風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。


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 先の11月20日の記事「届いた1冊、頂いた7冊」で報せた内、「2018 ふくい詩祭」の席で、とくし ともこさんに頂いた詩集「ひかり いのち」を読み了える。
 なおその記事の8冊の内、2冊をまだ取り上げていないが、今回で完了としたい。
概要
 2018年11月15日、文芸社・刊。87ページ。
 39編の詩を収める。プロフィールによると、2009年以来の第3詩集である。
感想
 彼女はある寺の住職の妻(坊守)である。県内の坊守の詩人を、他にも知っている。
 坊守が信仰、仏事、檀家等に就いて詩に書くと、無信仰の僕に響かない。他の困り果てた人が、宗教に縋るのを、否定はしないけれども。
 この詩集の場合、彼女が悪性リンパ腫の闘病をし、部屋に閉じ籠もって鍵を掛け、動物・子ども・花を避けねばならない時期があった(「抗癌剤治療」より)。「大きないのちにつつまれて」、「私がリンパ腫になったとき」、「恵まれて七年」、「生かされて」などの作品でも、寛解に至るまでとその後を描いている。
 この時こそ、信仰と創作の癒しの威徳を感じたであろう、と推察する。
 お会いした時は顔色もよく、大病をされたとは感じさせなかった。


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 今月20日の記事、「届いた1冊、頂いた7冊」で報せた内、同人詩誌「果実」79号を読み了える。
 
同・78号の感想は、今年4月10日の記事にアップした。
概要
 2018年11月、果実の会・刊。B5判、43ページ。詩は1段組み、散文は2段組み。
 7名・17編の詩、5名・5編の随筆を収める。
 県内の教員、教員経験者を、主に同人とする。
感想
 巻頭のK・不二夫さんの「救急車と女」では、第2連の始めに「わたしと仕事 どちらが大事なの/突如 女が叫ぶ」と書き、約束を破られた、二の次にされた女性の心情に、後になって思い遣っている。
 O・雅彦さん(都内在住。W・本爾さんの詩に心打たれて参加)の「かわりゆくものに」はカリグラム(視覚的な詩の技法。この語が広辞苑になくて、僕がどれだけ苦労したか)で、行頭を高低させて変化させている。編末3行は「今日の空に/わたしの心は/救われた」と希望的である。
 F・則行さんは「机 Ⅰ」で百年愛されてきた小机を、「机 Ⅱ」で専用の椅子机がなく、腹這ってものを書いて来た事を書く。危うい時代には、家庭内と自分に視線を向けるのが賢明な方法かも知れない。
 W・本爾さんの「二月のうた」は、歳月を経て純化された、母への挽歌である。
 T篤朗さんは5編の詩を寄せている。「交差2」では、「僕たちは並行している/それでいいじゃないか…遠く離れても/君が見える/それがいいじゃないか」と、交わる事のない同行者を信頼している。
 随筆5編も、思いの籠もった作品である。



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 今月20日の記事、「届いた1冊、頂いた7冊」で紹介した内、3番目の千葉晃弘・詩集「降誕」を読み了える。
概要
 2018年11月1日、鯖江詩の会・刊。134ページ。46編と「あとがきに代えて」、初出1覧、著作1覧を収める。
 詩集「ぼくらを運んだ電車」より、17年ぶりの詩集である。
 彼は同人詩誌「青魚」の発行者である。彼のおおらかな性格に惹かれ、様々な詩人が集まっている。「来る者は拒まず、去る者は追わず」の方針らしく(明文化された事はない)、散文のみの人を含め、現在の同人16名、No.89に至っている。
感想
 標題作の「降誕」は、クリスマス・イヴにケーキを買って帰るサラリーマンを描く。クリスチャンという訳ではなく、あとがきで「信仰に支えられた人間を示し合うべきと…」と述べている。
 若い母を描いた「おひつ」「アーちゃん」、中年の母を描いた「クレオン」「しゃがむ母」、晩年の母を描いた「夕焼け」「ジェスチャー」「母の遺言」。若い父や義父たちを描いた「十八番」、晩年の父を描いた「便所博士」。彼風の挽歌、魂鎮めだろう。
 少年時代からの友人、学生時代に下宿した幾つかの寺の住み込み人たち、と回想の詩が多い。なりゆきで結婚したという妻、なりゆきでケイタイを買いなりゆきで買い直したと、人生の真実をユーモラスに描いた「つれあい」、母の遺影の前に水を一杯置き、妻の前に罪ほろぼしのために1盃を置くという毎日の、しみじみとした作品「一杯」がある。
 「非凡なる凡人」と、「炭焼きの山と谷」~「生徒手帳」の5編は、散文詩でエッセイ風でもある。
 疎かな詩人たちを率いて、大人(たいじん)の歩みを続けてほしい。



 

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 かつて「吉本隆明全詩集」(思潮社)を読み通そうとしたが、今年6月13日の記事以来、読んでいない。
 それで本棚より、「関根弘詩集」(思潮社、1968年・刊)を取り出して来た。後期の作品をちら読みすると、読み通す自信はない。
 なお表紙写真は、トリミングの合うサイズがなかったので(有料ソフトを使っていない)、トリミングしていない。
概要
 詩集「絵の宿題」は1953年、建民社・刊。
 関根弘(せきね・ひろし、1920年~1994年)は、戦後、詩誌「列島」の中心となり、リアリズムとアヴァンギャルドの統一を目指した、とされる。13歳より働き続け、左傾(1時、日本共産党に入党)した。
感想
 詩集「絵の宿題」は大部に見えるので、4章より初めの「沙漠の木」14編のみを読み了える。
 「沙漠の木」では、「製鉄所のそこには/いつも僕を抜けでた僕がいる」と、本当の自分を偽って働く苦しみをうたう。
 「樹」では空襲を受ける樹や人や自分を印象的に描き、今でも「突然樹が叫びだすように思えてならない」と記憶の傷を定着する。
 戦後の荒野的風景を多く描いて、戦後を書き留めると共に、人心の荒廃をも書き留めている。



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 昨日の記事「届いた1冊、頂いた7冊」に挙げた内、同人詩誌「青魚」No.89を、ほぼ読み了える。
 
同・No.88の感想は、今年6月10日の記事にアップした。リンクより、旧号の記事へ遡ってゆける。

 冒頭、K・和夫さんのエッセイ「龍泉寺界隈ふたたび」は、現・越前市(旧・武生市)の敗戦直後の回想から、産物の世界展開への現在の希望を描いて、懐かしい文章である。

 T・幸男さんの4編の詩(ペン書きを縮小掲載したもの)は、上下2段の下段に作庭した(彼は作庭家であり、画家でもある)庭のカラー写真を置いて、展開する。やや難解だが、題名「彼岸の滸で」、「永劫の無辺(ほとり)で」、「足のうら」、「皿ねぶり」の題名を考慮に入れると、わかりやすいか。前2編は無常観を感じさせ、あと2編は年少時の回想が濃い。
 千葉(兄)さんの「匂い」、千葉(弟)さんの「姉、敏子」、共に姉の死を詩って、詩風の違いを見せる。
 高年大学から出発した詩人たちも、どんどん進歩している。

 M・幸雄さんの「現代詩を語る」(座談会記事より抜粋)では、主張の1つに「近現代詩語辞典」の作成を求めている。
 安部倹司・遺稿詩集「生と死のあいだ」(千葉(兄)が出版に関わった)は大冊だが、5名の方が丁寧な感想を寄せている。


 僕はソネット9編(と短歌連作1編)を寄せた。もう1つのブログ「新サスケと短歌と詩」の、11月20日の記事より、ソネットを毎日1編ずつアップするので、横書きながらご覧ください。


詩集ふくい2018
 「年刊 詩集ふくい 2018 第34集」を読み了える。
 入手は、今月2日の記事
「県詩人懇話会より、2冊と1紙が届く」の初めで報せた。
 
「同 2017」の感想は、2017年11月6日の記事にアップした。
概要
 2018年10月30日、福井県詩人懇話会・刊。55名58編の詩、執筆者名簿、63ページに渉る「’17ふくい詩祭 記録」、他を収める。「高校生の部」として、2名2編の詩を収載する。
感想
 時代のせいなのか、観念語を多用する作品があり、詩の観念化に繋がらないか心配である。
 M・あずささんのソネット3編、N・良平さんのソネット「風のソネット」、T・恵子さん「遊歩断章」とM・まさおさん「頭が寒い」が1連3行の連を連ねるなど、定型への寄り付きはあるようだ。僕もソネット「おじや」を寄せた。
 N・益子さん「おーい、まー坊」、H・はつえさん「ピアノ売ります」が、長いスパンの回想を詩っているのも、年齢と時代の故か。
 詩人懇話会では「詩の教室」など、年少者への詩作の誘いかけを行っており、大きく育つとともに、会員の老齢化を補う事を期待している。


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 青山雨子さんの詩集「冷麺」を読み了える。
 受贈は、
今月19日の記事にアップした。
概要
 2018年10月20日、書肆山田。刊。18編、あとがき、簡単な略歴を収める。
 81ページ。第8詩集である。
感想
 かつて喫茶店に牛を登場させて(詩集「暇な喫茶店」より同題詩編)先輩詩人たちを困惑させたが、喫茶店のマスターの背中に、牛を感じただけで、突飛ではない。
 彼女が落ち着いたというより、僕たちが(時代が)ようやく、彼女に追いついて来たのだろう。
 僕も、かつての同人詩誌「群青」の盟友・こぐま星座さんも、多感な高校生時代に実存主義(「投企せよ!」「参加せよ(アンガージュマン)!」)の洗礼を受けたが、約10歳若い彼女は構造主義やポスト・モダン等の旋風を浴びたらしい。
 生活から発想して、表現の飛躍を、楽しんでいるようだ。
引用

 「長い廊下」より、第2連以降の1部を引用する。

  長い廊下
  (前略)

もっと大きく口をあけてください
はい。もっとです
あーん

かあさーんと呼んでみてください

廊下の奥に仏壇が見えます

声は出ますか

回廊が見えます
  (後略)



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