれにてかの忘失のごとき鳥とぶ
わがうちに罅(ひび)渇きゐる干潟ありなにを育(はぐく)みてきしこともなく
亡命のごとひとりなり樹骸枝(じゆがいし)の手がたに垂れし火山帯lきて
霜つちの毳(けば)だつ日かげふみゆきて冬のひびきよするどき君ら
離別歌の註かき終へて女なるこの偶然に傷つきてゐる
明日に賭けてゆかむ構図か溶接の炎(ひ)にちかづきし顔硬きなり
あはれまれたくなき愛とおもひつめゆけば拮抗の硬き夜なり
(泥眼(葵上))
梅8
Pixabayより、梅の1枚。




 結社歌誌「コスモス」2017年3月号より、「月集シリウス」欄を読みおえる。
 今月24日の記事で紹介した、
同「月集スバル」読了に次ぐ。
 「月集シリウス」には、「特別作品」欄があり、12名の各5首が載る。この欄は、他の作品欄が1ページ2段なのに対し、1ページ1段という、特別の待遇を受けている。通常欄は、4首or5首掲載で、割合は半々くらいである(精確な選歌率を、僕は知らない)。
 僕が付箋を貼ったのは、次の1首。K・静子さんの5首より。
十分に生きて曾孫もさづかるを平均寿命にいまだ及ばず
 彼女は「コスモス」の女性歌人3代の頭なので、曾孫さん誕生の経緯は、僕も少し知っている。
 女性として、曾孫を授かり、健康であれば、順調な生と呼ぶべきだろう。平均余命は更に先だから、長生きされたい。
 僕の母も曾孫(僕の孫ではない)を授かり、とても可愛がっていたが、病に倒れて亡くなった。
梅7
Pixabayより、白梅の1枚。


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