風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

 花神社「茨木のり子全詩集」(2013年2刷)より、詩集「食卓に珈琲の匂い流れ」を読みおえる。
 先月9月27日の
記事(←リンクしてあり)、「詩集未収録作品」に継ぐ。
 原著は、1992年、花神社・刊。2部22編。
 「娘たち」の末2連では、「そしてまた あらたな旅だち/遠いいのちをひきついで さらに華やぐ娘たち//母や祖母の名残りの品を/身のどこかに ひとつだけ飾ったりして」と、女性のファッションへの愛着と継承に注目する。 
 「今昔」では青年僧・良寛を旅人の回想として、「沈黙が威圧ではなく/春風のようにひとを包む/そんな在りようの/身に添うたひともあったのだ」と描く。
 標題作「食卓に珈琲の匂い流れ」では、「さながら難民のようだった新婚時代/(1行・略)/みんな貧しくて/それなのに/シンポジウムだサークルだと沸き立っていた/やっと珈琲らしい珈琲がのめる時代/一滴一滴したたり落ちる液体の香り」と、中流の生活を得た安心を述べる。
 時代の経済的発展を認めながら、心が喪いそうな事に敏感である。
コスモス6
「フリー素材タウン」より、コスモスの1枚。


 花神社「茨木のり子全詩集」(花神社、2013年・2刷)より、「花神ブックスⅠ 茨木のり子」に収められた、「詩集未収録作品」10編を読みおえる。
 今月22日の
記事(←リンクしてあり)、詩集「寸志」に継ぐ。
 原著は、1985年、花神社・刊。
 詩集未収録作品といっても、新作ではなく、それまでに紙誌に寄せた作品である。
 「一人は賑やか」での末連では、「一人でいるのは賑やか/誓って負け惜しみなんかじゃない」と書く。僕も職をリタイアして、一人で家に籠もる日が多いが、ネット上の繋がりがあるとはいえ、孤独はあまり感じない(淋しくてたまらない日は、喫茶店へ行く)。
 「九月のうた」の末連では、「思えば幼い頃の宿題は易しかった/人生の宿題の/重たさにくらべたら」(下辺揃え)と、大人の悩みを嘆く。
コスモス3
「フリー素材タウン」より、コスモスの1枚。



 花神社「茨木のり子全詩集」(2013年2刷)より、詩集「寸志」を読みおえる。
 今月15日の記事(←リンクしてあり)で紹介した、「自分の感受性くらい」に継ぐ。
 原著は、1982年、花神社・刊。21編。
 「問い」では「ゆっくり考えてみなければ」のリフレイン、「落ちこぼれ」では「落ちこぼれにこそ/魅力も風合いも薫るのに」と、忙しい世間に批判の念を示す。
 「聴く力」では、「どう言いくるめようか/どう圧倒してやろうか//だが/どうして言葉たり得よう/他のものを じっと/受けとめる力がなければ」と結んでいる。
 昔、論争に嘘をついてでも勝とうとする上司がいたが、その末路は哀れだった。
 僕も議論しないではないが、言い勝とうとするより、双方に良い1アップした結論を探すためである。
柿4
フリー素材サイト「Pixabay」より、柿の1枚。

 花神社「茨木のり子全詩集」(2013年・2刷)より、詩集「自分の感受性くらい」を読みおえる。
 今月8日の記事(←リンクしてある)、「人名詩集」に継ぐ。
 原著は、1977年、花神社・刊。
 標題作「自分の感受性くらい」の末連で、「自分の感受性くらい/自分で守れ/ばかものよ」と叱る。
 しかしこの作品を初めて読んだ時、そうとばかりも言えないと思った。昇進の望みのない殺伐とした現場で働いていると、自分の感受性というか、感性というか、コンクリートで擦りつけられるように、荒れて行くのがわかった。
 医者の娘に生まれて、医者に嫁いだ女性には、わからない事だろうか。
 金子光晴への挽歌、「底なし柄杓」が優れている。
柿1
フリー素材サイト「Pixabay」より、柿の1枚。

 花神社「茨木のり子全詩集」(2013年・2刷)より、詩集「人名詩集」を読みおえる。
 原著は、1971年、山梨シルクセンター出版・刊。19編。
 解説で大岡信は、「同時代の男の詩人たちが、幻滅と絶望と悲哀をうたいつづけているときに、彼女のうたはひときわすこやかに響いたし、響かざるをえなかった。」と書いている。
 「四月のうた」の終連で、「たった三世代の推移を/つぶさに見ているにすぎないが/できるなら見定めたいのだ/世代そのものの成長ということの/ありや なしや を」と、疑いもありながら世の進歩を願っている。
 「居酒屋にて」では、かわいがってくれた爺さんと、八人の子を育てたおふくろと、おおいに愛(め)でてくれた妻と、「俺には三人の記憶だけで十分だ!」と叫ぶ、源さんを描いている。
栗1
 フリー素材サイト「Pixabay」より、栗の
1枚。

CIMG8998
 「水脈の会」より、詩誌「水脈」57号を頂いた。2016年7月・刊。
 H・はつえさんの「水色の小花柄」、M・祐子さんの「ストレス」が、素直な詩で好ましい。
 S・周一さんが、A・雨子さん編集のアンソロジー、「福井の抒情詩人たち」を取り上げて、高く評価している。
 僕はこの本を受けた時、著作権が気になって、取り上げられなかった。
 次号は、亡くなられた阪下ひろ子さんの追悼特集を兼ねる、という事で期待される。

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