風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

Kindle本の第1歌集「雉子の来る庭」をKDPしました。右サイドバーのアソシエイト・バナーよりか、AmazonのKindleストアで「柴田哲夫 雉子の来る庭」で検索して、購入画面へ行けます。Kindle価格:250円か、Kindle Unlimitedで、お買い求めくださるよう、お願いします。

読書

パプアニューギニア
 先日にAmazonよりタブレットにダウンロードした海河童・写真集「パプアニューギニア」Kindle版を見了える。現在、無料キャンペーン中である。
 海河童さんは、ベテランのダイバーであり、KDP(キンドル・ダイレクト・パブリッシング)の先駆者である。
 今月9日の記事、同「昭和記念公園」に次ぐ。

 「パプアニューギニア」の正式名称は、「Photo Collection  of Papua New Guinea」である。海中の多くの写真と、陸上の写真(リゾート地光景など)を収める。
 海中の魚の写真では、深度が大きくて、光が届かないのか、色が鮮やかでない作品がある。また魚群をなす、長い1種の魚の写真が多い。
 「昭和記念公園」の写真集で、花の写真に惹かれて、期待が大きかったので、満足のハードルが高くなったのか、花の写真集ほどには満足しなかった。
 僕の10インチ余のタブレットではなく、デスクトップ・パソコンやテレビの大画面で見るなら、もっと迫力があるかも知れない。
 カクレクマノミとハタゴイソギンチャクの共生、大亀などは、鮮やかで興味深かった。
 ダイバーの方、海中生物に関心深い方は、是非ご覧ください。

 海河童さんのツイートを埋め込んでおく。




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 角川書店「増補 現代俳句大系」第15巻(1981年・刊)より、2番めの句集、松崎鉄之介「鉄線」を読み了える。
 今月17日の記事、石原八束「黒凍みの道」に次ぐ。
概要
 1954年・刊の「歩行者」に次ぐ第2句集。
 1975年、「濱」発行所・刊。1954年~1974年の648句、あとがきを収める。
 松崎鉄之介(まつざき・てつのすけ、1918年~2014年)は、1947年に復員、大野林火「濱」同人、1982年に林火・死去により主宰・継承。同年、俳人協会会長となる。
感想
 朴訥とされるが、「鉄線」では創作の新と真が少ない。わずかに旅の句に新と、帰郷した友への吟に真実味がある。松崎鉄之介の句には帰郷して暮らす者への信頼がある。
 1970年、役所勤めを辞し、自営業となってより、句風も自由となったようだ。
 句集を重ね、数度の中国訪問等によって、力を発揮したようだが、僕には後を追う余裕がない。
引用

 以下に5句を引く。
島枯れて寸土あまさぬ製錬所
登呂暮色へだたりし人すぐ霧らふ
薔薇咲かせ遊学の外故郷出ず(幼なじみの友へ)
夕青嶺澄むを故郷として友は(青於君と別る)
銀座にも底抜けの空盆休
0-54
写真ACより、「キッチン・グッズ」のイラスト1枚。




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惟任将彦「灰色図書館」
 今月23日の記事、歌集2冊をダウンロードで報せた内、惟任將彦「灰色の図書館」をタブレットで読み了える。
概要
 リンクに出版社、各版の出版年次、価格等を記したので、ご参照ください。
 305首、林和清・解説「ハイデルベルゲンシス願望」(ハイデルベルゲンシスは大柄な絶滅人類)、著者・あとがきを収める。
 惟任將彦(これとう・まさひこ)は、1975年・生。近畿大学生時代に、塚本邦雄ゼミに所属。日本語教師となる。歌誌「玲瓏」会員。
感想
 図書館をめぐる連作があり、また野球に関する連作がある。
 若者歌人には珍しく、旧仮名、古典文法での作歌である。塚本邦雄に倣ったか。
 句割れ・句跨りが多いけれども、無意義な使い方だと思う。定型に圧力を掛けて、危機感・違和感を表わす方法だけれども、その必要が無さそうである。
 人生派と言葉派を止揚した歌がある。
引用

 以下に7首を引く。
新幹線満席となり肘触れぬやうに本読む自由席にて
里芋の煮つ転がしに箸を刺す夕べ組み換へられし遺伝子
銀杏よ猫の目となり漆黒の世界を銀に塗り替へてくれ
灰色の図書館内に鮮やかなブックカバーの墓地があるとか
道端にただ佇んでゐるわれに道行く人の不審さうな目
渋滞の高速道路穏やかな顔の車が少なくなつた
異国にて野球の選手名鑑を暗記するまで読みし日もあり




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「歌壇」8月号
 今月14日の記事、届いた2冊(8)で紹介した内、綜合歌誌「歌壇」2019年8月号を、短歌作品中心に読み了える。
 同・7月号の感想は、今月5日の記事にアップした。リンクより、関連過去記事へ遡れる。
概要
 2019年8月1日付け、本阿弥書店・刊。169ページ。定価:800円(税込み)。定価の維持には感服する。
 短歌は1ページ1段、散文は1ページ2段となっている。
感想

 特集は、「第一歌集の批評会の思い出」である。当時は、とても厳しい批評が出たと読んでいる。
 僕は歌集を持っていないけれども、5冊の詩集を出しており、福井県詩人懇話会の合同批評会を設けてもらった事がある。そのおり、内容と関わりなく酷評する詩人がいて、険悪な関係となった。詩人懇話会でも「詩集批評会」から「詩集を祝う会」と名前を替え、著者へのインタビュアーのインタビューが主となって、酷評は収まっているかの感がある。酷評は、何らかのコンプレックスを背後に持つようだ。
 「作品7首」の中に、僕が属する「覇王樹」の金澤憲仁さんの「令和元年の相双にて」7首が載っている。小歌誌に拠る歌人の歌を取り上げることは、歌壇のまた「歌壇」誌の希望である。
引用
 その「令和元年の相双にて」7首より、1首を引く。
バリケードに塞がるる家つらなるを帰還困難区域へ見過ぐ
 福島原発事故の現状を、弛みなく、リアルに詠んでいる。


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羽生善治 考える力
 別冊宝島「羽生善治 考える力」を読み了える。
 藤井聡太・本の「証言 藤井聡太」他を読む、ずっと前から羽生善治の人生論に関心があった。しかし彼は7冠、永世7冠、国民栄誉賞等、遠い人だった。もちろん僕は将棋の指し手はわからない。
取得
 メルカリを「羽生善治」で検索すると、この本が引っ掛かった。宝島社・刊、発行年月日は記載ないが、2009年までの記録が載っている。
 300円の本を、メルカリ・ポイントがないので、カードで買った。7月15日に注文し、18日に届き、そのままに読み進み、翌日には読み了えた。

感想
 ただ記者や他棋士からの記事が多く、羽生9段の語るインタビューも軽く短い。ジャーナリスティックな編集なので、鵜呑みにできない言葉がある。例えば「3割の負けは引きずらない」。敗局から学ばなければ、前進する筈がない。
 ほぼB5判、111ページでありながら、カラー写真は表紙のみで、他のたくさんの写真はモノクロなのが惜しい。
 対局の心の姿勢、座右銘など、励まされる言葉はあった。
 今は無冠だが、勝局を重ね、大山名人の最多勝局数を越えるなど、モチベーションを保って戦っている。コンピューター将棋世代へ移っているようだが、彼の生き方に注目したい。


 
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わたくし率 イン歯ー、または世界 (2)
 川上未映子の講談社文庫より、「わたくし率 イン 歯ー、または世界」、「感じる専門家 採用試験」を読み了える。
 同・本の入手は、今年4月29日の記事、(同)をローソン店で受け取るにアップした。
概要
 2編の初出など、リンク記事に書いたので、ご参照ください。
 川上未映子(かわかみ・みえこ、1976年・生)が、大阪の高校卒業後、弟の大学資金を稼ぐため、本屋のアルバイトとクラブのホステスをしながら、なぜ「早稲田文学」に伝手ができたのか、わからない。のちに上京して、歌手活動をしたから、優れた才能はどこかで見出だされ開花するのかも知れない。
「わたくし率 イン 歯ー、または世界」

 自分の本質は脳でなく、奥歯にあると信じる女性が、歯科助手に就職し、お腹の子や同僚に宛てて手紙を書く。子の父親の「青木」の部屋を久しぶりに訪うと、別の女がおり、放り出されてしまう。
 本質が奥歯にあると信じたのは、少女時代に苛めを受ける苦しさから考え出されたらしい。川端康成「雪国」の冒頭に主語がないテーマも、その時の自己抹消の方法からである。
 結局「青木」の部屋の玄関から追い出され、過去も妊娠もあやふやとなって結末する。
「感じる専門家 採用試験」
 前作よりも約半年、早く発表された。
 ずいぶん詩的な表現が多いことと、大阪弁の文体が、印象に残る。「徹底的な後悔も、徹底的であるなんて、あれはそれで美しかったね」の1語が刺さる。
 彼女は詩の才能があり、詩集で第14回・中原中也賞を受賞している。最近でも詩から小説に移って成功する、それも女性がいるんだ、と驚く。


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 沖積舎「梅崎春生全集」第3巻より、5回めの紹介をする。
 同(4)は、先の6月7日の記事にアップした。リンクより、過去記事へ遡れる。

 今回は、「拐帯者」、「春日尾行」、「雀荘」、「クマゼミとタマゴ」、「大王猫の病気」、「ボロ家の春秋」、6編を読んだ。
「拐帯者」
 同(3)の記事にアップした、「拾う」と似たテーマで、突然、大金を手にした男(この場合は会社のお金を持ち逃げしようとしている)が、1晩の遊蕩とアバンチュールに、満足しない。このテーマに、梅崎春生がなぜ拘ったか、わからない。
「春日尾行」

 ミステリーめいた進行で、最後に大団円で決着が付く。推理小説の流行があったのだろうか。
「雀荘」
 ジャン荘ではなく、「スズメ荘」の名のアパート6室(仕切りが3分の1しかない)の住人が、戦後のあぶれ者ばかりで、駆け引きをしながら生活している。
「クマゼミとタマゴ」
 全集で実質2ページの掌編で、同(2)で紹介した「ヒョウタン」と同じく、少年時の回想風の作品である。
「大王猫の病気」
 行き詰まりを宮沢賢治の口語体に救われた(椎名麟三「解説」より)という梅崎春生が、童話を試みた1編である。部下の猫たちに、戦時下の上下関係も見える。童話としては優れていない。
「ボロ家の春秋」
 直木賞を受賞した、名作とされる。
 権利金を騙し取られた「僕」と「野呂」の下宿人が、夜逃げした所有者より家を差し押さえた陳さんに家賃を払う羽目になる。2人は陳さんより、家を買い取り、お互いが家を単独で所有しようと画策する。

 これら近親憎悪は、従軍して生き残った者の、お互いの後ろめたさから来ているようだ。
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写真ACより、「キッチン・グッズ」のイラスト1枚。


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